アメリカでの反応
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/13 23:41 UTC 版)
この発言は日本国内では当初は特に取り上げられなかったが、アメリカでは違った。早速アメリカの各テレビネットワークが取り上げた。ちょうど貿易摩擦の問題で日本への反感が高まっていた時期でもある。アメリカでは各方面が強く反発した。メキシコ系議員連盟の会長は発言撤回を求める声明を、黒人議員連盟は発言の真意を確認するために日本大使館に電報を送った。その他にも日本大使館には多数の抗議電話が殺到した。 これを受けて9月24日に中曽根は釈明の会見を開き、発言の一部だけが取り上げられているためとし、以下のように述べた。 『米国はアポロ計画や戦略防衛構想で大きな成果を上げているが、複合民族なので、教育などで手の届かないところもある。日本は単一民族だから手が届きやすいということだ。演説全体を読んでもらえばわかる。他国を誹謗したり、人種差別をしたわけではない』 米政府はこれに一応の理解を示したが、市民の怒りは治まらなかった。9月25日には日本航空ニューヨーク支店の予約センターに爆破予告があり、また日本総領事館が数カ月前まで在ったビルにも同様の予告があった。これらの場所では爆発物は発見されなかったが、10月2日にはロサンゼルス市街地のツイン・ビル「アルコ・プラザ」から多量の爆発物が発見された。このビルは前月に日本企業に買収されて評判となっていた。またその周辺の墓地で日系人の墓が壊されることが度々あったと言う。 9月25日には米下院に中曽根批判決議が提出され、公民権運動団体である「虹の連合」が松永駐米大使に対して、首相が公式謝罪と発言の撤回を行うよう正式に申し入れるなど激しい動きがあった。10月3日にはアメリカの黒人企業家、企業、団体などが連名でアメリカの有力新聞各紙に全面広告を打ち、中曽根批判を行った。 これらの反応に対して、中曽根首相は改めて謝罪のメッセージを発表した。 『私は、最近の私の発言が多くのアメリカ国民を傷つけたことを承知しており、心からおわびします。 唯一つはっきりさせておきたいことがあります。それは、私は、従来からアメリカの偉大さは、その多様な民族の活力と業績に由来するものであると確信しているということであり、私は、人種差別や、米国社会のいずれかの面を批判することを毛頭意図していなかったということです。』 市民レベルでの抗議運動はすぐには収まらず、カリフォルニア州では全米黒人地位向上委員会が中心となって日本製品不買運動が始まり、また日本人の車が襲われるなどの被害が発生した。しかし政府が上記の謝罪の受け入れを表明すると、非難決議案も採択を見合わされ、黒人議員連盟、ヒスパニック議員連盟も謝罪受け入れを表明、次第に事態は沈静化した。 なお、中曽根は丁寧な謝罪はしているものの、発言自体は撤回していない。
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