2002-2003年
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/31 14:26 UTC 版)
「Mozilla Firefox」の記事における「2002-2003年」の解説
Mozilla Application Suiteではなくスタンドアロンのブラウザを求めたMozillaのコミュニティによって、「Phoenix」が開発された。 オープンソースとして開発されたMozillaスイートは、Netscape Communicatorと同様にウェブブラウザ機能やメール・ニュース機能、ウェブページ作成機能など多くの機能を含んだインターネットアプリケーションスイートであったが、動作が重くソースコードも複雑であった。そこで2002年中頃から、Mozillaスイートも開発を継続しながら、ウェブブラウザ部分 (Mozilla Firefox) とメール・ニュース部分 (Mozilla Thunderbird) を個別に開発することになった。 この戦略には、Appleが2003年1月に開発を発表したウェブブラウザ、SafariがMozilla Organizationの開発しているGeckoではなく、KDEプロジェクトが開発しているレンダリングエンジンKHTMLを採用したことが同じく絡んでいるとされる。「軽量・高速性」への需要は、アプリケーションスイートとして開発されていたMozillaには満たせないものであった。 そのようにして誕生した軽量なブラウザはPhoenixと名付けられ、2002年9月にリリースされた最初のバージョン0.1から0.5まで用いられた。しかし、この名称はPhoenix Technologies社の商標権を侵害することが判明したため、変更せざるを得ない状況に追い込まれた。 こうして次項にも述べられる名称、Firebirdという名称が採用されることとなった。プロダクト名としてのPhoenixは放棄されるも、開発ロードマップ上は、継続的にPhoenixという名称が使用された。 ユーザからどのような名称がよいかなどを投票で集め、かつ商標権に抵触しない名称を考慮した結果にFirebirdという新名称が決定した。しかしこの名称が新たな問題を引き起こしてしまうこととなる。Firebirdという名前が、Mozillaと同じくオープンソースで開発されている関係データベースプロジェクトの名称であることが判明し、同データベースFirebirdプロジェクトからMozilla Organizationに攻撃的な形で強い苦情があった。これを受けてMozilla OrganizationはMozilla Brandingというブランディング戦略を発表した。 Mozilla Brandingで述べられていたことは次のようなものである。 Mozillaプロジェクトはメインで開発しているMozillaを1.4まで開発する。その後はFirebirdおよび同じくMozilla派生のスタンドアロンメーラ、Thunderbirdをメインに開発していく。 開発体制がシフトしたあとは、Firebird/ThunderbirdはそれぞれMozilla Browser/Mozilla Mailと名称を変えて開発していく。 それまでの措置としてFirebird/ThunderbirdをMozilla Firebird/Mozilla Thunderbirdと呼ぶ。 このブランディング戦略によりデータベースFirebirdプロジェクトとの名称問題は沈静化した。2003年5月には、Firebirdとして初のリリースとなる0.6が登場した。 その後、Firefox 1.0系列のプロダクトは、Mozilla 1.7系列の基盤に即すものとする方針となった。 ブランド戦略により、Firebirdという名前は一時的なものとなった。しかしMozilla 1.4がリリースされた後も依然としてMozilla Browserという名称変更が行われる気配がなかった。Firebirdの完成度がメインプロダクトとして機能するほど充分な状態になかったことが原因であったが、さらにFirebirdという名称が使われ続ける原因となるMozilla Foundationの設立である。 2003年5月末に起こったAOLとマイクロソフトの和解により、AOL傘下のネットスケープとマイクロソフト間で起こっていた反トラスト法訴訟などがすべて取り下げられた。また同時に、Internet Explorerを数年に渡りロイヤリティフリーで使うという契約を結んだことにより、ブラウザを提供するネットスケープの存在価値が危ういものとなった。これはネットスケープのコードベースにもなっているMozillaの存在価値をも揺るがす問題であった。こうした事態を受けて 2003年7月、Mozilla OrganizationはAOLから資金提供を受け、Mozillaの開発を支援する団体であるMozilla Foundationを設立した。 Mozilla Foundationの設立により、ネットスケープ社が担っていた「エンドユーザへのソフトウェア提供及びサポート」という目標がMozilla Foundationにも覆い被さることとなった。それまでネットスケープ社がリリースしたもののサポートを含め、Mozilla FoundationはMozillaをその後もリリースしていかざるを得ない状況となってしまった。これにより4月に発表されたブランドにおける「Mozilla Firebird/Thunderbirdへの開発体制移行」が閉ざされてしまうこととなった。 これにより、一時的とされていたFirebirdという名称を使い続けることに対する懸念が生まれた。そのため同年11月頃から開発チームが新たな名称への変更をするための動きが水面下で行われた。商標に関するトラブルはもちろん、他のプロジェクトで使われている名称との衝突を避けるため、念入りにリサーチが行われた結果、Mozilla Firefoxという名称がこのブラウザの正式名称となることが決定した。名称の由来はレッサーパンダ (Red Panda) の別名からきている。
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