東京都区部 名称

東京都区部

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/07/17 15:26 UTC 版)

名称

市町村などの単一の地方公共団体ではないため、正式名称はない。ただし、総務省全国地方公共団体コードでは「特別区の区域」とされている。また、多極分散型国土形成促進法(昭和63年法律第83号[4])第4条においては、「東京都の特別区の存する区域」とあり、続けて「(以下「東京都区部」という。)」とされている他、JR新幹線乗車券にも、「東京都区内」といった表記が見られる。都道府県庁所在地として表記する際は「東京」と記載される[5][6]

概説

成立の経緯

第二次世界大戦下、首都行政機能を強化する目的から、東京府東京市を統合して東京都が成立したのは1943年昭和18年)のことである[7]。当時の区の数は35区だったが、1947年(昭和22年)3月に35区のうち24区を11区に再編して22区となり、同年8月に板橋区から練馬区を分区して23区となった。

面積、人口、人口密度

東京都区部(東京23区)の面積は627.53km22022年1月1日時点)。

現在の人口は、住民基本台帳によると東京都区部(東京23区)の人口の合計は985万人(2024年5月1日時点)。 (同時期の東京都全体は1417万人なので)東京都のおよそ70%の人が23区に住んでいることになる。東京23区の人口だけで、都道府県として第2位に位置する神奈川県全体の人口(約920万人)を上回っている。人口密度は約1.5万人/km2

1920年(大正9年)時点で東京都区部の人口がどのような状況であったかを説明するためにいくつか例を挙げると、台東区が人口第1位の43万9596人、世田谷区は3万9952人であった。高度経済成長期の1965年(昭和40年)に約889万人(国勢調査人口)でいったん最大となったあと、郊外化で減少に転じ、特にバブル景気に伴う地価の高騰によって1990年代には800万人を割り込んだ(参照)。その後は都心回帰現象などにより、現在では約960万人にまで再び増加し、東京都の人口の約69%を占めるまでに至った。

東京都区部の人口は、そこを仮に一種の「一つの自治体」と見なした場合、日本でもっとも多く、2位の横浜市と比較しても約2.6倍もの人口規模である。

なお、昼間人口では、1980年代末のバブル景気期に約1129万人で最大となり、失われた10年の間は減少していたが、その後は増加してバブル期並みとなっている(参照)。昼間人口に比べ夜間人口はずっと少ない。23区の外の区域が巨大なベッドタウンとなっており、昼間に仕事をするためにその区域の人々が23区に移動してきている。

23区の中でも、特に中心あたりの区、いわゆる「都心」の区は、主に中心業務地区に利用されているため、基本的にはほとんどがいわゆる「仕事場」「職場」「オフィス」「店舗」などであり、居住地が少なく、人口も少ない(「都心」というやや曖昧な概念については「#都心と副都心」の節で詳説)。また、地価が高いだけでなく、面積が狭いことも人口の少ない要因のひとつである。周辺の区ほど人口が多いが、面積最大の大田区より面積第2位の世田谷区の方が人口は多く(大田区は羽田空港の沖合展開による埋め立ての結果、世田谷区を抜き最大の区となった)、面積第5位の練馬区は人口第2位である。東京湾沿岸の区は、東京港港湾施設や広大な工場・流通地区を持つため、内陸の周辺区よりも人口密度が低いが、江東区などは超高層住宅の建設が進められており、一部そうでもない場所もある。23区内の新築マンション(70m2)の平均価格は8,116万円(東京カンティ調査)となっている。

行政上の特徴と関連法規

地方自治法第3編「特別地方公共団体」第2章「特別区」(第281条から第283条)の規定に基づき運営されており、区議会を持ちつつも、区の管理・運営業務の一部はが行っている。国の行政機関や各省大臣が助言や勧告を行うことができる普通地方公共団体とは異なり、特別区の運営について助言および勧告をすることができるのは都知事のみであり、または特別区財政調整交付金に関する事項については総務大臣のみである。都と特別区および特別区相互の間の連絡調整を図るため、都区協議会が設けられている。

市町村よりも権限が小さく、通常市町村が手がける水道業務や消防などは東京都が行っている(東京都水道局東京消防庁[7]

