2004年の噴火
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/21 16:24 UTC 版)
「セント・ヘレンズ山」の記事における「2004年の噴火」の解説
2004年秋、セント・ヘレンズ山の火山活動は再び活発化した。9月23日現地時間2時(協定世界時同日9時)頃、セント・ヘレンズ山の山頂において、溶岩ドームの直下約1kmを震源とするマグニチュード1未満の微小地震が約200回にわたって連続して発生した。9月26日、アメリカ地質調査所と太平洋岸北西地区地震観測網は、この群発地震を危険な兆候と捉え、レベル1の警戒を発令した。また同日、アメリカ農務省林野部はセント・ヘレンズ山に入山禁止命令を発令した。 地震の頻度は9月29日頃に最大化し、1分間に4回の割合で微小地震が観測された。山頂の溶岩ドームからは水蒸気が立ち上り、アメリカ地質調査所は警戒レベルを2に引き上げた(最高はレベル3)。 そして10月1日現地時間12時2分(協定世界時同日19時2分)、セント・ヘレンズ山は水蒸気や火山灰の噴出を開始し、噴煙は標高3,000mに達した。黒くすすけた火山灰は風に乗って、南方のワシントン州バンクーバーやオレゴン州ウッド・ヴィレッジに降り注いだ。 翌10月2日12時14分(19時14分)、セント・ヘレンズ山は前日よりも強い爆発を起こし、低周波の火山性地震を引き起こした。政府の地震研究者は警戒レベルを最大レベルである3へと引き上げ、避難命令を発令した。 10月3日3時(10時)頃、約90分間に及ぶ低周波地震が発生した。この地震はセント・ヘレンズ山の内部のマグマが大規模な移動を起こしたために発生したと考えられており、現地時間10時40分(17時40分)頃には水蒸気爆発によるものと思われる地震が発生した。 その後も突発的な水蒸気爆発が続発し、10月4日9時47分(16時47分)、14時12分(21時12分)、17時40分(10月5日0時40分)、そして10月5日9時3分(16時3分)には火山灰の噴出を伴った爆発が発生した。また、これら一連の水蒸気爆発は、マグニチュード3程度の地震を引き起こした。 10月6日、アメリカ地質調査所は警戒レベルを引き下げ、「今後しばらくは大規模な噴火が発生することはないだろう」と発表した。 10月11日、セント・ヘレンズ山内部のマグマは火山の地表近くにまで到達し、1980年の噴火の際に形成された山頂の溶岩ドームのすぐ南側に新たな溶岩ドームが形成され始めた。 同年11月、アメリカ地質調査所は山頂の新たな溶岩ドームについて、1秒間に10m3の割合で成長を続けていると発表した。そして仮にこのペースでこの新たな溶岩ドームが成長するならば、山頂の火口はこの新たな溶岩ドームによって完全に覆われ、2015年にはセント・ヘレンズ山の標高は1980年の噴火前と同じ2,950mに達するだろうと推測した。 2005年2月1日、セント・ヘレンズ山の山頂にできた新たな溶岩ドームについて、その最高点の標高が2,329mであることが明らかになった。この溶岩ドームは、1980年に形成された火口の底面から約415mの高さがあり、セント・ヘレンズ山の最高点との差は220mであった。新たに形成されたこの溶岩ドームは鯨の背のような形状をしていたことから「ホエールバック」と呼ばれた。その長さは518m、幅は152mであり、体積は3850万m3と見積もられた。 3月8日17時30分(翌日0時30分)頃、セント・ヘレンズ山を再び大規模な火山活動が襲った。噴煙は海抜1万mにまで立ち上り、マグニチュード2.5の地震が観測された。この噴煙はワシントン州シアトルやオレゴン州セイラムでも確認され、20分から30分にわたって継続した。研究者によると、この爆発は圧力の放出によるものであり、大きな噴火が起こる可能性は低いとされた。 5月5日、セント・ヘレンズ山の山頂にできた新たな溶岩ドームについて、その最高点の標高が2,339mであると発表された。 2008年1月に入って溶岩ドームの活動が止まり、同年6月10日、噴火活動の終息が宣言された。
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