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三省堂 大辞林

三省堂三省堂

酒】

「さけ」の古語
「み―」「相飲まむ―そ/万葉 973」

くし酒】

(さけ)
「―の司(かみ)/古事記(中)」

さけ 0 【酒】

(1)白米蒸して、麹(こうじ)加えて醸造した飲料清酒濁酒とがある。日本酒

(2)酒精分含み、人を酔わせる飲料総称日本酒・ウイスキー・ウオツカ・ワインなど。
「―を飲む」「―に酔う」「―がまわる」
(3)酒を飲むこと。
「―の席」
» (成句)酒に呑まれる
» (成句)酒に別腸あり
» (成句)酒の燗は人肌
» (成句)酒の酔い本性忘れず
» (成句)酒は憂いの玉箒
» (成句)酒は百薬の長
» (成句)酒人を呑む
» (成句)酒を煮る

ささ 0酒】

〔もと女房詞。「さけ」の「さ」を重ねた語とも、酒を中国で「竹葉ということからともいう〕酒のこと。



物語要素事典

物語要素事典物語要素事典

★1a.酒を用いて怪物を倒す。

古事記上巻  スサノヲは、幾度も醸造した高醇度の酒を八つの酒船に満たして、ヤマタノヲロチ待ちうけた。八つの頭を持つヤマタノヲロチは、八つの酒船の酒を飲んで、その場に眠りこんだ。スサノヲは十拳剱(とつかつるぎ)で、ヤマタノヲロチの体をばらばらにした〔*日本書紀巻1・第8段一書第3では、毒酒をヲロチに飲ませて眠らせた、と記す〕。

捜神記11-8通巻270話)  漢の武帝東方に旅した時、身の丈数丈の牛に似た怪物が立ちふさがった。東方朔教えで酒を数十斛注ぐと、怪物は消えた。これは昔の罪人たちの憂いから生まれた「患」という怪物で、憂いは酒によって消すことができるのだった

★1b.酒宴の席で敵を倒す。

源氏物語若菜」下  朱雀院五十賀の試楽の夜、四十七歳の光源氏は酔ったふりをして柏木視線を向ける。源氏は「我が老い酔い泣きを汝が笑うのも今しばらくの事。老い誰も逃れられぬもの」と諷して、柏木女三の宮密通行為暗にとがめ、酒を勧める柏木はいたたまれず退席し、病床に臥して二ヵ月後に死ぬ→〔手紙〕1。

日本書紀巻7景行天皇27年12月  十六歳ヤマトタケル熊襲を討ちに行く。熊襲首長川上梟帥(カハカミタケル)が、親族を集め酒宴を催す。女装したヤマトタケルを、川上梟帥は隣りに侍らせて戯れるヤマトタケルは衣に隠した剣を抜き、酔った川上梟帥刺し殺す〔*古事記中巻では、熊襲兄弟二人殺した、と記す〕。

毒酒で敵を倒す→〔毒〕3a3b3c

★1c.酒を用いて人間堕落させる。

小さ悪魔パンきれのつぐないをした話』トルストイ)  悪魔パンきれを盗んで百姓を怒らせ、悪の道に引き入れようとする。しかし百姓は「腹をへらしたやつが取っんだろう」と、あっさりあきらめ、怒ることなく耕作に励む。そこで悪魔は、麦をつぶして酒を醸すことを百姓教える。百姓は酒を造ると、仲間を集めて酒盛りを始める。酒を飲むうちに、彼らはのように狡猾になり、のように怒りっぽくなり、ついには豚のようにごろごろ転がる。こうして悪魔は、百姓堕落させることができた。

★2a.が酒に変る

清水(こわしみず)伝説  孝行息子が、老父飲ませる酒を買う金がないので、峠の清水竹筒に入れて帰る老父がそれを飲んで「諸白もろはく)の酒だ」と喜ぶ。息子が飲んでみると、ただのである。以来、この清水は「親は諸白、子は清水」と歌われ、後には「強清水」という字を当てるようになった(山梨県東八代郡中道町右左口)。

十訓抄6-18  美濃国の男が取りのため山に入り、石の中から水のごとく流れ出る酒を発見する。男は毎日これをくんで酒好き老父を養う。帝がこれを知り、男は美濃国をたまわり、年号養老に改まる〔*養老の滝伝説原話養老町では、男の名を「源丞内」と伝える〕。

パンタグリュエル物語第五之書(ラブレー)第44章  パンタグリュエルとパニュルジュ一行は、さまざまな島巡りをした後、徳利明神神託の島に上陸する。そこの寺院の不思議な泉のは、酒だと念じて飲めば、酒の味がするのだった

ヨハネによる福音書第2章  カナの婚礼に招かれたイエスは、酒がなくなったと聞いて、六つの大がめにいっぱいに入れさせ、それらをぶどう酒に変えた〔*この物語は他の福音書には見られない〕。

★2b.酒にをまぜて売る。

往生要集源信)巻上・大文第1「厭離穢土」  酒にをまぜて売った者は、死後叫喚地獄別処火末(かまつちゅう)に堕ち、四百四病かかって苦しむ。身体から出て、皮・肉・骨・髄を破って飲み食うのである

日本霊異記26  田中真人女は、酒に加え量をふやして売り利益をあげるなど、さまざまな欲深い行ないを重ねた。その罪ゆえに彼女は宝亀七年776七月二十日死に閻羅王王宮に召された→〔牛〕3c

