どぶろく裁判と自家醸造自由化運動
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「どぶろく」の記事における「どぶろく裁判と自家醸造自由化運動」の解説
どぶろくの自家醸造、酒つくりの自由化運動を推進し、1981年には著書『ドブロクをつくろう』(農文協)を発表した前田俊彦が1984年に酒税法違反容疑で起訴され、控訴上告した通称どぶろく裁判が行われた。裁判で前田は、食文化の一つであるどぶろくを、日本国憲法で保障された人権における幸福追求の権利であると主張し、自家生産・自家消費・自家醸造の是非、また、酒税法で設けられた様々な制限が、大量生産が可能な設備を保有できる大資本による酒類製造のみを優遇し、小規模の酒類製造業が育たないようにしているとも主張した。裁判は最高裁判所にまで持ち込まれ、1989年12月14日に「製造理由の如何を問わず、自家生産の禁止は、税収確保の見地より行政の裁量内にある」として、酒税法の合憲判断と前田の有罪判決が出た。 しかし、元国税庁醸造研究所や東京国税局鑑定官を務めた穂積忠彦も1994年に『酒つくり自由化宣言』を刊行し、酒税法は時代遅れの悪法であると主張した。このほか、日本大学法学部教授の甲斐素直は「自分の造った酒を自由に飲む権利」は精神的自由権に属するものであるとし、またどぶろく裁判の最高裁判例が租税を根拠としたことについて、明治30年時点で酒税は国の税収の3分の1に達するほどの比重を持っていたが、近年では1兆円程度で推移し総税収の1〜2%の比重しかなく、「酒税法を取り巻く環境は急速に変化しつつあり、その中で、自己消費目的の酒作りを、依然として明治時代の発想のままに規制する根拠が存在するのかは、大いに疑問とされるようになってきている。審査基準として明白性基準を採用した状況下においても、純然たる自己消費目的の酒造りが、国の税収を大きく左右するような可能性は全く失われた今日、明白に違憲とみなすことは十分に可能と言うべきであろう」との見解をのべている。 また、酒税法が定める酒類製造業・酒類販売業における免許制度については、日本国憲法第22条 「職業選択の自由」の観点からも批判されている。1998年(平成10年)には、最高裁判所でも酒税法10条11号での酒類製造免許の規定について「原則的規定を機械的に適用さえすれば足りるものではなく、事案に応じて、各種例外的取扱いの採用をも積極的に考慮し、弾力的にこれを運用するよう努めるべきである」と判決が出ている。
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