鳥類 解剖学と生理学

鳥類

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/08/29 01:11 UTC 版)

解剖学と生理学

鳥類の典型的な外見的特徴。1:くちばし、2:頭頂、3:虹彩、4:瞳孔、5:上背 (Mantle)、6:小雨覆 (Lesser coverts)、7:肩羽 (Scapular)、8:雨覆 (Coverts)、9:三列風切 (Tertials)、10:、11:初列風切、12:下腹、13:、14:かかと、15:跗蹠 (Tarsus)、16:、17:、18:、19:、20:、21:、22:肉垂 (Wattle)、23:過眼線

ほかの脊椎動物に比較して、鳥類は数多くの特異な適応を示すボディプラン (body plan) を持っており、そのほとんどは飛翔英語版を助けるためのものである。

骨格

骨格は非常に軽量な骨から構成されている。含気骨には大きな空気の満たされた空洞(含気腔)があり、呼吸器と結合している[67][68]。成鳥の頭骨は癒合しており縫合線 (suture) がみられない[69]眼窩は大きく、骨中隔英語版で隔てられている。脊椎には、頸(首)椎、胸椎、腰椎、尾椎の部位があり、頸椎は可動性が非常に高く、きわめて柔軟であるが、関節は胸椎 (thoracic vertebrae) 前部で減り、後部の脊椎骨にはない[70]。脊椎の最後のいくつかは骨盤と融合して複合仙骨英語版を形成する[71]。飛べない鳥類をのぞいて、肋骨は平坦になっており、胸骨は飛翔のための筋肉を結合するために、船の竜骨のような形状をしている。前肢は翼へと修正されている[72]

消化、排泄、生殖

鳥類の消化器系は独特である。まず食べたものを一時的に貯蔵するための素嚢(そのう)がある。素嚢の役割は種類によって異なり、食いだめをする種類や素嚢から吐き戻した食物や素嚢から分泌される素嚢乳を雛鳥に餌として与える種類がいるほかダチョウ類のように素嚢を持たない種類もいる[73]。 素嚢に蓄えられた食物はに送られるが、胃は前胃と筋胃の二つに分かれている。前胃は腺胃とも呼ばれ、内壁に多数の消化腺があり、消化酵素および酸性分泌物を出す。筋胃は砂嚢(さのう)とも呼ばれ、筋肉が発達しているほか、飲み込んだ砂粒が入っており、この筋胃で食物をすりつぶすことで、歯のないことを補っている[74][75]。ほとんどの鳥類は、飛翔を助けるため、すばやく消化することに高度に適応している[76]。渡りを行う鳥のなかには、腸の蛋白質といった、その体のいろいろな部分からの蛋白質を、渡りの間の補助的なエネルギー源として使用するようになっているものがある[77]

鳥類は爬虫類と同様に、基本的には尿酸排泄性である。すなわち、その腎臓は血液中の窒素廃棄物を抽出して、これを尿素もしくはアンモニアではなく、尿酸として尿管を経由して腸に排出する。鳥類には膀胱ないし外部尿道孔がなく(ただしダチョウは例外である)、このため尿酸は半固体の廃棄物として、糞と一緒に排泄される[78][79][80]。ただしハチドリのような鳥類は、条件的アンモニア排泄性であり、ほとんどの窒素廃棄物をアンモニアとして排出することができる[81]。さらに鳥類は、哺乳類クレアチニンを排泄するのに対して、クレアチンを排泄する[82]。この物質は、ほかの腸の産生物と同じように総排出腔から出る[83][84]。総排出腔は多目的の開口部で、排泄物はこれを通して排出され、鳥が交尾するときにはそれぞれの総排出腔を接触させ、そして雌はそこから卵を産む。これに加えて、多くの種がペリット(ペレット、pellet)の吐き戻しを行う[85]

呼吸器

鳥類は、すべての動物群のなかで、最も複雑な呼吸器を持ったグループのひとつである[82]。鳥が息を吸うとき、新鮮な空気の75%が肺を迂回して、後部気嚢に直接流れ込み、これを空気で満たす。後部気嚢とは、肺から広がって骨のなかの気室(含気腔)に繋がっている気嚢のグループである。残りの25%の空気は直接肺に行く。鳥が息を吐くときには、使われた空気が肺から排出され、同時に、後部気嚢に蓄えられていた新鮮な空気が肺に送り込まれる。このようにして、鳥類の肺には息を吸うときにも吐くときにも、常時新鮮な空気が供給されている[86]。鳥の声は、鳴管を使って作り出されている。鳴管は筋肉質の鼓室であり、気管の下部末端から分岐し、複数の鼓形膜が組み合わされている[87][88]

