The Gigantic Turnipとは? わかりやすく解説

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おおきなかぶ

(The Gigantic Turnip から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/19 13:23 UTC 版)

ロシア画家ポストカードデザイナーでもあるエリザベータ・ビョーム英語版がデザインしたポストカード / 1887年発表。大きな蕪を背景にして、8つの場面を描いたシルエット画がコラージュ風に散りばめられている。蕪の根の部分は物語解説用スペースの役割も果たしている。
詳細不明。1917年より前の作。
蕪を皇帝の首になぞらえたロシアの風刺画 / 1917年の作。[注 1]
『おおきなかぶ』の演劇を披露するアゼルバイジャンの子供達

おおきなかぶ: Репка)は、ロシア民話の一つであり、童話である。大きく育った蕪(かぶ)をみんなの力を合わせて引き抜くという話で、畳語によって話が累積的に展開する。

ロシア語 "репкаラテン翻字repka、日本語音写例:レプカ)" は、英語でいうところの "turnip"、日本語の「かぶ)」に当たるアブラナ属野菜のことで、本作を英語では「巨大な蕪」を意味する "The Giant Turnip "、"The Gigantic Turnip "、"The Enormous Turnip " などという名で呼んでいる。日本語名はこれを意訳したものである。

アレクサンドル・アファナーシェフ編纂した『ロシア民話集ロシア語版』(1863年刊行分初出)に収められているほか、コンスタンティン・ドミートリヴィッチ・ウシンスキー(カー・デー・ウシンスキー、コンスタンチン・ウシンスキー)やアレクセイ・ニコラエヴィッチ・トルストイらによる再話物[注 2] が知られている。

概要

ロシア語の原文は全文を通して言葉が持つリズムを重視しており、とりわけ以下の畳語cf. ロシア語における畳語英語版)がリズミカルな掛け声の繰り返しとして印象深く使われている。

"Тянут-потянут, вытянуть не могут." [ˈtʲanut pɐˈtʲanut ˈvɨtʲɪnutʲ nʲɪ ˈmoɡut]
英語意訳 : "They are pulling and pulling, but cannot pull it [the turnip] out."
日本語直訳 : 「引っぱって引っぱって、でも抜くことができませんでした。」

これは、手助けする者が加わってかぶを引っぱるたびに反復されるフレーズであるが、日本語では翻訳家内田莉莎子cf. #美術)が「うんとこしょ、どっこいしょ」と書き変え、この形で定着した。

登場人物が一人加わるたびに「ねずみがねこを、ねこがいぬを…」というように列の後尾から前へ順に登場人物を列挙していく面白さが幼い子供たちを楽しませる。

ロシアでは栄養豊富な蕪は古くから食されてきた野菜である。この昔話には蕪のもつエネルギーを子供に授けたいという呪術的な意味も込められているようだ。

一般的な登場人物は「おじいさん」・「おばあさん」・「孫娘」の3人の人間と「犬」・「猫」・「鼠」の3匹の動物だが、アメリカでは書籍によっては「孫娘」が「男の子」・「女の子」の二人に変わっている部分もある。

あらすじ

おじいさんが一粒のかぶの種を植えた。「あまい あまい かぶになれ。おおきな おおきな かぶになれ」。するとあまい元気の良いとてつもなく大きいかぶができた。おじいさんはかぶをつかんで引っぱった。ところがかぶは抜けない。そこでおじいさんはおばあさんを呼んだ。おばあさんがおじいさんをつかみ、おじいさんがかぶをつかんで引っぱったが、それでもかぶは抜けない。そこでおばあさんが孫娘を呼び、孫娘がおばあさんを、おばあさんがおじいさんを、おじいさんがかぶをつかんで引っぱったが、やっぱりかぶは抜けない。そこで孫娘がを呼んだ。いぬが孫娘を、孫娘がおばあさんを、おばあさんがおじいさんを、おじいさんがかぶをつかんでひっぱったが、まだまだかぶは抜けない。そこでいぬがを呼んだ。ねこがいぬを、いぬが孫娘を、孫娘がおばあさんを、おばあさんがおじいさんを、おじいさんがかぶをつかんで引っぱったが、なかなかかぶは抜けない。そこでねこがを呼んだ。ねずみがねこを、ねこがいぬを、いぬが孫娘を、孫娘がおばあさんを、おばあさんがおじいさんを、おじいさんがかぶをつかんで力一杯引っぱり、やっとかぶが抜けた[注 3]

