アーケアメーバとは? わかりやすく解説

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アーケアメーバ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2019/11/29 02:29 UTC 版)

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アーケアメーバ
分類
ドメ
イン
: 真核生物 Eukaryota
: アメーバ動物門 Amoebozoa
亜門 : コノーサ亜門 Conosa
: アーケアメーバ綱
学名
Archamoebea
Cavalier-Smith, 1983[1]

アーケアメーバミトコンドリアを欠き嫌気的環境に適応したアメーバ様生物からなる群。動物腸管内に寄生または片利共生する生物を含み、赤痢アメーバのような病原体も知られている一方で、淡水環境に棲息するものもいる。分類学的にはアーケアメーバ綱またはアーケアメーバ亜綱があてられている。名前は、真核生物ミトコンドリアを獲得する以前に分岐した生物群だと当初考えられた(現在は否定されている・アーケゾア参照)ことに由来しており、そのため古アメーバ類という訳語がある。

特徴

典型的には単核で鞭毛を1本持つものが多いが、多核のものもあり、鞭毛の本数も多様である。嫌気的または微好気的な環境に棲息していて、酸素呼吸を行うミトコンドリアを持たないが、ミトコンドリアが著しく縮退したマイトソームとなっているものが知られている[2]

鞭毛を持つものでは基底小体が対になっていないことが特徴的であり、その鞭毛は外腕ダイニンを欠いていて運動はあまり活発でない。鞭毛はあっても短くほとんど動かないような種もある。赤痢アメーバのように完全に鞭毛装置を欠いているものもある[3]

分類

分子系統解析によりアメーボゾアのうちコノーサの所属とされている。リンネ式階級分類では、たとえばアメーバ動物門コノーサ綱アーケアメーバ亜綱[4]、あるいはアメーバ動物門コノーサ亜門アーケアメーバ綱[5]とする。内部分類については分子系統解析による整理が進められているところである。ここでは2016年時点で提唱されている体系[6]を示す。

この他に分子情報がなく位置不詳のものとして、

  • TricholimacidaeCavalier-Smith, 2013
    Tricholimax hylaeのみ。ペロミクサ科とマスチゴアメーバ科の特徴を兼ね備える。
  • Endamoeba
  • Mastigina

がある。

歴史

1983年にトーマス・キャバリエ=スミスアーケゾア仮説を提唱した際にアーケアメーバ門として設立されたが、この時は単にミトコンドリアを持たないアメーバという特徴でまとめられたに過ぎなかった[1]。たとえばエントアメーバ科はミトコンドリアを二次的に喪失したと推測されて、アーケアメーバから外されたこともある[8]。それ以外にも、取り除かれたり追加されたりすることが多く、定義は曖昧であった[9]。しかし分子系統解析の情報からアーケアメーバはいずれもミトコンドリアを二次的に喪失したものと推定され、1997年にアメーボゾアに属する亜門とされた[10]。これ以降、分子情報が蓄積され系統解析の手法が改善されるなかで、アーケアメーバ類の一体性は一貫して支持されている。一方アメーボゾア内部の分類体系が整理されるにつれて、アーケアメーバ類の分類階級は下門[11]、綱[12]、亜綱[4]と下がっていった。

参考文献

  1. ^ a b Cavalier-Smith, T. (1983). “A six-kingdom classification and a unified phylogeny”. In Schenk & Schwemmler (eds.). Intracellular space as oligogenetic ecosystem. Endocytobiology. 2. de Gruyter. pp. 1027–1034. doi:10.1515/9783110841237-104. ISBN 978-3-11-084123-7. 
  2. ^ Adl, S. M., et al. (2019). “Revisions to the Classification, Nomenclature, and Diversity of Eukaryotes” (pdf). J. Eukaryot. Microbiol. 66: 4-119. doi:10.1111/jeu.12691. http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/jeu.12691/pdf. 
  3. ^ Ptáčková, E., et al. (2013). “Evolution of Archamoebae: Morphological and Molecular Evidence for Pelobionts Including Rhizomastix, Entamoeba, Iodamoeba, and Endolimax”. Protist 164 (3): 380. doi:10.1016/j.protis.2012.11.005. PMID 23312407. 
  4. ^ a b Smirnov, A., et al. (2005). “Molecular phylogeny and classification of the lobose amoebae”. Protist 156 (2): 129-142. 
  5. ^ Smirnov, A., et al. (2011). “A Revised Classification of Naked Lobose Amoebae (Amoebozoa: Lobosa)”. Protist 162 (4): 545-570. doi:10.1016/j.protis.2011.04.004. 
  6. ^ Pánek, T., et al. (2016). “First multigene analysis of Archamoebae (Amoebozoa: Conosa) robustly reveals its phylogeny and shows that Entamoebidae represents a deep lineage of the group”. Mol. Phylogenet. Evol. 98: 41-51. doi:10.1016/j.ympev.2016.01.011. 
  7. ^ Gutiérrez, G., et al. (2017). “Identification of Pelomyxa palustris Endosymbionts”. Protist 168 (4): 408-424. doi:10.1016/j.protis.2017.06.001. 
  8. ^ Cavalier-Smith, T. (1991). “Archamoebae: the ancestral eukaryotes?”. BioSystems 25 (1-2): 25-38. doi:10.1016/0303-2647(91)90010-I. 
  9. ^ Patterson, D. (1999). “The diversity of eukaryotes”. Am. Naturalist 154 (4): 96-124. doi:10.2307/2463980. 
  10. ^ Cavalier-Smith, T. (1997). “Amoeboflagellates and mitochondrial cristae in eukaryote evolution: megasystematics of the new protozoan subkingdoms Eozoa and Neozoa”. Arch. Protistenkd. 147 (3-4): 237-258. doi:10.1016/S0003-9365(97)80051-6. 
  11. ^ Cavalier-Smith, T. (1998). “A revised six-kingdom system of life”. Biol. Rev. Camb. Philos. Soc. 73: 203-266. doi:10.1111/j.1469-185X.1998.tb00030.x. 
  12. ^ Cavalier-Smith, T., et al. (2004). “Molecular phylogeny of the Amoebozoa and evolutionary significance of the unikont Phalansterium”. Eur. J. Protistol. 40 (1): 21–48. doi:10.1016/j.ejop.2003.10.001. 

アーケアメーバ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/02/18 16:59 UTC 版)

アーケゾア」の記事における「アーケアメーバ」の解説

次に検討対象になったのはアーケアメーバ門で、その構成要素エントアメーバ科ペロミクサ科マスチゴアメーバ科の3群である。まずエントアメーバ科動物腸管寄生(または片利共生)しており、パラバサリア同様に嫌気的環境への適応として二次的にミトコンドリア喪失した可能性問題となった。しかも1989年リボソームRNA遺伝子用いたごく初期分子系統解析で、エントアメーバ科赤痢アメーバ真核生物基部位置していないという結果得られた。そこで1991年エントアメーバ科取り除かれた。続いて残る2群についても分子系統解析が行われ、いずれも真核生物基部位置しないことから1996年取り除かれた。なお赤痢アメーバがかつてミトコンドリア持っていたことは1995年に、ミトコンドリア由来マイトソーム持っていることは1999年示されている。

※この「アーケアメーバ」の解説は、「アーケゾア」の解説の一部です。
「アーケアメーバ」を含む「アーケゾア」の記事については、「アーケゾア」の概要を参照ください。

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