鯨骨と寺社
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/10 03:57 UTC 版)
鯨の供養や祀りために遺骸や神体として鯨骨を埋めることは、「鯨塚」や「鯨墓」などに代表され日本各地で見られるが、ここでは鯨骨自体が一種のモニュメントを兼ねている寺や神社などを記述する。宗教的な意味合いはないが、クジラの生息域である南北極圏に近い、キリスト教の教会にも門の装飾やモニュメントとして鯨の骨が、飾られている事例がある。 神社 鯨鳥居 鯨鳥居とは神社の鳥居が鯨の骨でできている鳥居である。日本で最古のものは、和歌山県太地町の「恵比須の宮」の鳥居である。このことは井原西鶴の『日本永代蔵』貞享5年(1688年)刊行に「紀路大湊 泰地といふ里の 妻子のうたへり 此所は繁昌にして 若松村立ける中に 鯨恵比須の宮をいはひ 鳥井に 其魚の胴骨立しに 高さ三丈ばかりも 有ぬべし」と記述があり、貞享5年以前から存在していたことが判る。ほかには、長崎県有川町の海童神社に鯨鳥居があり、昭和48年(1973年)に日東捕鯨株式会社によって奉納されたが、記録によれば現在の鳥居は三代目であり、それ以前はどのような材料で鳥居が作られていたか判明していない。これらが現在、日本にある鯨鳥居の全てであるが、当時日本統治下の台湾の最南端の鵞鑾鼻にあった鵞鑾鼻神社、または、樺太にあった札塔恵比寿神社、北方領土の色丹島の色丹神社の3ヶ所に鯨鳥居があった。以上の5ヶ所はそれぞれに、捕鯨に直接的、または、捕鯨基地などの間接的に係わる場所である。 鯨絵馬 愛媛県川之江市の川之江八幡神社にあり、川之江市で文久3年12月(1864年1月)に体長7mと11mの2頭のコククジラが捕獲された。その捕らえたクジラの肩甲骨に「鯨」と大きく筆で記した鯨骨絵馬が奉納されている。 寺院 鯨橋 大阪市東淀川区瑞光の天然山瑞光寺にあり、「雪鯨橋」(俗称:鯨橋)という欄干が鯨の骨で作られた橋がある。宝暦6年(1765年)に建造されたもので、現在まで欄干は6度架け替えられている。詳しくは「雪鯨橋」を参照のこと。 鯨卒塔婆 新潟県佐渡市両津大字片野尾にある。ここには万延元年(1860年)に流れ着いたナガスクジラを供養した「海王妙應信女 鯨戒名 村中」という一文が地蔵院の過去帳に記されており、戒名からメスの鯨と思われる。また、その鯨の骨そのものでできていて高さ4mにもなる。平成15年(2003年)にはゴンドウクジラが流れ着き、その骨を近隣の児童がここに埋葬した。 教会 フォークランド諸島にある世界最南端のキリスト教会大聖堂(en)には、1933年に2頭のシロナガスクジラの骨で作られたアーチのモニュメントがあり、捕鯨基地に近いことからこのようなものが作られ、フォークランド諸島ポンド紙幣の裏面に掲載されている。スコットランドのルイス島の西側にあるブレガーという村(en)のジョンバプテスト礼拝堂の入り口の門には、付近で座礁したシロナガスクジラの顎の骨が左右対称飾られている。
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