循環器

鳥類の心臓は、哺乳類と同じく4室(二心房二心室)あり[89]、右側の大動脈弓より体循環が起こるが、哺乳類では鳥類と異なり左側の大動脈弓による[82][90]。下大静脈は、腎門脈系を経由して、四肢からの血流を受け取る。哺乳類とは異なり、鳥類の赤血球にはがある[91][92]ニワトリ血糖値は210-240mg/dlであり、鳥類は哺乳類に比べて2-3倍の血糖値を示す[93]

知覚

神経系は、鳥類の体の大きさから見ると相対的に大きい[94]。脳において最も発達しているのは、飛翔に関連した機能を司る部位であり、小脳が運動を調節する一方、大脳が行動パターンや航法、繁殖行動、営巣などをコントロールする。ほとんどの鳥が貧弱な嗅覚しか持たないが、顕著な例外としてキーウィ類[95]コンドル類[96]およびミズナギドリ目[97]の鳥などがあげられる。鳥類の視覚システムは一般に高度に発達している。水鳥は特別に柔軟なレンズを持つことで、空気中の視覚と水中の視覚を両立させている[98]。なかには2つの中心窩を持つ種もいる[99]。鳥類は4色型色覚であり、赤、緑、青の錐体細胞と同じように、紫外線 (UV) に感度のある錐体細胞を網膜に持っている。これによりかれらは紫外線を見分けることができ、それは求愛行動にも関係する。多くの鳥類は、紫外線による羽衣(うい)の模様を示すが、これはヒトの目には見えない。すなわち、ヒトの肉眼では雌雄が同じに見えるような鳥でも、その羽毛に紫外線を反射する斑の存在によって見分けられる。雄のアオガラの羽毛には、紫外線を反射する冠状の斑があり、求愛行動の際にはポーズを取り、その頸部の羽毛を立てることでディスプレイを行う[100]。紫外線はまた、餌を採ることにも使用されている。チョウゲンボウの仲間は、齧歯類が地上に残した紫外線を反射する尿の痕跡を見つけることで獲物を探すことが証明されている[101]。鳥類のまぶたは、瞬きには使用されない。そのかわりに目は、水平方向に移動する3番目のまぶたである瞬膜によって潤滑されている[102]。また、多くの水鳥において、瞬膜は目を覆うコンタクトレンズのような働きをする[103]。鳥類の網膜は、櫛状体(櫛状突起、pecten)と呼ばれる扇状の血液供給システムを持っている[104]。ほとんどの鳥は眼球を動かすことができないが、カワウのような例外もある[105]。鳥類のうち、目をその頭部の側面に持つものは広い視野 (visual field) を持ち、フクロウのように頭部の前面に両目があるものは、双眼視覚英語版を持ち、被写界深度を見積もることができる[106]。鳥類のには外側の耳介はなく、耳羽(じう)という羽毛に覆われているが[107]フクロウ類トラフズク属英語版ワシミミズク属英語版コノハズク属英語版ような鳥では、頭部の羽毛が耳のように見える房(羽角、うかく)を形成する。内耳には蝸牛(かぎゅう)があるが、哺乳類のような螺旋状ではない[108]

化学的防御

数種の鳥類は、捕食者に対して化学的防御を用いることができる。一部のミズナギドリ目の鳥は、攻撃者に対して不快な油状の胃液 (Stomach oil) を吐き出すことができ[109]、また、ニューギニア産の数種のピトフーイ(ピトフィ)類(モリモズ類)の数種は、その皮膚や羽毛などに強力な神経毒を持っており[110][111]、これは寄生虫に対する防御と考えられている[112]

鳥類には2つの性別、すなわち雄と雌がある。鳥類の性は、哺乳類が持っているXとYの染色体ではなく、ZとWの性染色体によって決定される。雄の鳥は、2つのZ染色体 (ZZ) を持ち、雌の鳥はW染色体とZ染色体 (WZ) を持っている[113]。鳥類のほとんどすべての種において、個々の性別は受精の際に決定される。しかしながら、最近の研究によって、ヤブツカツクリでは、孵化中の温度が高いほど、雌に対する雄の性比が高くなったことから、温度依存性決定 (Temperature-dependent sex determination) が証明された[114]

