ハクサイ 生産

ハクサイ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/02/12 20:26 UTC 版)

生産

世界的にハクサイの栽培量が多いのは、日本、韓国、中国東北部である[7]。中国では1961年以来、ハクサイ消費量が増え続けている傾向にある[58]

日本

日本での生産量はダイコン、キャベツに次いで3番目に多い。統計では1941年からデータが取られ、既に50万tが生産されていた。1968年にピークとなり186万tを超えたが、その後は食文化の洋風化により減少した。第二次世界大戦後に生産量が急拡大した際、連作障害による被害が拡大したが、これに対抗する耐病性育種も進んだ。

有力産地は、冬場は茨城県、夏場は冷涼な長野県である[59]。作型が分化し、通年安定的に供給されているが、日本最大の生産地である茨城県は4月 - 5月と11月 - 1月の出荷量が多く、長野県は7 - 9月、群馬県は7月と1月 - 2月に多い[7]。夏ハクサイの産地である北海道は8月 - 10月、秋冬ハクサイの産地、兵庫県は2月 - 3月に出荷量が多くなる[7]

食用

はくさい(結球葉、生)[60]
100 gあたりの栄養価
エネルギー 59 kJ (14 kcal)
3.2 g
食物繊維 1.3 g
0.1 g
飽和脂肪酸 0.01 g
多価不飽和 0.03 g
0.8 g
ビタミン
ビタミンA相当量
(1%)
8 µg
(1%)
92 µg
チアミン (B1)
(3%)
0.03 mg
リボフラビン (B2)
(3%)
0.03 mg
ナイアシン (B3)
(4%)
0.6 mg
パントテン酸 (B5)
(5%)
0.25 mg
ビタミンB6
(7%)
0.09 mg
葉酸 (B9)
(15%)
61 µg
ビタミンC
(23%)
19 mg
ビタミンE
(1%)
0.2 mg
ビタミンK
(56%)
59 µg
ミネラル
ナトリウム
(0%)
6 mg
カリウム
(5%)
220 mg
カルシウム
(4%)
43 mg
マグネシウム
(3%)
10 mg
リン
(5%)
33 mg
鉄分
(2%)
0.3 mg
亜鉛
(2%)
0.2 mg
(2%)
0.03 mg
マンガン
(5%)
0.11 mg
他の成分
水分 95.2 g
水溶性食物繊維 0.3 g
不溶性食物繊維 1.0 g
ビオチン(B7 1.4 µg
硝酸イオン 0.1 g

ビタミンEはα─トコフェロールのみを示した[61]。廃棄部位: 株元
%はアメリカ合衆国における
成人栄養摂取目標 (RDIの割合。

寒さにあたって、おいしさを増す冬を代表する野菜で知られ[41]キャベツのように結球した葉を食用とする。結球様の形状はキャベツがやや横に扁平なのに対し、ハクサイは縦に長い。葉は結球の外側は緑色をしているが、結球の内部へいくほど黄白色になる。栄養価は外側ほど高い傾向がある。一球を一度に食べ切れない場合は、切って内側の葉から先に使うと味が長持ちしやすい[62]

通年流通するが、本来のは冬(11月 - 2月)とされ[12][41]、葉がしっかりと巻いていて、大きさの割に重みのあるもので、軸の白い部分が太すぎず、外葉が青々としているものが市場価値が高い良品だと言われている[12][41][42]。特に、気温が下がって霜に当たると自然な甘みが出て、繊維が柔らかく美味となり[63][12][41]、食べる前に2 - 3日天日干しすると、さらに甘味が増す[41]。味は山東系品種は水気が多く甘味がある[7]。北方系の竹の子白菜は、甘味と独特の風味があるが、葉が固くて漬物には向かない[7]。南方系のヘアレスはくさいは、葉が柔らかくて生食に向いている[7]

調理・料理

冬の鍋料理の具材として定番となっている[12]。また、煮物煮浸し汁物炒め物蒸し物漬物などに使われるほか[7]、キャベツと同様に(あるいはその代用品として)餃子の具に使われる場合がある[64][65][66]

煮る、炒める、和える、漬けるなど、調理方法は幅広い[12]。日本では加熱して用いることが多いが、欧米では主にサラダ用として広まっている[7]。葉と茎では、加熱時の火の通りに違いが出るので、切ったあとに葉と茎の部分を分けておいて、時間差を付けて加熱調理するのがふつうである[7]。炒め物で使うときは、葉を1枚ずつ広げて、火の通りやすい葉の部分と、厚みがあって火が通りにくい軸の部分を切り分けて、軸は根元のほうから軸方向に沿わせてそぐように包丁を斜めに入れて切ると、断面積が広くなって火が通りやすくなり、味もよくしみる[40]。料理によって調理法も異なるが、弱火で調理すると水分が出て水っぽくなるため、強火で一気に仕上げるとよいと言われている[7]

