Windowsの普及とVisual Basicの普及
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/30 02:50 UTC 版)
「BASIC」の記事における「Windowsの普及とVisual Basicの普及」の解説
Windowsが普及すると、WindowsのGUIプログラミング(つまり画面上の視覚的なボタンをマウスで操作することに反応して動作するプログラムを作成すること)をするためのプログラミング言語や開発環境が必要になるわけだが、マイクロソフトは構造化された言語を用いる RAD方式の開発環境を用意し、C++を用いる開発ツール(Visual C++)だけでなく、BASICを用いる開発ツール(Visual Basic)も提供した。Visual Basic (VB)はWindowsの開発環境、プログラミング言語の選択肢のひとつとなった。 Windows自体はC++やCで開発されたもので、マイクロソフトの開発エンジニアたちはC++やCに慣れていたわけだが、それでもBASICを見捨てることはしなかった。もともとビル・ゲイツはAltair 8800向けのAltair BASICを最初の製品としてビジネスの道を切り開き、その後も多数の自社BASICを開発してマイクロソフトを大きくしたので、マイクロソフト社はBASICとともに大きくなってきたわけであり、簡単にBASICを捨ててしまうような選択はしなかったのである。また、マーケティング的(商売的)に見てもこの判断は賢かった。既存ユーザが受け入れやすい選択肢を提供することで、ユーザが他社に逃げてしまうことを防いだわけである。 Visual Basicでは、業務用のソフトウェア、プロフェッショナル用のソフトウェアなども多数開発されるようになった。Visual Basicは旧BASICとは異なり、もはや「初心者用」でも「ホビー用」でもなかった。C言語やC++同様に、プロでもその気になればまともに使える言語になったのである。 また、「PC/AT互換機とWindowsの組み合わせ」というプラットフォームが一般化したことで、1970年代や1980年代には起きていた「BASICの方言の乱立」の問題が解消されてゆくことになった。Windowsが走るマシンであれば、どのメーカーが製造したパソコンであろうが、MicrosoftのVisual Basicが「標準的なBasic」という位置づけになってゆき、いわば「標準語」のようなものがひとつに定まったのである。ただしVisual Basicは、Windowsというプラットフォームに依存する言語、開発環境にすぎなかった。Windowsプラットフォーム以外では使えないものであり、MacintoshやLinuxというプラットフォームでは使えないものであったのである。こんな状態では、プラットフォーム・フリーつまりプラットフォームを超えてWindowsでもMacintoshでもLinuxでも使えるJavaに比べて劣っていることは明らかで、Visual Basicが次第にJavaに負けてゆく原因のひとつとなった。 なお、VBのサブセットVisual Basic for Applications (VBA)もMS Office向けに提供され、事務仕事の効率アップやプログラミングの入門に使われることになり入門者をプログラミングの世界にいざなう役割も担った。 地位の低下 だが大学ではBASICの使用は構造化BASICも含めて減っていった。大学では、構造化言語の中でも、特定メーカーに依存せずプラットフォームを超えて使え、方言が乱立しなかったC言語を教えることが一般化した。また、やはりプラットフォーム・フリーで機種を超えて使え無料で使えるJavaなどの洗練された後発言語の普及により、Basicは開発環境としては選択肢のひとつでしかなくなり、数十年の時をかけて、順位(開発言語として使われる率の順位)が下がってきた。TIOBEが発表した2021年11月のプログラミング言語ランキングでは、トップ10は上から順に、Python、C、Java、C++、C#、Visual Basic、JavaScript、アセンブリ言語、 SQL、PHPとなっていて、つまり2021年11月時点でVisual Basicは6位だった。 なお、コンパイラで開発した場合、実行ファイルとは別に、巨大なランタイムライブラリが必要となる処理系が多い。このため配布に必要なファイルのサイズが大きくなり、敬遠されることもある。
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