ウェブベースの百科事典作成プロジェクト
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/08 09:58 UTC 版)
「インターネット百科事典」の記事における「ウェブベースの百科事典作成プロジェクト」の解説
書籍としての発行を前提としない、インターネット上での利用を念頭に置いた百科事典作成プロジェクトが、1990年代ごろから現れ始めた。 1991年、Usenet のニュースグループ alt.fan.douglas-adams は、銀河ヒッチハイク・ガイドの実物を作る計画をはじめた。これは小説の中に出てくる何でも書いてある百科事典をネット上に作ろう、という一種のユーモアサイトであった。この試みは、プロジェクト銀河ガイド (Project Galactic Guide:PGG) と呼ばれるようになった。 1995年、スタンフォード大学の哲学者ジョン・ペリーとエドワード・ザルタは、ウェブベースでダイナミックに更新されていく、古くならない哲学専門の百科事典としてスタンフォード哲学百科事典 (Stanford Encyclopedia of Philosophy, SEP) の作成に取りかかった。SEP の執筆者は世界中の大学に所属する学者たちであり、質的な面で書籍の百科事典と比べても遜色のないものとなっている。しかし2011年現在も無料での公開(オープンアクセス)を維持しており、この事から、SEP はオンライン百科事典の一つのモデルケースとしてしばしば言及される。 2000年、Bomis.com というサイトを運営していた事業家ジミー・ウェールズが、博士号取得者のみが執筆し、7段階の査読プロセスを要する百科事典サイト Nupedia を開始する。しかし人が集まらず半年で更新停止、事実上閉鎖する。翌2001年、ジミー・ウェールズは、誰でも執筆に参加できるウィキ形式の非営利の百科事典作成プロジェクト、ウィキペディアを開始する。サイト設立翌年の2002年には、ウィキサイトを構築するためのウィキソフトウェア MediaWiki をオープンソースで無償で公開。MediaWiki は以降、各種の百科事典サイトの構築に利用されるようになる。ウィキペディアは設立以降大きな成長を続け、2006年にはアレクサ・インターネットのデイリーランキングで初めて上位10位にランクインした。これにはGoogle検索がウィキペディアを検索結果の上位に表示する傾向と、そこからの大きいアクセス流入も寄与した。このウィキペディアへのアクセス数の増加はオンライン百科事典という形式と、ウィキという共同編集方法を、広い範囲の人々に知らせるひとつの切っ掛けとなった。 ウィキペディアは有名になるにつれ、その内容の信頼性やコミュニティの混乱などが各所でしばしば話題となる。以降立ち上げられていくプロジェクトは、ある程度ウィキペディアの仕組みを意識する形で行われていった。2006年、アメリカの非営利団体デジタル・ユニバースが、信頼性の高い情報の提供を目指して専門家が執筆を行う地学・惑星科学関連の百科事典 Encyclopedia of Earth を開始。2006年、ウィキペディアの共同設立者ラリー・サンガーが、ウィキペディアと違い実名登録を要求するウィキサイト Citizendium を開始。実名登録などの仕組みの導入で、情報の質・信頼性の向上を図る。2006年、ロシア出身の数学者ユージン・イジケヴィッチが、専門家のみが執筆する神経科学系の百科事典 Scholarpediaを開始。業績ある専門家のみが執筆することで、ウィキペディアと違い学術的にも利用可能な百科事典とすることが目的とされる。2008年、マッカーサー基金とスローン財団、全生物種の情報集録を目指す専門家が主導する Encyclopedia of Life プロジェクトを開始。科学者コミュニティが研究上のツールとしても使えるだけの情報の量と質を確保することが目的とされる。
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