課題

財政をはじめとして、独立性は低いものの議員や職員数は多く、現在23区の職員数は合計で6万2000人、区議会議員数は約900人に上り、それらの人件費は年間6000億円超となっていることも問題視されている。23区についてはこれらの非合理や効率の悪さから、再編を求める意見もある[7]

その他 

JR(旧国鉄)では、旅客営業規則を定めており、その中に「特定都区市内」制度がある。これは、特定の都市での運賃計算の特例の事であるが、札幌市名古屋市京都市大阪市福岡市など10都市に加え、東京都区部を1つの都市として数えて定めている。対象駅の駅名標には大阪市なら「阪」、京都市なら「京」と表記され、東京都区部は「区」と表記される。

歴史

江戸時代江戸の市域は、「朱引」と呼ばれ、その範囲は「朱引線」によって明示されていた。

明治2年2月19日(1869年)、江戸に代わった東京府は、新たな朱引を定めた。これは皇居を中心とし、朱引の内側を「市街地」、外側を「郷村地」と定めるものであった[8]。同年3月16日には、朱引内に50区の区画が制定され(五十番組制、五十区制)、さらに明治4年6月(1871年)にはその範囲が縮小されて44区に再編成された(朱引内四十四区制)[8]

1878年(明治11年)、郡区町村編制法が制定され、宮城(皇居)周辺の都心部に、麹町区神田区日本橋区など15区が定められた。1889年(明治22年)には、この15区に市制が施行され、東京市となる。明治時代には、およそ明治通りの内側が東京市とされ、外側は南豊島郡渋谷村などの町村であった[注 3]。このときの東京市は、現在の千代田区中央区港区文京区台東区の全域、および新宿区墨田区江東区の各一部を範囲としていた。

1920年(大正9年)、豊多摩郡の1町を編入。1932年(昭和7年)、近隣5郡(荏原郡・豊多摩郡・北豊島郡南足立郡南葛飾郡)の60町22村を編入し、面積・人口が一気に拡大した。このとき、既存の15区に加えて、新たに20区が定められ、35区となった。1936年(昭和11年)、北多摩郡の2村を編入し、現在の東京都区部の区域となった。1943年(昭和18年)には東京都制が施行されて東京府および東京市は廃止され、35区は東京都の行政区となった。

1947年(昭和22年)の地方自治法施行直前の3月15日に35区は再編され、22区になり、5月3日の地方自治法施行により特別区に移行した。さらに同年8月1日に練馬区が板橋区より分離し現在の23区となった。制度創設から長らく、特別区は東京都の内部的団体と位置づけられ、日本国憲法第93条2項の「地方公共団体」にあたらないと解されてきた[9]。しかし、2000年(平成12年)の地方分権改革により、特別区は「基礎的な地方公共団体」と規定され、名実ともに独立した地方公共団体となった。


注釈

  1. ^ 都条例上の都庁所在地は、新宿区西新宿2丁目。
  2. ^ 都区部を1つの都市として扱う例に、報道機関の天気予報(表記例:北海道札幌市→「札幌」、福岡県福岡市→「福岡」、東京都区部→「東京」、東京都小笠原村→「小笠原」)や、JRの「特定都区市内制度」がある。
  3. ^ 麻布区広尾のみ明治通りの内側でありながら、後に渋谷村となった。
  4. ^ 2014年に観測地を大手町露場から北の丸公園露場に移転[14]
  5. ^ 2024年6月1日現在。

