より進んだ考えや事実
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/07/14 02:24 UTC 版)
M と N が R-S 両側加群のとき、写像 f: M → N が 両側加群準同型 であるとは、左 R-加群としても右 S-加群としても準同型であることである。 R-S 両側加群は実は環 R ⊗ Z S o p {\displaystyle R\otimes _{\mathbb {Z} }S^{\mathrm {op} }} 上の左加群と同じものである。ただし Sop は S の反転環(opposite ring、積を逆にしたもの)である。両側加群準同型は左 R ⊗ Z S o p {\displaystyle R\otimes _{\mathbb {Z} }S^{\mathrm {op} }} 加群の準同型と同じものである。これらの事実を用いることで、加群に関する多くの定義やステートメントがただちに両側加群についての定義やステートメントに翻訳される。例えば、すべての R-S 両側加群の圏はアーベル圏であり、標準的な準同型定理は両側加群に対しても成り立つ。 しかしながら、両側加群においては、とくにテンソル積において、いくつかの新しい効果がある。M が R-S 両側加群で N が S-T 両側加群ならば、M と N の(環 S 上の)テンソル積は自然に R-T 両側加群である。両側加群のこのテンソル積は(唯一の自然な同型の違いを除いて)結合的であり、それゆえ対象が環であり射が両側加群であるような圏を構成することができる。実際これは2-圏であり、自然な方法で R-S 両側加群 M と N の間の射はちょうど両側加群の準同型、すなわち、関数 f : M → N {\displaystyle f\colon M\to N} であって、m ∈ M, r ∈ R, s ∈ S に対して f ( m + m ′ ) = f ( m ) + f ( m ′ ) {\displaystyle f(m+m')=f(m)+f(m')} f ( r m s ) = r f ( m ) s {\displaystyle f(rms)=rf(m)s} , を満たすものである。ただちに両側加群準同型に対する相互交換法則が確かめられる。すなわち ( f ′ ⊗ g ′ ) ∘ ( f ⊗ g ) = ( f ′ ∘ f ) ⊗ ( g ′ ∘ g ) {\displaystyle (f'\otimes g')\circ (f\otimes g)=(f'\circ f)\otimes (g'\circ g)} が、左辺と右辺のうち一方が(したがってもう一方も)定義されているときにいつでも成り立つ。ただし ∘ は準同型の通常の合成である。この解釈により、圏 End(R) = Bimod(R, R) はちょうど通常の R 上のテンソル積、圏のテンソル積をもった R-R 両側加群のモノイド圏である。とくに、R が可換環であれば、すべての左または右 R-加群は自然に R-R 両側加群であり、圏 Bimod(R, R) = R-Mod は対称モノイド圏である。R が体 K である場合は対称モノイド圏の興味ある例である。このとき R-Mod = K-Vect は K 上のベクトル空間の圏であり、モノイド構造を与える通常のテンソル積 ⊗ = ⊗ K {\displaystyle \otimes =\otimes _{K}} と単位元 K をもっている。Bimod(R, R) におけるモノイドはちょうど R-多元環であることもわかる。(Street 2003) を見よ。さらに、M が R-S 両側加群で L が T-S 両側加群ならば、 M から L へのすべての S-加群準同型からなる集合 HomS(RMS, TLS) は自然に T-R 加群になる。これらの主張は導来函手であるExt函手やTor函手へと拡張される。 profunctor を両側加群の圏論的一般化と見ることができる。 両側加群 (bimodule) は双代数 (bialgebra) とは全く関係がないことを注意しておく。
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