鞋とは? わかりやすく解説

くつ【靴/履/×沓/×鞋/×舃】

読み方:くつ

足を覆うように作った履物総称。革・人造皮革・ゴム・ビニール・布などを材料とし、用途に応じて種々のものがある。古くは、烏皮(くりかわ)の履・浅沓(あさぐつ)・糸鞋(しがい)・麻沓(おぐつ)・錦鞋(きんかい)など、革・木・絹糸・麻・錦・(わら)などで作った

[下接語] (ぐつ)雨靴編み上げ靴・上(うわ)靴・運動靴革靴木靴ゴム靴短靴どた靴泥靴長靴・布靴・半靴深靴雪沓(わら)沓


靴(履・沓・鞋)

★1a.遠くへ行ける靴。飛行靴。

オズの魔法使いボームドロシーは、オズの国から故郷カンサス帰るために、魔法使い(実はペテン師老人)の気球乗ろうとするが、愛犬トトを捜していて乗り遅れる魔女グリンダが「銀の靴には、世界のどこへでも3歩で運んでくれる魔力がある」と教えドロシー銀の靴をはいて空中を3歩あるき、カンサス草原帰り着く。靴は空中脱げ落ちて、どこかへいってしまった。

親指小僧ペロー人食い鬼が7里の長靴をはき山や川を次々越えて親指小僧たち7人兄弟追いかけるが、そのうち疲れて眠りこむ。親指小僧人食い鬼長靴脱がせ、それをはいて人食い鬼女房所へ行き人食い鬼の全財産だまし取る

影をなくした男シャミッソー) 影も恋も失った青年シュレミール(*→〔影〕2a)が市場で偶然手に入れた古靴は、1歩あるけば7里を行く魔法の靴だった。彼は世界中歩き回り自然の中で植物学動物学研究に、残る生涯費やした〔*長い髭をはやしたシュレミールは、ある時病気になり、病院でかつての恋人ミーナ再会する。しかし彼は名乗らぬまま、また旅に出る〕。

ギリシア神話アポロドロス第2巻第4章 セリポス島の王ポリュデクテスゴルゴン退治を命ぜられたペルセウスは、ニムフたちの所を訪れ、翼のあるサンダル得た。彼はサンダルを踵につけて空を飛びゴルゴン姉妹の棲処へ行って末娘メドゥサの首取った

★1b.いくらでも金貨が入る底なしの靴。

『土(ど)まんじゅうグリム)KHM195 悪魔が、死者の魂を取ろう墓地へ来る。百姓兵隊土まんじゅう夜番をしており、「長靴片方いっぱい金貨詰めてくれるな死体渡そうと言う長靴は底が抜いてあり、しかも穴の上置いてあったので、悪魔がいくら金貨入れて筒抜けで、長靴空っぽのままだった。悪魔何度も金貨の袋を持って来るが、そのうちに夜が明け悪魔逃げて行った

★2a.人の形見身代わりとしての靴。

水鏡中巻 天智天皇10年(671)。9月天皇病み譲位意志示した12月3日天皇は馬に乗って山科向かい中に入って姿を消した行方わからず、ただ沓だけが落ちていたのを、陵(みささぎ)におさめた〔*『日本書紀』27天智天皇10年では、12月3日天皇近江宮崩御された、と記す〕。

天智天皇の死の伝承は、バハラーム王の死物語連想させる→〔死体消失〕5の『七王妃物語』(ニザーミー)第44章。

*若い娘が、木の下草履脱ぎ置いたま行知れずになる→〔神隠し〕の『遠野物語』柳田国男)8。

『ラーマーヤナ』第2巻アヨーディヤーの巻」 カイケーイー妃が継子ラーマ追放し実子バラタを王にしようとはかる。バラタ王位につくことを拒否しラーマ帰国を願うが叶わなかった。バラタラーマの履を請い受けて、それをラーマ身代わり玉座置いた

★2b.下駄も、人間身代わり認められた。

百姓女たよ』木下順二封建時代は、妻から離婚申し出ることはできず、縁切り寺駆け込むしか方法がなかった。しかし途中でつかまったら、たいへんなことになる。追っ手迫ったら、下駄片方ぬいで、寺の門内へ投げ込めばよい。そうすれば寺がかくまってくれ、たとえ大名でも手出しできない→〔縁切り〕3。

★3a.王が、靴の持ち主の女を捜して、妻とする。

ギリシア奇談集』アイリアノス)巻13-33 エジプト美貌遊女ロドピス入浴中降りて来て、彼女の靴の片方つかんで飛び去ったはメンピスまで飛び、プサンメティコス王の懐に靴を落とした。王は、「靴の持ち主である女を求めてエジプト全土捜索せよ」と命令し見つけ出すと妃にした。

