112番への誤接続問題とその原因
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/31 19:03 UTC 版)
「119番」の記事における「112番への誤接続問題とその原因」の解説
自動化でダイヤル付き電話機が増えると、その扱い方に市民がまだ不慣れだったため、間違い電話が急増した。新しく導入された局番(2桁)を省略したり、加入者番号(4桁)のゼロを省略 したりする他に、ダイヤルを指止めまできっちり廻さずに途中でリリースしてしまったり、あるいは指止めまで廻しても、指の抜き方が悪くて正常に回転させていないなど、加入者側に原因があるものが多かったが電話局に苦情が殺到した。 112番(消防署)への誤接続も頻発したが少し様子が違った。これは加入者の不慣れによる「間違い電話」というよりも、自動交換システムの仕様による「誤接続」という側面が強かったが、当初想定されていたフックスイッチの振動で発生する擬似インパルス1によるものではなかった。加入者がこれまでの習慣により電話番号をダイヤルする前に、フックスイッチをガチャ・ガチャと上下させてから、局番が20番台の地域(22:丸の内局、23:日本橋局、24:神田局、28:大手局)へ電話しようとするときに消防署への誤接続が起きたが、これは想定外だった。 ハンドルがない共電式電話機 手動交換用の電話機には発電機の手廻しハンドルが付いた"磁石式"と、電話局が電話線を通じて加入者の電話機へ電気を供給する(発電機のハンドルがない)"共電式"の2種類がある。 1909年(明治42年)以降、東京や大阪などの大都市の手動交換用電話機は、新たな電話局(分局)が開局する際に"磁石式"から"共電式"へ順次切替えられた。最後まで"磁石式"が残っていた老舗電話局(本局、浪花局、下谷局)の加入区域内でも1923年(大正12年)の関東大震災を契機に全廃された。東京では手廻しハンドルが付いた"磁石式"の電話機はすでに過去のものだった。 手動交換用の"磁石式"電話機と"共電式"電話機では電話交換手の呼出し方が大きく異なっている。地方都市の小規模交換局区域内では"磁石式"(デルビル型)電話機が用いられ、本体にあるハンドルをグルグル廻して電気を起し、電話局の交換手に呼出し合図を送ってから、受話器を上げた。 しかし東京の手動交換用"共電式"電話機にはそもそも手廻しハンドルがない。単に受話器を外して、フックスイッチ(電話機を使わないときに受話器をぶら下げておく「留め金具」)を上げれば、電話局交換台にある加入者番号ランプが点灯する。ここで電話機のフックスイッチを手でガチャ・ガチャと2回ほど上げ下げし、交換台の自分のランプをチカ・チカと点滅させて交換手の注意をひく。そしてランプの点滅に気付いて電話口に出てきた交換手に接続先を告げていた。そのため自動交換に切替わってもこの手癖が抜けない人達が少なからずいた。 もし長年の手癖でフックスイッチを「ガチャ」そして「ガチャ」と2回上下させたならば、ダイヤル「1」を2度廻した時と同じダイヤルパルス「11」が発生する。この動作に続けて神田局などの20番台の局番をダイヤルしようとすると、初めの「2」を廻した時点で、都合「112」をダイヤルしたことになり、これが消防署への誤接続 の原因だったという。この想定外の"手癖"問題は、のちになり電話局側と消防側の双方の歴史書に誤接続の原因として記録 されている。 3桁特殊番号の中で、ダイヤル時間が一番短くて済む111番を欠番としていたのは、「ガチャ」3回で111番への誤接続が考えられるためで、一刻を争う火災報知用の番号には2番目に短い112番にした。しかしそうして選ばれた112番も上記の理由で誤接続が頻繁に起きた。ついには『誤着呼が多い』という苦情が消防署より電話局に申し立てられたという。
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