★2c.に酒をまぜて売る。

沙石集6-16  酒を売る尼公がいたが、いつも酒にを入れて薄めていた。酒好き説経師・能説坊が、法事の席で「酒にを入れるのはたいへんな罪だ」と弁じ、尼公反省求める。尼公は心を入れ替えに酒を入れて能説坊に勧めた。 

★3.酒の起源

ギリシア神話アポロドロス)第3巻第14章  ディオニュソス神を崇めるイカリオスに、神は葡萄の木を授け、醸造の術を伝えた。イカリオス神の恵み人々にも頒け与えようと、羊飼いたち葡萄酒を飲ませたが、彼らは毒を盛られたと誤解した→〔誤解3a

詩語法スノリ)第6章  巨人の娘グンロズが、岩山で蜜酒を管理する。オーディンが彼女のもとに三夜いて、蜜酒を三口だけ飲む許しを得る。オーディン多量の酒を三口ですべて飲みこみ、に変じて逃げ去る少量の蜜酒が人間界にこぼれ、それを飲むと詩人になれる。

ジャータカ512話  ヒマラヤ一本の木があり、人の背の高さで三つ分かれ、そこの穴に雨水がたまる。熟し木の実や稲が落ち太陽で暖められて酒が生じる。鳥獣が酒を飲んで酔うさまを見て林務スラ苦行ヴァルナも、飲んでみる。酒は、発見者の名前からスラーまたはヴァルニーと呼ばれる

曽我物語巻2「酒の事」  漢の明帝の代、せきそという男がいた。家の園にある三本水鳥降りて遊ぶので、見ると木のうろに美酒があった。せきそはこれを帝に献上した。桑の木三本より出たゆえ酒を「みき」と言う

★4a.酒は情欲かきたてる

酒と生殖の起源神話  神が少年少女創造し、二人を大峡谷の底の洞穴に置いた。二人無邪気すぎて、子供ができる見込みがなかったので、神は、情欲かきたてる米の酒イリ造り方を、二人教えた。こうして世界に、人間が増えていったのである中部インドムンダ族)。

★4b.葡萄酒間違え媚薬を飲む。

トリスタンとイゾルデシュトラースブルク)第16章  イゾルデ姫がマルケ王との結婚のため、使者トリスタンとともに船でイングランドへ向かう。イゾルデの母が、新婚初夜のために用意しておいた媚薬を、トリスタンとイゾルデ葡萄酒だと思って飲み恋に落ちる

★5.大酒飲みどれだけ酒が飲めるか試す。

試し酒落語)  近江屋下男久造が大酒飲みだというので、某大家主人が、五升飲めるかどうか久造を試す。久造は「少し考えたい」と言って外へ出、戻って来て見事に五升飲む。主人が感心し「それにしても先程どこへ行ったのか」と問うと、久造は「自信がなかったから、酒屋試しに五升飲んで来た」と答える。

*→〔無尽蔵〕2の『ギュルヴィたぶらかしギュルヴィの惑わし)』(スノリ)第4647章。

★6.千日の酒。

捜神記19-8通巻447話)  狄希のもとで「千日の酒」を一杯飲んだ玄石は、眠りこみ、死んだと見なされて埋葬される。三年後、狄希が「酔いの覚める頃だ」と玄石の家を見舞い、塚の中から玄石が掘り出される。

★7.アルコール依存症

失われた週末ワイルダー)  三十半ば無名小説家ドンアルコール依存症で、執筆不能の状態に陥っている。彼は酒代を得るために、盗みまでする。依存症治療の病院収容され、そこから脱走するものの、自室に帰れば蝙蝠や鼠の幻覚現れる。拳銃自殺ようとするドンを、恋人レン懸命に励ます。ドンは心を入れ替えグラスの酒の中に吸いかけのタバコを棄てて、小説取り組む決意を示す。

酒とバラの日々エドワーズ)  広告代理店社員ジョーは、得意先社長秘書キアステンを口説いて結婚し、女児生まれる。ジョー大酒飲みであり、その影響でキアステンも酒好きになる。酒の上失敗が重なってジョー馘首され、キアステンは昼間から酒を飲んでアパート火事にする。ジョー病院に入って、ようやく酒と縁を切る。キアステンは、夫や子供との生活よりも酒を選び、別居する。

スタア誕生(キューカー)  前座歌手エスターは、大スターノーマンに見出されて映画女優となり、たちまちトップ・スターの座につく。二人愛し合い結婚するが、エスター成功とは裏腹に、ノーマン長年酒浸りによるアルコール依存症で、演技荒れ撮影所との契約打ち切られる。エスター女優をやめてノーマン尽くそうと思うが、それを知ったノーマンは、エスター足手まといになるまいと、入水自殺する。 

麻薬中毒→〔毒〕7の『黄金の腕』(プレミンジャー)。

★8.酔っぱらい。

親子酒落語)  親父息子大酒飲みで、毎晩酔っぱらって帰って来る。親父酔眼朦朧の状態で息子見て、「お前のような、顔が三つ四つもある化け物には、この家は譲れんぞ」と叱る。息子は「こんな、ぐるぐる回る家なんか、いらないと言い返す

*酒が見える→〔〕8の『今昔物語集』巻19-21。

禁酒法→〔禁制〕6。



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