灰かぶりグリム)KHM21 真っ白な小鳥が、輝く衣裳黄金の靴を「灰かぶり(=シンデレラ)」に与える。「灰かぶり」はお城舞踏会行って王子と踊る。日が暮れて灰かぶり」は帰ろうとするが、王子は「灰かぶり」を逃がさないために、前もって階段べたべたチャン(=瀝青)を塗っておいた。左の靴がくっついて残り王子は「この黄金の靴が合う娘を妻とする」と言う。「灰かぶり」の足が靴にぴったり合い王子結婚する

ガラスの靴が合う娘を捜す→〔ガラス〕1の『サンドリヨン』(ペロー)。

酉陽雑俎続集巻1-875 継母いじめられる娘・葉限しょうげん)は、不思議な魚の骨祈って宝玉衣裳など望みのものを得る。祭日葉限美しく着飾って出かけるが、継母に見とがめられ慌てて帰る時、金の履を片方落とす。隣国の王がそれを手に入れ、履に合う足の娘を捜して葉限見いだす葉限美貌であったので、王の上婦となる。

*靴の持ち主の女を捜すと、豚だった→〔豚〕1a『太平広記』439所引『集異記』。

★3b.靴の持ち主を捜されると困るので、他人の靴と取り替える

笑府6⑪「認鞋」 夜、人妻隣人通じているところへ、夫が帰って来る。隣人は窓から逃げ、夫はその鞋をつかみ取る。夫は妻を罵り、「明日、鞋の主をつきとめると言う。妻は、夫が眠っている間に、隣人の鞋を夫の鞋と取り替えておく。翌朝、夫は鞋を見て驚き、妻に謝る。「私は勘違いしていた。昨夜、窓から逃げたのは私だったのだ」。

★4a.焼けた靴をはかされて、踊り狂う

『白雪姫』グリム)KHM53 白雪姫王子結婚式に、継母(妃)が招かれる継母は、毒りんごで殺したはずの白雪姫花嫁姿でいるのを見て、驚く。その場継母は、炭火真っ赤に焼けた靴をはかされる継母踊り狂い、やがて息が絶えて倒れる。

★4b.意志かかわらず踊り続ける靴。

『赤いくつ』アンデルセンカレンのはいた赤いくつは足にくっついてぬぐことができず、しかも彼女の意志かかわりなく踊る。くつがカレン身体運びカレンは畑をこえ草原をこえて、晴れた日も雨の日も、昼も夜も踊り続けなければならない。剣を持つ天使が「おまえは死ぬまで踊り続けるのだ」と、カレン宣告する

★5.靴をきっかけに、親交を結ぶ。

『日本書紀』24皇極天皇3年正月 中臣鎌子なかとみのかまこ)は、逆臣蘇我入鹿を倒すために、中大兄(なかのおほえ)に近づきたいと考える。法興寺槻の木の下で中大兄が打毬ちょうきゅう)を行なった時、彼の皮鞋(みくつ)が脱げ落ちた。鎌子はそれを掌中取り持ち、跪(ひざまづ)いて奉り中大兄も跪いて受け取ったそれ以来2人親密になり、ともに入鹿暗殺計画練った

★6.沓を前後逆にはく。

義経記巻5「吉野法師判官を追ひかけ奉る事」 昔、天竺波羅奈(はらない)国の王が戦争負けた時、沓を前後逆さに履いて逃げた不思議な足跡見た敵軍は、「何か計略があるのか?」と疑い追跡をやめた。吉野逃げ源義経主従が、この故事倣って沓を逆に履く。しかし追手は、「これは波羅奈国王の先例従ったものだ」と見破り追撃の手ゆるめなかった。

奇談異聞辞典柴田宵曲)「逆沓(さかぐつ)」 丹後由良の湊に「逆沓」という故事がある。つし王丸が、三荘太夫の許(もと)から脱出して京へ上る時、沓を前後逆にはいて、雪中逃げた。そのため、についた足跡は奥丹後へ向かうように見え追手は奥丹後方面を捜したので、つし王丸無事に京へ入ることができた(『譚海』巻2)。

★7.草履男女縁結びをする。

椿説弓張月後篇巻之1第16回 鎮西八郎為朝が、三宅島沖の「女護の嶋」を訪れる。磯辺には、木の皮で編んだ草履いくつも並び、「漂流して来た男がここで草履をはくと、草履持ち主である女がその男を夫とする」との伝説思わせる光景だった〔*後に嶋の娘・長女(にょこ)が、「草履磯辺に置くのは『男(を)の嶋』に住む夫たちの無事を祈るためで、日本陰膳かげぜん)と同じです」と、為朝説明する〕。

飢えて靴を食べる→〔飢え2aの『黄金狂時代』(チャップリン)。

片足にだけ靴をはいている男→〔片足〕7の『アルゴナウティカ』アポロニオス第1歌『今昔物語集』6-3

片足下駄片足草履→〔二者択一3c黒住宗忠逸話


出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2009/07/12 23:50 UTC 版)

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  • (わらじ) - 草鞋
  • (くつ) -


出典:『Wiktionary』 (2021/07/23 14:40 UTC 版)

発音(?)

熟語


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