出典

  1. ^ JIS X0402より
  2. ^ “第Ⅲ章 市区町村別面積 13 東 京 都” (PDF). 令和6年 全国都道府県市区町村別面積調(1月1日時点). 国土交通省 国土地理院. (2024-03-25). p. 28. https://www.gsi.go.jp/KOKUJYOHO/MENCHO/backnumber/GSI-menseki20240101.pdf 2024年6月10日閲覧。 
  3. ^ 大辞泉「東京都区部」。「区域」という語を使って説明している。
  4. ^ 多極分散型国土形成促進法(昭和六十三年法律第八十三号)第四条:国の行政機関等の東京都区部からの移転等”. e-Gov法令検索. 総務省行政管理局 (2015年9月11日). 2020年1月23日閲覧。 “2016年4月1施行分”
  5. ^ 東京都の県庁(都庁)所在地について|その他の情報|東京都政策企画局”. 東京都政策企画局. 令和5年1月18日閲覧。
  6. ^ 東京都の都庁所在地が「新宿」ではなく「東京」なのはなぜですか。|株式会社帝国書院”. (株)帝国書院. 令和5年1月18日閲覧。
  7. ^ a b c 県と歪み増す政令市 大都市行政現状を探る 『日本経済新聞』 平成23年11月22日 東京・首都圏経済面
  8. ^ a b 明治四年朱引内四十四区制について 中元幸二 『東京都公文書館 研究紀要』(第4号)、pp.14-40、平成14年3月
  9. ^ 最高裁大法廷判決昭和38年3月27日刑集17巻2号121頁参照。
  10. ^ 1875年1881年赤坂区溜池葵町(港区虎ノ門)、1882年1922年麹町区代官町皇居北桔橋門付近)、1923年2014年12月1日千代田区大手町、2014年12月2日以降は千代田区北の丸公園で観測。
  11. ^ 平年値(年・月ごとの値)”. 気象庁. 2024年2月14日閲覧。
  12. ^ 観測史上1〜10位の値(年間を通じての値)”. 気象庁. 2024年2月閲覧。
  13. ^ 過去の気象データ”. 気象庁. 2022年1月1日閲覧。
  14. ^ 観測部東京管区気象台『測候時報』 83巻、気象庁、2016年。ISSN 2758-1381https://www.jma.go.jp/jma/kishou/books/sokkou/83/vol83p001.pdf 
  15. ^ 予報と警報・注意報の細分区域一覧表 気象庁 (PDF)
  16. ^ 東京都産業労働局総務部企画計理課編「第2部第3章」『東京の産業と雇用就業2008』(PDF)東京都産業労働局総務部企画計理課、2008年、72頁http://www.sangyo-rodo.metro.tokyo.jp/monthly/sangyo/sangyo-industry-and-employment/2008/2008part2-03.pdf 
  17. ^ “東京湾の人工島帰属、判決確定へ=大田区控訴せず、五輪会場は江東区”. 時事通信. (2019年10月3日). https://web.archive.org/web/20200719114934/https://www.jiji.com/jc/article?k=2019100301108 2019年10月7日閲覧。 
  18. ^ 東京都統計年鑑 平成18年 2 人口 2-3 地域別人口(東京都)
  19. ^ 令和2年国勢調査 人口等基本集計 結果の要約』(PDF)(プレスリリース)総務省、2021年11月30日。オリジナルの2021年12月1日時点におけるアーカイブhttps://warp.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/11969009/www.stat.go.jp/data/kokusei/2020/kekka/pdf/summary_01.pdf2022年3月22日閲覧 
  20. ^ 令和2年国勢調査 人口等基本集計結果概要”. 東京都の統計. 東京都総務局統計部. 2022年3月22日閲覧。
  21. ^ 一覧”. 2024年1月7日閲覧。
  22. ^ 東京カレンダー | 最新のグルメ、洗練されたライフスタイル情報”. 東京カレンダー | 最新のグルメ、洗練されたライフスタイル情報. 2024年4月14日閲覧。
  23. ^ [1]
  24. ^ ねりままちづくり情報誌「こもれび」第45号 (PDF) (2011年10月)、財団法人練馬区都市整備公社 練馬まちづくりセンター
  25. ^ 埼玉にある練馬区の飛び地、港区にあるのに品川駅の謎”. NEWSポストセブン. 2023年3月24日閲覧。
  26. ^ 大型貨物等の都心部の通行禁止について 警視庁 2018年7月31日更新。2020年8月26日閲覧。
  27. ^ [2]
  28. ^ 三つ星、パリ抜き11店に ミシュラン東京2010年版
  29. ^ 美食東京、星200店に増 10年版ミシュランガイド
  30. ^ ミシュランガイドに取り上げられている主な都市の星数





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