歯肉アメーバ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/08/17 03:35 UTC 版)
歯肉アメーバ | |||||||||||||||||||||||||||
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1. アメーバ細胞
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分類 | |||||||||||||||||||||||||||
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学名 | |||||||||||||||||||||||||||
Entamoeba gingivalis (Gros, 1849) Brumpt, 1913 | |||||||||||||||||||||||||||
シノニム | |||||||||||||||||||||||||||
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和名 | |||||||||||||||||||||||||||
歯肉アメーバ[3][2][4]、口腔アメーバ[3] |
歯肉アメーバ(しにくアメーバ、学名: Entamoeba gingivalis)は、アメーボゾアのアーケアメーバ綱エントアメーバ属に属する嫌気性アメーバの1種である。ヒトの口腔内に生育するが、基本的に病原性は示さない。アメーバ細胞(栄養体)は葉状仮足をもち活発に運動し、細菌や白血球を捕食する(図1)。核小体は小さく中央に位置し、核膜に沿った染色質は均一に分布している。シストが見つかっておらず、ヒトからヒトへ栄養体が直接感染していると考えられている。
特徴
アメーバ細胞(栄養体、トロフォゾイト)のみが知られており、シスト形成は確認されていない[2][3]。アメーバ細胞は直径 5–30 µm であり、変異が大きい(ふつうは10–20 µm)[2][3]。外質は透明、内質は顆粒状で分化は明瞭[2][3](図1, 2)。ときに複数の仮足(偽足)を形成して活発に運動する(図2)。核は1個、直径 2–4 µm、核小体は小さく、中央に位置し、また核膜に沿った染色質は均質[2][3][1](図1, 2)。白血球や細菌などを捕食し、まれに赤血球を取り込む[2][3][1](図2)。
ヒトの口腔内に生育する[2][3]。二分裂によって増殖するが、エントアメーバ属で一般的なシスト形成が確認されていない[2][3][5]。
人間との関わり
歯肉アメーバは世界中でヒトの口腔内に生育し、極めて普遍的で歯科患者の59%、口腔が清潔な人の32%で認められたとする報告がある[5][6]。歯根と歯肉の間などに多いが、歯槽膿漏の部分には特に多く、歯槽膿漏患者の80%以上に見られたとする報告もある[3][5]。ただし、組織には侵入せず、一般的には歯槽膿漏を引き起こしているとは考えられていない[3][5]。症状の悪化に寄与している可能性はある[3]。扁桃腺窩に見られることもある[2]。義歯に存在することもある[1]。また、肺に侵入してアメーバ性肺膿瘍症となった例が報告されている[7]。子宮内避妊装置使用者の生殖管に高頻度で見られるとの報告もある[6][5]。
伝播様式は不明であるが、シスト形成が確認されておらず、飛沫、接吻、箸、スプーンなどによる栄養体の直接感染であると考えられている[3][5]。
人間が初めて認識した人体内生アメーバであり、Gros (1849) によってロシアで歯の表面の歯石から報告された[1]。
脚注
出典
- ^ a b c d e f g h “Entamoeba gingivalis (Grassi)”. The World of Protozoa, Rotifera, Nematoda and Oligochaeta. National Institute for Environmental Studies, Japan. 2025年8月11日閲覧。
- ^ a b c d e f g h i j 高田季久 (1981). “Entamoeba gingivalis”. In 猪木正三. 原生動物図鑑. 講談社. pp. 685–688. ISBN 978-4061394049
- ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q 宮田彬 (1979). “Entamoeba gingivalis”. 寄生原生動物: その分類・生態・進化. 寄生原生動物刊行会. pp. 685–688. ASIN B000J6U08M
- ^ “新寄生虫和名表”. 日本寄生虫学会 (2018年3月). 2025年8月10日閲覧。
- ^ a b c d e f “Entamoeba gingivalis”. DPDx. U.S. Centers for Disease Control and Prevention (2019年11月12日). 2025年8月11日閲覧。
- ^ a b 岡田裕之, 松本敬, 森川美雪, 中平隆志, 大村光浩 & 山本浩嗣 (2002). “歯肉アメーバに関する臨床病理学的および細胞学的検討”. 日本臨床細胞学会雑誌 41 (5): 321-326. doi:10.5795/jjscc.41.321.
- ^ 羽隅透, 斎藤泰紀, 阿部二郎, 星史彦, 川村昌輝, 田中遼太 (2011). “歯肉アメーバが同定されたアメーバ性肺膿瘍の1例”. 気管支学 33 (5): 331–336. doi:10.18907/jjsre.33.5_331.
外部リンク
- “Entamoeba gingivalis”. DPDx. U.S. Centers for Disease Control and Prevention (2019年11月12日). 2025年8月11日閲覧。(英語)
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