ハクサイ
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栽培
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ハクサイは冷涼な気候を好み、栽培に適した土壌酸度は pH 6.0 - 6.5、発芽適温は18 - 25℃、栽培適温は15 - 20℃とされる[45][46]。「春まき」もできるが、一般に作型は「秋まき」で栽培し、晩夏から初秋(8月下旬 - 9月上旬)にかけ播種し、間引きしながら育て、初冬から春先にかけ収穫する[47][48]。アブラナ科植物であることから連作障害があり、同じアブラナ科野菜の作付については、2年から3年は不可とされる[45][46]。種まき時期が重要で、適期より早すぎると病虫害に遭いやすくなり、遅すぎると低温で葉数が不足して、うまく結球しなくなる[48][45]。また、結球のプロセスはデリケートで、15 - 20℃の気温と、本葉18 - 20枚に生育している条件が重なると結球が始まる[46]。結球開始時の株の大きさで結球する玉の大きさも決定されるため、植え付け時期や追肥のタイミングも重要になる[46]。外葉が枯れると結球しなくなる[47]。肥料を好み、元肥を多めに入れて、追肥も3回ほど行う[48]。苗を大量につくる場合は、練り床に種まきをしてもよい[48]。苗が小さいうちは、しっかり害虫対策をすることが肝要になる[48]。
播種から2 - 3か月で収穫が可能で[46]、品種により収穫までの栽培日数は異なり、極早生種は50 - 60日、早生種は65 - 70日、中早生種は75 - 80日、中生種は75 - 80日、晩生種は95 - 100日ほどかかる[49]。本葉4 - 6枚の苗が植えつけ適期[45][46]。早生種は播種から65日ぐらいで収穫可能。手で玉を押し、固く締まっていれば採取する[50]。葉が20枚以上に育っても結球しなかったものは、そのまま畑に置いておき、春に花茎を収穫してもよい[51]。
畑は植付け前2週間前に苦土石灰を散布して中性にし、堆肥をすき込んで畝を作る[47][51]。畝に約60 cm間隔で種を、1か所に10粒ほど点まきして、軽く覆土する[47]。発芽したら間引きしながら育て、1回目は双葉が出揃ったら半数に、2回目は本葉5 - 6枚で2本だけ残し、3回目は本葉10枚で1か所に1本だけ残す[47]。また、苗をつくって定植する方法でもよく、育苗箱に筋まきして双葉が出たら育苗ポットへ移植し、本葉4 - 5枚の苗に育てて定植する[48]。
種まき40 - 80日後から結球して生育するために盛んに養分の吸収が始まる[52]。定植の2週間後から約20日ごとに追肥を施して、除草を兼ねて中耕と土寄せを行い、外葉が大きくなるように育成すると大玉化する[52][44]。順調にいけば、10月ごろから少しずつ結球のはじまりが見られ、11月ごろさらに葉が巻く[44]。また特に暖期は、アブラムシ、アオムシ、ダイコンサルハムシなどの害虫がつきやすいため、白い寒冷紗でトンネルを作るとよい[50][48][51]。
11月以降、触ってみてしっかり葉が固く巻いていたらハクサイの収穫に入り、株の根元を切って収穫する[44]。また越冬時は、玉の上部を外葉ごとひもで縛ることで内部の玉になった葉を雪や霜の害から守る[52][49]。霜や気温が0度以下になった場合に、細胞内の水分が凍結し、葉が枯れてしまう「霜枯れ」が起こるのを防止する目的である。こうすることで外葉が霜で痛んでも、中の玉は瑞々しい[49]。通常日本では11月下旬からこの作業を行い、ハクサイの株を畑で貯蔵でき、春まで必要なときに随時収穫できる[52]。また、この作業の必要がない、葉が巻きやすくなった品種もある[53]。
普通のハクサイの半分ほどの大きさのミニハクサイは、種まきから50日ほどで収穫でき、耐病性にもすぐれるので、家庭でコンテナで栽培することにも向いている[52]。
病虫害
病虫害は軟腐病、ウイルス病、アブラムシ、コナガ、アオムシ、ヨトウムシなどがあり、アブラムシやアオムシの被害が多発しやすい[45][46]。軟腐病は、土中の細菌が原因で植物の傷口から細菌が入って地中に近い葉がドロドロに軟化して腐敗する病気で[54]、マルチングを行って雨による泥の跳ね返りをすると効果的である[49]。植え付け直後に防虫ネットなどをトンネル状にかけておくと、害虫がつくのを予防できる[49]。
- べと病
- 葉に不規則な淡黄色の病斑が広がっていき、葉裏にカビが生えてくる病気。
- 石灰欠乏症(アンコ症)
- 結球内の芯から腐敗して溶けてしまう病気。石灰欠乏が原因。
- ゴマ症
- 茎に黒い斑点が多数現れる現象。実際には病害でも虫害でもなく、タンパク質がα-アミノ態窒素に変化したもので、ポリフェノールの一種である。美観を害する以外に、発症による白菜の影響はない[55]。栽培の際に与える窒素肥料過多による[56]、外葉の過剰肥大が引き起こす光合成不足により発生しやすい[57]。栽培技術的には、初期の生育を緩慢にし窒素吸収を抑制し、外葉の過剰肥大を防止すれば、ゴマ症の発症を回避可能である[57]。
注釈
出典
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