デッドセクション 地上切替方式

デッドセクション

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/06/01 04:21 UTC 版)

地上切替方式

駅構内で架線に流す電流を切替える方式。電気機関車牽引の列車が少なく、電車が主流となった日本の鉄道では採用例が少なく、常用のものは以下の例のみであったが、2018年までにすべて廃止された。

  • 仙山線作並駅:1957年9月 仙台 - 作並間交流電化開業にともない設置。1968年9月、仙山線作並 - 山形間の交流電源切替により廃止。
  • 東北本線黒磯駅:1959年7月 黒磯 - 白河間交流電化開業にともない設置。2018年1月、デッドセクションを黒磯駅構内(北寄りの高久・仙台方)に移設し廃止された[1][2][3]
  • 奥羽本線福島 - 庭坂間:1960年3月 東北本線白河 - 福島間交流電化開業にともない設置。1968年9月、奥羽本線福島 - 米沢間の交流電源切替により廃止。

なお、2006年9月24日西日本旅客鉄道(JR西日本)北陸本線長浜 - 敦賀間・湖西線永原 - 近江塩津間の直流電源切替に伴い敦賀 - 南今庄間に交直デッドセクションが新設されたが、下り線のセクションは上り勾配上に設置されたため切替中に万一セクション手前で停止したような場合に備えて、以下の非常時のみ取扱の地上切替方式という形態での設備を設置した。

  • デッドセクション手前の直流区間の架線電源を交流20kVへ切替える切替断路器
  • その際に交交セクションとして機能するデッドセクションの中間部を交流加圧し無電区間の長さを短縮するための断路器

日本の主なデッドセクション設置箇所

日本の鉄道におけるデッドセクションの設置例は次のとおりである。以下類型ごとに挙げる。

直流・交流接続

デッドセクションを挟んだ区間では、同じ路線でも使用可能な車両が異なり、ほとんどの場合は運転系統や本数など輸送そのものが分断されている。中には黒磯駅のように別路線のようになっているものもある。

特に交直流電車は高価なことに加えて単行運転ができないので、セクションを越える区間のローカル輸送は全線電化にもかかわらず、羽越本線[注 6]などのように、近辺の非電化路線と共通運用の気動車を運行している路線もある。

また、仙石東北ラインのように線路は接続し直通列車も運行してはいるが、一定の距離を非電化にして架線自体は接続していないケースも存在し[注 7]、この場合も気動車を使用する。

直流1500 V・交流20 kV (50 Hz)

デッドセクション切替看板
羽越本線 村上 - 間島間
架線死区間標識
交直切換の電光表示
車内蛍光灯が消える水戸線の列車
方向幕灯とヘッドライト片方が消える七尾線の電車

直流1500 V・交流20 kV (60 Hz)

直流1500 V・交流25 kV (60 Hz)

  • 山陽本線 新下関駅山陽新幹線 新下関保守基地)構内
    • 軌間可変電車の山陽新幹線乗り入れおよび交直切換試験用として設置された。ただし2016年7月現在、軌間可変装置が撤去されて標準軌側と狭軌側が分断された状態になっており実質的には使用停止状態にある。

異電圧接続

主に元々が別のシステムだった路線を接続するために使用される。

直流1500 V・750 V

交流25 kV・20 kV (50 Hz)

参考

異周波数接続

日本においては、異周波数交流をデッドセクションで接続した例は存在しない。下記は、あくまでも参考として挙げたものである。上述の新幹線異相区分セクションと同様、切替セクションにより異周波数交流を接続しているため、接続点であるこれら3か所のき電区分所には無電区間は存在しない。一般的なデッドセクションとは構造の異なるものであるが、異方式電源の接続方法の類例として挙げる。

直流同電圧接続

栗橋駅構内デッドセクション

交流同周波数同電圧接続

交流電化区間における異相区分セクションは設置例が多数となるので、ここでは異社間も含め割愛する。

過去の設置例

名鉄田神線 田神 - 市ノ坪間
デッドセクション

日本国外の設置例

韓国

韓国において、デッドセクションは絶縁区間절연구간)と呼ばれる。

いずれも直流1500V⇔交流25kV・60Hzである。

この他にも交流電化区間における異相区分セクションが多数存在する。

かつては特殊なケースとして、首都圏電鉄京義・中央線(交流電化)の龍山 - 二村間にて、途中の漢江大橋直下を通過する区間の車両限界が小さい関係でデッドセクションが設けられていたが、2017年6月にセクションの移転により解消された。

香港

羅湖駅以北、深圳駅付近

交流電化の内

中華人民共和国の高速鉄道香港西九龍駅構内(乗降エリア)まで中国(香港内は地上に出ない)駅の内に国境、電力は香港から通関するか本土から延長饋電しているかは不明。

香港島の路面電車と香港軽鉄と前地鉄の各線は直流電化となっているため、デッドセクションはない。

アメリカ

スイス

直流1000V電化のベルニナ線と交流(11 kV 16.7 Hz)電化の本線系統が接続する両駅には、交直流を地上切替可能な番線がある。ただし2種の電化方式をまたいで走行する列車はごく限られている。

注釈

  1. ^ 切替は軌道回路からの列車条件を元に連動して切替える。
  2. ^ DC>AC。まだ直流区間であるが、電源検知回路により交流用回路は開であり、交流遮断器による主回路開後に回路の切り替え操作をとった上であれば、交流遮断器による主回路閉操作をしても問題は生じない。主回路閉のままの操作では切り替えが完了する前に異種電源(直流電源)に接続されるため許容されない。
  3. ^ 日本のほか、韓国でもこの方法で切り替える(日本のシステムを韓国に持ち込んだもの。韓国鉄道1000系電車を参照。415系/485系とほぼ同じ)。欧州では走行中にパンタグラフを下げて回路を切換、その後パンタを上げる方法で切り替える(youtubeに当該動画がある)。黒磯駅でのJR貨物EH500形電気機関車の切替も同様であった。
  4. ^ 仮に485系9両編成を例にすれば、編成間両端モハ484形同士で100m以上離れている上に、100km/h=1.67km/min=28m/s程度で走行している場合確実に編成がセクションに入った事を確認して、さらに操作を完遂するために必要な時間と余裕を考慮すればデッドセクションが数km必要になる。
  5. ^ 異種電源接続は機器を損傷する可能性があり危険である。安全装置が正常に動作すれば機器の大きな損傷は避けられ、直流→交流の冒進では遮断器が作動するだけなので機器を操作すれば運転継続が可能であり比較的影響は少ないが、交流→直流への冒進事故は、交流側回路を保護するため取付けられたヒューズの交換が必要となりそれまで交流区間では運転ができなくなるなどリスクが大きい。直流→交流の冒進では無電区間走行(約0.5秒)の検知により遮断器を動作させられるが、交流→直流では交流電化区間に交交セクションが存在することにより「無電区間突入=交直セクション突入」を前提とした機構を構成することが不可能でありヒューズ以外の十分に確実性のある防護措置が確保できないからである。
  6. ^ JR東の新潟支社が通勤・近郊形の交直流電車を保有していないという事情もある。羽越本線#新発田駅_-_村上駅_-_酒田駅間
  7. ^ よって厳密に言えばデッドセクションではない。 仙石東北ライン#仙石線・東北本線接続線
  8. ^ 黒磯駅構内扱い[2][3]
  9. ^ 以前「あさぎり」運用に投入されていた小田急20000形電車は室内灯消灯。JR東海371系電車では車内表示機消灯・室内灯点灯の差異があった。

出典






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