中華料理では、全体にとろみを付けて煮汁も一緒に食べるように工夫される[67]。中華料理におけるハクサイは、中国のどの地方でも、豚肉と同じくらいさまざまな料理に使われている食材である[68]

栄養価

野菜の中でも低カロリー(可食部100グラム中、14 kcal)で、水分が約95%と多く、各栄養素が微量なため栄養面ではあまり評価されていないが、ビタミンCビタミンB群食物繊維カリウムビタミンK葉酸などをバランスよく含有する淡色野菜である[63][12][41]。外葉の緑色の部分には、β-カロテンも含まれている[12]。煮物にすると、水に溶け出したビタミンやカリウムも逃さず摂取することができる[41]

ハクサイは一度の食事でたくさん食べることができる野菜である[67]。このため、食物繊維を多く摂取できることもできるため、食事で摂った余分なコレステロールや糖質を体外に排出して、便秘の解消や、高血脂症や糖尿病の予防に役立つと考えられている[67]。ハクサイに豊富に含まれるカリウムは、体内の余分なナトリウムの排出を促すことから、漬物など塩分量が多い食事の場合を除いて、食物繊維と相まって高血圧を予防する働きが期待できる[67]。ハクサイのビタミンCは水に溶けやすい欠点があるが、たくさん食べることで冬場の貴重なビタミン供給源となる[67]。ハクサイに含まれるビタミンC量は部位別で異なり、葉先に近い中心部付近が少なく、葉の先端が最も多くなる[67]

抗がん作用が指摘されているイソチオシアネートが豊富である[69]。アブラナ科の野菜に共通して含まれている機能性成分にグルコシノレートがあり、ハクサイにもわずかであるが含まれている[67]。グルコシノレートは加熱しても分解されず、体内に入ると肝臓の解毒作用を活性化することも証明されている成分で、動物を使った研究ではがんの発症を抑制したという報告がある[67]。また、発がん物質の吸収や蓄積を防ぐモリブデンが微量ミネラルとして含まれているなど、ハクサイにはがんを予防する働きが期待されている[67]

保存

葉菜類の中でも貯蔵性が高く、カット売りされているものよりも、丸ごと売られているもののほうが日持ちし、冬場であれば2か月ほどもつ[41][7]。株をまるごと保存するときは乾燥を防ぐため新聞紙に包んで、冷暗所で立てて置く[40][41]。大きく切ったものは、ラップで包んで乾燥を防ぎ、冷蔵する[41]。切った物は、株の根元に縦に切れ目を入れておくと、ハクサイの成長を止められるため、鮮度がより長持ちする[7]

文化

中華民国台北市国立故宮博物院の代表的な収蔵品に「翠玉白菜」がある[70]。ただしこの白菜は本種のことではなく、山東菜のような結球しないタイプがモデルである。「翠玉白菜」は光緒帝である瑾妃の宮殿内にあった翡翠彫刻で、そのモチーフとなっている白菜には「純潔」、バッタ類には「多産」の意味があるとされている[70]