再話者による改編

再話者[注 2] によって内容に違いがある。最初の再話者アレクサンドル・アファナーシェフのものは「一本足」が登場する。再話者の一人であるオンチュコーフ (Oncukov) の編纂したものでは、カブはネズミが齧ったことによって抜ける。

二次創作

美術

美術分野の二次創作作品としては、A・トルストイの再話物にニーアム・シャーキー英語版が挿絵を寄せたアメリカの絵本 "The Gigantic Turnip " が世界的に広く知られている。1910年刊行で、出版社はタートルバックブックス(Turtleback Books Publishing, Ltd. 本社所在地:米国ワシントン州フライデーハーバー英語版)。

日本では、A・トルストイの再話物を内田莉莎子日本語に訳し彫刻家佐藤忠良が挿絵を寄せた、1962年昭和37年)6月20日刊行の絵本、福音館書店版 『おおきなかぶ』[1]ベストセラー[注 4] となっており、世代を超えて広く普及している[2][3]

挿絵の原画水彩画)は宮城県美術館内の佐藤忠良記念館が所蔵している。また、宮城県立こども病院の依頼を受けて佐藤忠良が2003年平成15年)に制作(同年10月21日発表[4])したブロンズレリーフの二次創作作品「おおきなかぶ」[4] が同病院に展示されている(佐川美術館所蔵)[2]

その他の日本語絵本
  • A・トルストイ(再話) 著、 金光せつ 訳『大きなかぶ』(Paperback)偕成社〈偕成社 世界のどうわ 20 完訳ロシアのどうわ〉、1989年1月1日、70頁。 
ISBN 4-03-445200-5ISBN 978-4-03-445200-4NCID BA58680902OCLC 674544490国立国会図書館書誌ID: 000001959351

音楽

音楽分野の二次創作作品として、日本では、この物語を元にした童謡が複数存在し、なかでも、五十嵐洋、長澤勝俊、中野正以などによるものが有名である。また、日本のミュージシャン大江千里の楽曲アルバム『うんとこしょ どっこいしょ』(2007年〈平成19年〉リリース)にも収録されており、当アルバム・タイトルは童話『おおきなかぶ』の劇中の掛け声から採ったものである。更に、おかあさんといっしょではこの話を元にした同名の楽曲も制作されている。

CM

脚注

注釈

  1. ^ なお、ロシア皇帝を意味する「ツァーリ」は民話では「善き王」を意味するため、ここでの使用は不適当。
  2. ^ a b c 再話(英:retell)とは、物語を語り直すこと。すなわち、物語を再構成すること。伝説や昔話、古典文学などを、(主として、子供の読み物としてふさわしい形に)構成し直すことを指す。書誌データ上は、英語では "retold"、日本語では「再話」と記されるのが通例。
  3. ^ A・トルストイ編 『おおきなかぶ』 内田莉莎子 訳、佐藤忠良 絵、福音館書店[1]に基づいて編集。
  4. ^ 2005年(平成17年)7月時点で210万冊を超える。

出典

  1. ^ a b トルストイ, 佐藤 & 内田 (1966).
  2. ^ a b 彫刻家・佐藤忠良のもうひとつの顔”. (公式ウェブサイト). 佐川美術館. 2012年5月28日閲覧。
  3. ^ 佐藤忠良 『おおきなかぶ』 A・トルストイ/再話 内田莉莎子/訳 福音館書店 1962”. (公式ウェブサイト). さいたま市図書館. 2013年12月14日時点のオリジナルよりアーカイブ。2012年5月28日閲覧。[リンク切れ]
  4. ^ a b 橋本修一 [1]. “宮城県子ども病院 ブロンズレリーフ除幕式”. (ウェブサイト). 城萩会(東北大学応援団OB会). 2012年5月28日閲覧。
  5. ^ Tolstoy & Sharkey (1998).

参考文献

ISBN 4-00-326421-5ISBN 978-4-00-326421-8OCLC 834578174
ISBN 4-06-149848-7ISBN 978-4-06-149848-8NCID BA77659288OCLC 939441121国立国会図書館書誌ID: 000008245099

関連項目

外部リンク




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