より近年の使用
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/08/10 07:30 UTC 版)
現在でも使われ続けているイングランドの一部地域を除いて、thouを使うことによってかつては示唆されていた砕けた親しみの雰囲気は消失している。現在thouは厳かな儀式においてや、欽定訳聖書を読む時、シェイクスピア作品、これらの古い様式を意図的にまねようとする改まった文学作品において使われている。口語英語のほとんどの方言では死語になって以後、それにもかかわらず神やヒバリ、アキレス、コミックの登場人物マイティ・ソーといった高貴な存在への呼び掛けのために近年の作家らによってこの単語が使われている。『帝国の逆襲』では、ダース・ベイダーは皇帝への呼び掛けにこれらの単語を使用する: "What is thy bidding, my master?"(〔あなたさまの〕ご命令は何でしょう? 我が師よ)。レナード・コーエンの楽曲「Bird on the Wire」では、彼は「I will make it all up to thee」と言って、愛する者に自分の生活を改めること約束する。カイザー・チーフスの楽曲「I Predict a Riot」については後述する。ダイアナ・ロスの楽曲「Upside Down」(シックのナイル・ロジャース・バーナード・エドワーズ作詞作曲)には「Respectfully I say to thee I'm aware that you're cheatin」という歌詞が登場する。これらの近年のこの代名詞の使用は親密さあるいは見下した態度からは遠く離れたものを示唆している一方で、上述したように聖書において神に対して用いられていること反映していると見ることができる。あるいは「Upside Down」の場合は、単に耳に残る韻のためかもしれない。 ほとんどの近代の作家は日常会話においてthouを使った経験がない。したがって彼らは伝統的な動詞形を混乱しやすい。人工的に古語を用いる近代の作家における最も一般的な誤りは、古い三人称単数の語尾 -ethをthouと共に用いることである(例: thou thinketh)。逆、つまり三人称に対して二人称単数末尾 -estを用いることも起こる(マイティー・ソーの台詞「So Sayest Thor!」)。この用法は、会話を古風あるいは格式ばったように見せる試みの中で、現代のパロディおよびパスティーシュでしばしば現われる。Thouとtheeの表現もしばしば取り違えられる。 アンソニー・バージェスの小説『時計じかけのオレンジ』(とその映画化)のために考案された架空のティーンエイジャー用語ナッドサットでは、アレックスと彼のdroopsは「thou」を普通に使用する。例えば、対立するギャングと戦う時、アレックスは彼らをthusと呼ぶ(二人称については「you」と「thou」が混合していることに注意)。 Well if it isn't fat stinking billygoat Billyboy in poison! How art thou, thou globby bottle of cheap stinking chip-oil? Come and get one in the yarbles, if you have any yarbles, you eunuch jelly thou! 一部の翻訳者は、特にyouが英語におけるT-V区別を「thou」と「you」で表わす。この慣習はほぼ失われている。アーネスト・ヘミングウェイは小説『誰がために鐘は鳴る』の中で、スペイン語を話す登場人物間の関係性を反映させるため、改まった二人称代名詞(usted)と砕けた二人称代名詞(tú)がまだ存在しているスペイン語を英語でよりうまく表現するために「thou」と「you」を使用する。 Thouとtheeを伴う節を読む際、多くの現代の読者はこれらの代名詞と動詞語尾に強勢をつける。しかしながら、伝統的には -est中のeは無強勢のはずであり、thouおよびtheeはyou以上に強勢をつけるべきではない。
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