注釈

  1. ^ 山東白菜など。
  2. ^ ベか菜、広島菜など。

出典

  1. ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Brassica rapa L. var. glabra Regel 'Pe-tsai'”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2021年12月2日閲覧。
  2. ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Brassica rapa L. var. glabra Regel”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2021年12月2日閲覧。
  3. ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Brassica rapa L. var. pekinensis (Lour.) Kitam.”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2021年12月2日閲覧。
  4. ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Brassica rapa L. var. amplexicaulis Tanaka et Ono subvar. pe-tsai”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2021年12月2日閲覧。
  5. ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Brassica rapa L. subsp. pekinensis (Lour.) Hanelt”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2021年12月2日閲覧。
  6. ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Brassica pekinensis (Lour.) Rupr.”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2021年12月2日閲覧。
  7. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t 講談社編 2013, p. 117.
  8. ^ 講談社編 2013, p. 114.
  9. ^ マッケンハウプト 2019, p. 10.
  10. ^ a b マッケンハウプト 2019, p. 14.
  11. ^ マッケンハウプト 2019, p. 15.
  12. ^ a b c d e f g h 主婦の友社編 2011, p. 142.
  13. ^ a b c d 西貞夫、野菜あれこれ(7)『調理科学』15巻 (1982) 1号 p.24-32 , doi:10.11402/cookeryscience1968.15.1_24
  14. ^ a b マッケンハウプト 2019, p. 16.
  15. ^ マッケンハウプト 2019, pp. 15–16.
  16. ^ マッケンハウプト 2019, p. 28.
  17. ^ a b c マッケンハウプト 2019, p. 29.
  18. ^ a b c d マッケンハウプト 2019, p. 97.
  19. ^ マッケンハウプト 2019, p. 96.
  20. ^ マッケンハウプト 2019, p. 98.
  21. ^ 《한국농업근대사》, 168-169쪽, 농촌진흥청, 2008년 12월 발간
  22. ^ 板倉聖宣 1994, p. 78.
  23. ^ 板倉聖宣 1994, pp. 104–105.
  24. ^ 板倉聖宣 1994, pp. 105–108.
  25. ^ a b 板倉聖宣 1994, p. 25.
  26. ^ 板倉聖宣 1994, p. 29.
  27. ^ 板倉聖宣 1994, p. 31.
  28. ^ 板倉聖宣 1994, p. 33.
  29. ^ 板倉聖宣 1994, p. 35.
  30. ^ 板倉聖宣 1994, pp. 70–76.
  31. ^ 板倉聖宣 1994, p. 76.
  32. ^ 板倉聖宣 1994, pp. 79–80.
  33. ^ 板倉聖宣 1994, p. 86.
  34. ^ 板倉聖宣 1994, pp. 88–89.
  35. ^ 板倉聖宣 1994, pp. 92–93.
  36. ^ 板倉聖宣 1994, p. 93.
  37. ^ 仙台白菜の生みの親 沼倉吉兵衛太白区まちづくり推進協議会)。山本金次郎・編『宮城県名勝地誌』、宮城県教育会、1931年、251-252頁。
  38. ^ 太白区まちづくり推進協議会. “162 仙台白菜 沼倉吉兵衛(ぬまくらきちべえ)”. 『ディスカバーたいはく』5号. 太白区まちづくり推進協議会. 2017年7月8日閲覧。
  39. ^ 板倉聖宣 1994, pp. 94–95.
  40. ^ a b c d e f 主婦の友社編 2011, p. 143.
  41. ^ a b c d e f g h i j k l m n o 猪股慶子監修 成美堂出版編集部編 2012, p. 44.
  42. ^ a b c 講談社編 2013, p. 116.
  43. ^ 猪股慶子監修 成美堂出版編集部編 2012, p. 45.
  44. ^ a b c d e 金子美登 2012, p. 139.
  45. ^ a b c d e 丸山亮平編 2017, p. 56.
  46. ^ a b c d e f g 藤田智監修 NHK出版編 2019, p. 150.
  47. ^ a b c d e 主婦の友社編 2011, p. 146.
  48. ^ a b c d e f g 金子美登 2012, p. 138.
  49. ^ a b c d e 藤田智監修 NHK出版編 2019, p. 151.
  50. ^ a b 住友化学園芸
  51. ^ a b c 丸山亮平編 2017, p. 57.
  52. ^ a b c d e 主婦の友社編 2011, p. 147.
  53. ^ JAグループ福岡
  54. ^ 金子美登 2012, p. 242.
  55. ^ 飯塚隆治、野菜の生育障害 (2)『化学と生物』1991年 29巻 11号 p.746-753, doi:10.1271/kagakutoseibutsu1962.29.746
  56. ^ 谷本俊明、上本哲、ハクサイのゴマ症発生要因について『広島県立農業試験場報告』45号, p.69-78(1982-12)
  57. ^ a b 松本美枝子、ハクサイゴマ症の発生における基肥窒素施用量の影響『日本土壌肥料学雑誌』1990年 61巻 4号 p.345-352, doi:10.20710/dojo.61.4_345
  58. ^ マッケンハウプト 2019, p. 152.
  59. ^ ハクサイの主要な国内生産地はどこですか。 農林水産省、2023年9月30日閲覧
  60. ^ 文部科学省日本食品標準成分表2015年版(七訂)
  61. ^ 厚生労働省日本人の食事摂取基準(2015年版)
  62. ^ 【彩時季】ハクサイ 内側から使い味長持ち日本経済新聞』夕刊2019年2月2日(社会・スポーツ面)2019年2月7日閲覧。
  63. ^ a b [白菜]幅広い料理に合う白菜の栄養価と、保存方法カゴメ(2019年2月7日閲覧)。
  64. ^ アラサーからのダイエット飯(60) 糖質オフで野菜がたっぷり摂れるキャベツ餃子 マイナビニュース
  65. ^ 「つくばコレクション」新たに5点 厳選した地産品使用「元祖つくば餃子」など - 産経ニュース
  66. ^ 「餃子ダイエット」の痩せ効果がすごいと話題に!やり方&理由をチェック モデルプレス
  67. ^ a b c d e f g h i 講談社編 2013, p. 119.
  68. ^ マッケンハウプト 2019, p. 150.
  69. ^ 中村宜督、イソチオシアネートによるがん予防の可能性『環境変異原研究』2004年 26巻 3号 p.253-258, doi:10.3123/jems.26.253
  70. ^ a b 東京国立博物館ニュース 2014 6-7”. 東京国立博物館. 2019年9月24日閲覧。


「ハクサイ」の続きの解説一覧



英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「ハクサイ」の関連用語

ハクサイのお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



ハクサイのページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアのハクサイ (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。

©2024 GRAS Group, Inc.RSS