グローバル化と法(2002年以降)
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「中国法制史」の記事における「グローバル化と法(2002年以降)」の解説
2001年2月中国はWTO加盟を果たす。加盟に際して中国は、法制度の整備ならびに確実な法執行(エンフォースメント)を求められており、これにより中国の法システムにも大きな変化がもたらされた。中国法は80年代のように外資導入等の対外開放部分を別建てにすることなく、統一的な法体系を国際法秩序と緊密に連携・連動して構築するようになっている。それから10年、2001年3月の全国人民代表大会常務委員会の活動報告は、「2010年までに中国の特色ある社会主義法律体系を形成する」という課題を達成したと宣言した。この課題が提示されたのは、1997年10月の党第15回大会であった。当時中国はWTO加盟に専心していたときであったが、その後、経済成長の歪みが露呈し、経済発展至上主義への反省が生まれ、2004年から社会主義調和社会(和諧社会)の構築が目標とされた。この国家目標の変更により、立法の重点の置き方や、法システムの基本原理にも変化を促す。国際的強調や外国法一辺倒、西欧法原理の普遍性の承認から、中国法の特殊性の再発見や「中国の特色ある社会主義法律体系」の検証へと向いていることが見出される。すなわち、WTO加盟後しばらくは、経済グローバル化のなかでの国際的協調の面や市場主義経済システム確立の面に力が注がれていた。例えば憲法修正において、1993年の修正が、オーソドックスな社会主義原則からの離脱を示し始めていたのに加え、2004年の修正では、非公有制経済(私営経済等)の権利保護とその発展の奨励・支配が明記された。それは、市場経済システムに対応した法システムでは、市場主体の地位、権利および機会の平等が保障されなければならない、という立法理念を反映したものであり、市場における公有制(国有企業等)の優越的地位は法律上保障されないことまで含意されている。しかしその後、この流れとは逆の「中国の特色ある社会主義」の方向性も立法の中に見出すことができる。2007年制定の中華人民共和国物権法においては、2005年7月に草案が公表されたが、そこで「物権法草案違憲論」が巻き起こった。物権法草案はあたかも私有制を基盤とした資本主義国の物権法と同様の規定を置くだけで、社会主義国家の基本的経済制度(公有制を主体とした複数の所有制の併存)を定めた憲法規定に反するという。結局、審議を1年延ばし、所要の改正を加えざるを得なかった。このように「社会主義」の問題を、立法の中でどのように処理していくかが改めて意識されるようになっている。
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