アルモニカのための音楽作品
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「アルモニカ」の記事における「アルモニカのための音楽作品」の解説
アルモニカのために書かれた正確な最初の音楽作品は、ハッセによるカンタータであった。それはオーストリアの皇女マリア・アマリアの結婚式で初演された作品であり、その音色の評判は瞬く間に広まった。 当時アルモニカの第一人者は、オーストリアの盲目の女性演奏家マリアンヌ・キルヒゲスナー(Marianne Kirchgessner)であった。モーツァルトは彼女と親しくしており、彼女のために『アダージョとロンド ハ長調 KV.617』の美しい五重奏曲や『アダージョ ハ長調 KV.617a』の独奏曲を作曲した。最近までこの曲は、パイプ・オルガンやピアノで代用されたレパートリーとして演奏されてきた。 ヤン・ヴァーツラフ・トマーシェクは『幻想曲』を彼女に献呈するつもりで作曲を進行していたが、彼女は1809年に亡くなってしまい、彼はその傑作を彼女の墓前に捧げることとなってしまった。 ドニゼッティの『ランメルモールのルチア』においてもアルモニカが使用されたが、初演時にアルモニカ奏者との交渉が成立せず、彼はやむなくその指定を線で消し、フルートで代用して初演することとなった。その箇所では、ルチアが“Un'armonia celeste, di', non ascolti?"(「天上の響きがお聴こえになられなくって?」)と訊く。NAXOSのCD(#外部リンク参照)では、この楽句が本来の指定に則り、フルートの代用ではなくアルモニカによって演奏された貴重な録音となっている。 サン=サーンスの『動物の謝肉祭』でも、このアルモニカが使用されている。第7曲「水族館」と、第14曲「終曲」においてであるが、この作品でも、本来のアルモニカを使用した演奏を耳にできる機会はほとんどないに等しい。チェレスタやグラス・ハープやパイプ・オルガンなどで代用した録音なども存在するが、最近ではアルモニカによる録音も入手することができる。しかし、アルモニカ奏者の尾西氏によると、動物の謝肉祭での「アルモニカ」とは、当時のフランスにおけるグロッケンシュピールの呼称を意図していたことが、スコアにおける楽器の扱いから明白だとの見解である。 チャイコフスキーの『くるみ割り人形』の一曲「金平糖の精の踊り」は、当時ミュステルが発明したばかりのチェレスタを用いた世界初の作品として非常に有名であるが、実は草稿の段階ではアルモニカを想定して書かれていたという説もある。しかしこれは学会によって否定されている。 このように、多くのアルモニカ作品やアルモニカを指定された楽句が、パイプ・オルガンやチェレスタ、フルートなどで代用されたり、時にはそのパートを無視して省略したり、ピアノで演奏できる新しいレパートリーとして楽しむという不本意な形で演奏されてきた。最近では、グラス・ハープによるアンサンブルで代用したものや、本来のアルモニカを使用した録音が、少しずつではあるものの出回り始めるようになってきた。
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