デッドセクション 設置の類型

デッドセクション

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/06/01 04:21 UTC 版)

設置の類型

JR東日本常磐線のデッドセクション
取手(手前側:直流) - 藤代(奥側:交流)間
えちごトキめき鉄道日本海ひすいラインのデッドセクション
えちご押上ひすい海岸(手前側:交流) - 梶屋敷(奥側:直流)間

デッドセクションが設置される類型としては、以下のものがある。

  1. 直流電化区間と交流電化区間の境に設けられるもの。(電流区分セクション)
  2. 同じ電化方式であっても、使用電圧の異なる区間の境に設けられるもの。(電圧区分セクション)
  3. 同じ電化方式・電圧の交流電化方式の区間において、交流電流の位相が異なる区間の境に設けられるもの。具体的には変電所同士の送電区間の境目となる場合が多い。(異相区分セクション)なお、直流電化区間ではデッドセクションではなくエアセクションが設けられる。
  4. 交流電化方式の区間において、使用する周波数の異なる区間の境に設けられるもの。(周波数区分セクション)
  5. 電化方式も電圧も同一の場合で、相互乗り入れを行う場合に、会社間の電源分離を行うために設けられるもの また、上下線や本線 - 車庫線で電気的に分離する場合において主に渡り線上に設けられるもの。(電源区分セクション)
  6. 異なる電化方式・電圧を用いる路線同士が、平面交差する地点に設けられるもの。(平面区分セクション)
  • 1.のような直流電化区間と交流電化区間の間に設けられるデッドセクションを交直セクション、3.・4.のような交流電化区間の間に設けられるデッドセクションを交交セクションともいう。

デッドセクションは、碍子FRPなどで造られたインシュレータ(日本の在来線で長さ8 m 程度)をトロリ線に挿入する方式、主にヨーロッパ本線上で見られる2つのエアセクション間に無加圧区間を設ける「中セクション方式」のいずれかで絶縁を行うが、以下の注意が必要である。

  • 列車が力行のまま通過するとパンタグラフがそれまでの送電区間を抜け出た瞬間に大きなアークが発生して危険であるため、その手前に「架線死区間標識」を設けておいて運転士はこれを視認し、惰行状態で通過させる必要がある。
  • パンタグラフは発条力で上昇させる構造のため、無架線状態での上昇跳ね上がりによる破損の可能性から、無加圧区間は通電はしなくとも架線かそれに代わる物を張る必要がある。
  • また、列車が走行する軌道のレールは、主電動機で使用された電力を変電所に戻す役割があるため、デッドセクション内では、レールに絶縁継目と呼ばれる、隙間を設置することでレールに絶縁区間を設けているが、これでは信号機の制御に使用されている軌道回路の電流をレールに流すことはできないので、インピーダンスボンドを絶縁区間の線路脇に設置して、軌道回路の電流だけを流す役割を持たせる場合がある。

上述類例3.の異相区分セクションは交流電化区間の随所に存在するが、前述した中セクション方式では高速下で運転士が架線死区間標識を見落としやすい上に、惰行運転が速度維持の妨げとなるためデッドセクションの数を増やすことができない。つまり、変電所の数を増やすことが困難であるため列車本数や編成長で制約を受ける欠点があるものの、TGVKTXなどの高速鉄道はこの方式の下で運転されている。

これに対して日本国有鉄道1964年(昭和39年)の東海道新幹線開業に際し、2つのエアセクション間に1 km 程度の中間セクションを設置して、それが真空開閉器を介して変電所や饋電区分所に接続されており、列車が中間セクション通過中に真空開閉器により電源を0.05 - 0.3秒程度の無電時間を介して、進行後方側から進行前方側の変電所に自動で切替える[注 1]饋電(きでん)区分切替セクション方式を開発して、惰行することなく異相区分セクションを通過できるようにした。

  • ただし、加速もしくは回生制動が作動中にセクションを通過すると無電時間の開始・終了時車両制御装置が一定時間停止後、フルパワーでリトライするために前後方向の衝動が発生する。これを避けるために切替セクションの位置を覚えておき、自主的に惰行状態で通過する運転士もいる。またN700系ではデジタルATCと連動させて、切替セクションに差し掛かる前に自動的にノッチオフ・ブレーキ解除、通過後にノッチオン・ブレーキ作動する機構を搭載する。

注釈

  1. ^ 切替は軌道回路からの列車条件を元に連動して切替える。
  2. ^ DC>AC。まだ直流区間であるが、電源検知回路により交流用回路は開であり、交流遮断器による主回路開後に回路の切り替え操作をとった上であれば、交流遮断器による主回路閉操作をしても問題は生じない。主回路閉のままの操作では切り替えが完了する前に異種電源(直流電源)に接続されるため許容されない。
  3. ^ 日本のほか、韓国でもこの方法で切り替える(日本のシステムを韓国に持ち込んだもの。韓国鉄道1000系電車を参照。415系/485系とほぼ同じ)。欧州では走行中にパンタグラフを下げて回路を切換、その後パンタを上げる方法で切り替える(youtubeに当該動画がある)。黒磯駅でのJR貨物EH500形電気機関車の切替も同様であった。
  4. ^ 仮に485系9両編成を例にすれば、編成間両端モハ484形同士で100m以上離れている上に、100km/h=1.67km/min=28m/s程度で走行している場合確実に編成がセクションに入った事を確認して、さらに操作を完遂するために必要な時間と余裕を考慮すればデッドセクションが数km必要になる。
  5. ^ 異種電源接続は機器を損傷する可能性があり危険である。安全装置が正常に動作すれば機器の大きな損傷は避けられ、直流→交流の冒進では遮断器が作動するだけなので機器を操作すれば運転継続が可能であり比較的影響は少ないが、交流→直流への冒進事故は、交流側回路を保護するため取付けられたヒューズの交換が必要となりそれまで交流区間では運転ができなくなるなどリスクが大きい。直流→交流の冒進では無電区間走行(約0.5秒)の検知により遮断器を動作させられるが、交流→直流では交流電化区間に交交セクションが存在することにより「無電区間突入=交直セクション突入」を前提とした機構を構成することが不可能でありヒューズ以外の十分に確実性のある防護措置が確保できないからである。
  6. ^ JR東の新潟支社が通勤・近郊形の交直流電車を保有していないという事情もある。羽越本線#新発田駅_-_村上駅_-_酒田駅間
  7. ^ よって厳密に言えばデッドセクションではない。 仙石東北ライン#仙石線・東北本線接続線
  8. ^ 黒磯駅構内扱い[2][3]
  9. ^ 以前「あさぎり」運用に投入されていた小田急20000形電車は室内灯消灯。JR東海371系電車では車内表示機消灯・室内灯点灯の差異があった。

出典






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