EUのスープラナショナリズムと民主主義の否定
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/19 04:26 UTC 版)
「イギリスの欧州連合離脱是非を問う国民投票」の記事における「EUのスープラナショナリズムと民主主義の否定」の解説
EUはスープラナショナリズムを基本としているが、それが成り立つにはEU参加国が条約に署名することで加盟国の主権を超国家権力主体へ譲渡する必要がある。だが特定の分野、例えば防衛、徴税や通貨などの主権は超国家権力主体へ譲渡すべきではない。[誰によって?]もしそれらの主権を譲渡すればその国家は弱体化することになる。リーマン・ショック以降のユーロ圏の状況からもそれは明らかである。ユーロ加盟国は金融政策の主権をフランクフルトにある欧州中央銀行(ECB)に譲渡しているため、独自の金融政策を採れない。 自国通貨を捨て金融政策を放棄した南欧のユーロ加盟国は高い失業率に苦しんでいる。通貨発行権限も失っているので自国の政府債務もコントロールできず、他国からの金銭支援を余儀なくされた。 ドイツはじめEUは、PIIGS諸国への金銭支援と引きかえに緊縮財政政策や構造改革を施行するよう要求した。ここまではスープラナショナリズムの論理的帰結である(このようなことは財政連邦主義を採るアメリカ合衆国ではありえないことである。アメリカでは、経済が低迷している州は連邦政府からの自動的な経済援助を受ける仕組みになっている)。 スープラナショナリズムのみならず、EUは民主主義も否定する性格を有している。EU側の命令に対しギリシャは2015年7月に国民投票を行い、緊縮財政に反対する明確な意思表示をした。だがEUはギリシャの民意を無視した。EU側は、ギリシャに緊縮財政だけでなく500億ユーロ相当のギリシャ国有資産を売却民営化するよう要求した。 このようにEUが非民主主義な組織であることは広く知られている。EUの政策の多くは選挙と無関係な人々で構成される欧州委員会(EC)で形作られるためである。欧州委員会の構成員をEU市民が選挙で選ぶことは出来ない。また、欧州議会(EP)はEUの意思決定にほとんど影響を及ぼせない。欧州議会には法案の提出・形成・破棄の権限が無く、欧州委員会が提起した法案の修正程度のことしか出来ない。よってギリシャ制裁に抗議した人々は欧州委員会やECBに直接的・間接的影響力を行使できないのである。 欧州委員会の副委員長は「我々には選挙に依って政策を変えることは無い」とまで発言している。 「2015年ギリシャ国民投票」も参照 マイケル・ゴーブは、EUの問題の一つはゴールドマン・サックスやモルガン・スタンレーなどの巨大銀行がEUと関係を持っていることだと考えている。 「私はゴールドマン・サックスやモルガン・スタンレーのような巨大な投資銀行をしばしば批判します。ゴールドマン・サックスは2008年の世界金融危機を誘発した数々の要因にも、そしてギリシャのユーロ加盟にも関与しています。これら投資銀行がEUにロビー活動を行いそしてEU残留派を支援している事実が全てを物語っていると思います。EUのような巨大銀行重視の機関か、それとも労働者のためになる民主主義か、どちらが良いでしょうか。私たちは民主主義を選ぶべきだと思います。」
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