羽毛、羽衣と鱗

アフリカコノハズク英語版は羽衣によって、周囲の風景に溶け込むことができる。

羽毛は(現在では真の鳥類であるとは考えられていない恐竜の一部にも存在するが)、鳥類に特有の特徴である。羽毛によって飛翔が可能になり、断熱によって体温調節 (thermoregulation) を助け、そしてディスプレイやカモフラージュ、情報伝達にも使用される[115]。羽毛にはいくつもの種類があり、それぞれが、個々のさまざまな目的に応じて機能している。羽毛は皮膚に付属した上皮成長物であり、羽域(羽区、pterylae)と呼ばれる、皮膚の特定の領域にのみ生ずる[116]。これらの羽域の分布パターン(羽区分布、pterylosis)は分類学や系統学で使用されている。鳥の体における羽毛の配列や外観を総称して、羽衣 (plumage) と呼ぶ[116]。羽衣は、同一種のなかでも、年齢、社会的地位[117]性別によって変化することがある[118]

羽衣は定期的に生え変わっている(換羽、moult)。鳥の標準的な羽衣は、繁殖期のあとに換羽したものであり、非繁殖羽 (Non-breeding plumage) として知られている。あるいはハンフリー・パークスの用語 (Humphrey-Parkes terminology) によれば「基本」羽 ("basic" plumage) である。繁殖羽、あるいは基本羽の変化したものは、ハンフリー・パークスの用語法によれば「交換」羽 ("alternate" plumages) として知られる[119]。ほとんどの種で、換羽は年1回起こるが、なかには年2回換羽するものもあり、また、大型の猛禽類は、何年かに1回だけ生え変わるものもある。換羽のパターンは種ごとに異なる。スズメ目の鳥に見られる一般的なパターンは、初列風切が外側に向かって(遠心性換羽)、次列風切は内側に向かって(求心性換羽)[116]、そして尾羽が中央から外側に向かって生え変わっていく(遠心性換羽)[120][121]。スズメ目の鳥では、風切羽は、最も内側の初列風切から始まり、一度に左右1枚ずつ生え変わる。初列風切の内側半分(6番目の第5羽)が生え変わると、最も外側の三列風切が抜け始める。最も内側の三列風切が換羽したあと、次列風切が最も外側から抜け始め、これがより内側の羽毛へと進行していく。初列雨覆は、それが覆っている初列風切の換羽に合わせて生え変わる[116][122]ハクチョウ類[123]ガン類カモ類といった種は、すべての風切羽が一度に抜け、一時的に飛ぶことができなくなるほか[124]アビ類[123]ヘビウ類フラミンゴ類ツル類クイナ類ウミスズメ類にもこのような種がある[116]。一般的な様式として、尾羽の脱落と生え変わりは、最も内側の一対から始まる[122]。しかし、キジ科セッケイ類においては、外側尾羽の中心から換羽が始まり、双方向への進行が見られる[120]キツツキ類キバシリ類の尾羽では、遠心性換羽は少し変更され、これらの換羽は内側から2番目の一対の尾羽から始まり、そして一対の中央尾羽で終わる。これによって木をよじ登るのための尾羽の機能を維持している[122][125]。営巣に先立って、ほとんどの鳥類の雌は、腹に近い羽毛を失うことで、皮膚の露出した抱卵斑英語版を得る。この部分の皮膚は血管がよく発達し、鳥の抱卵の助けになる[126][127]

ヒインコ (Eos bornea) の羽繕い

羽毛はメンテナンスが必要であり、鳥類は毎日、羽繕いや手入れを行い、かれらは日常の9%前後をこの作業に費やしている[128]。くちばしは、羽毛から異物のかけらを払い出すだけではなく、尾腺英語版からののような分泌物を塗ることにも使われる。この分泌物は羽毛の柔軟性を守り、抗菌薬としても働き、羽毛を劣化させる細菌の成長を阻害する[129]。この作用は、アリの分泌するギ酸によって補われているとされ、鳥類は羽毛の寄生虫を取り除くために、蟻浴として知られている行動を通してこれを得ると考えられている[130]

鳥類においては、羽毛が紫外線の皮膚への到達を妨げている。鳥類は、皮膚から皮脂を分泌し、羽毛を羽繕いすることによって口からビタミンDを摂取しているとの説もある。この説は毛皮を有する哺乳類にも該当する[131]

鳥類の(うろこ)は、くちばしや、鉤爪、蹴爪と同じくケラチンから作られている。鱗は主に(あしゆび)や跗蹠(ふしょ)に見られるが、種によっては踵(かかと)のずっと上の部位まで見られるものもある。カワセミ類キツツキ類を除いて、大部分の鳥の鱗はほとんど重なっていない。鳥類の鱗は、爬虫類や哺乳類のものと相同性であると考えられている[132]


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