アメリカ艦隊の捕捉と混乱
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/07/07 14:24 UTC 版)
「サボ島沖海戦」の記事における「アメリカ艦隊の捕捉と混乱」の解説
スコット少将は2028に針路東北東を指示し、2035には全艦が単縦陣となって新しい航路に向かっていた。そんな中、2050にサンフランシスコから発艦した偵察機から「大型艦1、小型艦2、サボ島沖合北16海里にあり。調査のために接近する」という連絡が入った。スコット少将は以前の報告と兵力が違ったために新艦隊かどうかの判断に悩んだが、既出の艦隊である可能性も踏まえて北東に針路を変更し、サボ島沿岸水域を進ませた。だがこの時偵察機が発見した日本艦隊の正体は、水上機母艦2隻(日進、千歳)からなる輸送部隊であった。そんな中、2125にヘレナのSGレーダーが日本艦隊を捉え、ヘレナは「日本艦隊はアメリカ艦隊より方位315度、距離2万7,700ヤード(約2万5,300m)の場所にあり、速度20ノット、針路120度で進行中」と報告した。直後にソルトレイクシティーのレーダーも日本艦隊を捉えたが、両艦の報告は旗艦であるサンフランシスコに届いておらず、この時点でスコット少将は日本艦隊が接近していることを知らなかった。なお、旗艦のサンフランシスコは最新型のSGレーダーを装備していなかった。 2130、日本艦隊に接近していた偵察機が「大型艦1、小型艦2はガダルカナル島へ東に16海里進んだ」と続報を飛ばした。スコット少将は迎撃するか否か悩んだが、以前の報告にあった巡洋艦2隻からなる日本艦隊がサボ島を抜けてルンガ泊地に突入する可能性も踏まえ、哨戒を継続することを選んだ。そして、2132に全艦隊へ「取舵、針路南西」と指示して左方向へ大回頭を行った。回頭直後、ヘレナのレーダーが再び方位315度(北北西)、距離1万8,500ヤード(約1万6,900m)の位置に日本艦隊を捉えた。また2138にはボイシもレーダーにて方位295度(西北西)、距離1万4,000ヤード(約1万2,800m)にて正体不明の目標を発見し、ボイシ艦長のモラン大佐は旗艦へ報告すると共に右砲戦の命令を下した。しかしこの際、ボイシは「(自艦を基準とした目標方位として)方位65度」を伝えた。これをスコット少将は「(真)方位65度」として敵艦位置が北東と解釈したため、敵艦位置が報告があった両艦で正反対であることに悩み、敵か味方か判断を付けかねた。 この時もう一つの事態が生じた。前衛の駆逐艦3隻の内2隻(ファーレンホルト、ラフィー)は巡洋艦部隊の右側から先頭に出るべく速度を増したが、もう1隻のダンカンがレーダーで日本艦隊を探知し、独断で向かったのである。スコット少将は確認のため、前衛駆逐艦部隊の指揮を執るトビン大佐に「貴官は前方に進出中なのか?」と連絡したところ、「そうです。巡洋艦部隊の右舷を進みつつあります」という応答が帰ってきた。2142には旗艦であるサンフランシスコのレーダーが右舷方向の距離9,000ヤード(約8,200m)に目標をとらえたが、スコット少将はこれまでの情報を判断して、目標を分離した前衛の駆逐艦と判断し、後方につくよう命令した。 刻々と時間が過ぎる中、2145にヘレナのレーダーは距離5,000ヤード(約4,600m)に味方駆逐艦を捉えたが、同時刻にヘレナの見張員も肉眼で正体不明の艦隊を確認していた。ヘレナのレーダー士官はこの時、「どうしようというんだ、横付けにでもするつもりか!」と叫んだという。フーバー艦長は旗艦であるサンフランシスコに状況報告を行い、射撃許可を求めた。しかしスコット少将はこの通信に対して、「(質問を受信したという意味で)Roger」と返信した。フーバー艦長はこれを射撃許可が下りたものと誤解。ヘレナは2146、照明弾を打ち上げた後に距離3,800ヤード(約3,475m)の目標へ射撃を開始した。これを発砲開始の合図だと誤解した他のアメリカ艦は一斉に砲門を開き、戦端が開かれることとなった。なおこの時、アメリカ艦隊と日本艦隊の間にはアメリカ艦隊前衛の駆逐艦部隊がいたが、幸運なことに多くの砲弾はそれを飛び越えて日本艦隊へと降り注いだ。また、この時のアメリカ艦隊はレーダー射撃を行っておらず、目標を目視で確認した上で射撃を行っていたが、隊列は理想的なT字形で日本艦隊を迎え撃つ体勢にあった。
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