「韜光養晦」に対する中国国内での受け止め方
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「韜光養晦」の記事における「「韜光養晦」に対する中国国内での受け止め方」の解説
「韜光養晦」の言葉を鄧小平が実際に使ったか否か、使ったとしたらいつどこで使ったかと言う議論はともかく、鄧のこのような外交姿勢が「韜光養晦」政策として中国国内で認識されるようになったのは、1990年代半ば以降のことである。そして、本「「韜光養晦」というフレーズは、現在中国国内で激しい議論を巻き起こしている。中国は国際舞台で「具体的にどう目立たないようにしながら、何をどうすべきなのか」を、中国の国内研究者や政府関係者は悩み続けてきた。中国人民大学(北京)の金燦栄教授は「戦略レベルでは誰もが、『韜光養晦』の考えにこのまま従うべきだと納得しているのだが、戦術レベルではいろいろな意見がある。中国は後手に回りすぎだという人もいるし、中国はもっと先手を打つべきだと言う人もいる」という。だが中国には、鄧のこの格言を時代遅れで、中国の新しい国際的立場にそぐわないと批判する研究者もいる。中国はそろそろ堂々と振る舞い、もっと自己主張し、自国利益を守るべきだとする主張、すなわち、「更有作為」(もっといろいろやる)との主張である。逆に、中国は国際社会の厄介事に巻き込まれないようにするため、「無所作為」(何もしない)のがいいという学者も少数ながら存在する。中国の積極的な外交を主張する一人である清華大学の閻学通(イェンシュエトン)教授は、「中国は目立たないようにし続けるのではなく、偉大な責任ある大国としてもっと積極的な外交をすべきだ。『目立たないようにする』政策は、1990年代初めの国際環境や中国の国際的地位からすれば適切だった。しかし中国の国際的地位は現在根本的な変化を遂げた。『目立たないようにする』政策は、中国に害をもたらす」とすら主張する。しかし、大多数の議論は中国の発展段階と限定的な力を思えば、「韜光養晦、有所作為」は中国外交にとって適切な指針だと同意している。2010年に蘭州で開かれた中国国際関係学会の年次総会では、中国本土から集まった参加者が「韜光養晦」パラダイムが今でも効果的かどうかを激しく議論した結果、今でも中国外交の指針としてふさわしいとの結論を下した。この大前提となる合意をもとに、参加者たちはそのほかにも9つの主要政策提言を打ち出した。 アメリカと対立するな 国際システム全般に挑戦するな 外交政策をイデオロギーで決めるな 「反欧米陣営」のリーダーになるな たとえ自分たちが正しくても、大多数の国と対立するな 妥協や譲歩を学び、相互利益の駆け引きを覚えるように 国家統一に関する中国の核心的利益について妥協するな 何かを必要としている国際社会の場には公共財を提供するように 重要な国際イベントを活用して中国の国際的イメージを変えよう さらに、2015年になって「中国の対外政策は『韜光養晦』から『奮発有為(勇んで事をなす)』への大転換をした」とする見方もあらわれた。清華大学副教授の趙可金は、朝日新聞のインタビューにおいて、「中国の対外政策は、北京五輪やリーマン・ショックのあった2008年を境に大転換した」との認識を示した。これに続けて「南沙諸島での『争いは棚上げし、共同開発する』という立場は変わらないが、フィリピンやベトナムの一方的な開発に対応する余裕が出てきたことで、言うべきは言い、やるべきことはやるとの立場に替わった。周辺国からあなどられない大国としての外交の転換をした」と述べている。
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