鯨食害論
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/16 04:19 UTC 版)
日本鯨類研究所の大隅清治と田村力による『世界の海洋における鯨類の食物消費量』を基にしたとされるのが、鯨食害論である。 『世界の海洋における鯨類の食物消費量』が飽くまでも食物網の研究から、漁業と鯨類の捕食の競合を示そうとしているのに対して、こちらの論説では、「鯨が増えすぎると魚類を食い尽くす」という論旨であり、水産庁などが監修した一般書籍には多く見られる。日本捕鯨協会による簡単な説明は以下の通りである。 世界中の鯨類が捕食する海洋生物の量は、世界の漁業生産量の3-5倍に上ります。また、日本近海において鯨類が、カタクチイワシ、サンマ、スケソウダラなど、漁業の重要魚種を大量に捕食していることが胃内容物調査で明らかになっています。鯨類が大量の魚を捕食していることは事実であり、鯨を間引くことでその分人間が魚を利用できることは間違いありません。実際に、沿岸漁業者などからクジラによる漁業被害に対する苦情が出ており、早急な対策が必要です。また、クジラは海の食物連鎖の中で最上位の捕食者であり、クジラだけをいたずらに保護することは海洋生態系のバランスを崩すことになります。 基本的に、クジラ目を二分するヒゲクジラ亜目の鯨のほとんどは1年のうち1/4は極地で採餌し、残りの3/4の期間は赤道付近で餌を食べずに繁殖を行なうため、例としてシロナガスクジラでは年間に自分の体重の4倍程度しか食事をしないため、見た目のイメージで大食漢と決め付けられるものではないという意見もある。特にヒゲクジラ亜目の鯨は前述のように極地で採餌するため、地球上の半分である南半球では主として、南極海でもっとも豊富なナンキョクオキアミが消費されるが、これは年間数千万トンの余剰資源がある とされる。ほかにもマッコウクジラは主に深海の軟体動物を食べ、ハクジラ亜目の鯨類には深海凄のイカ類に依存するものが多い。他には砂浜のゴカイなどの生き物を捕食するコククジラや鯨類そのものを捕食するシャチなど、80種近いクジラの生態および食性はさまざまであり、また、ナガスクジラ科の鯨種のようにその時期に多い餌生物を食べるため、餌生物も特定のものに限定される訳ではないため、人間の漁業と間接的にしか競合していない部分も大きい。 科学的に不確かな部分が多いと言う指摘に対して、田村力はオキアミだけを捕食していた種類もあり、不確かな部分も多く、この説は世界に叩き台を提供するためのものであると、それを認めたうえでさらなる調査が必要であるとしている。
※この「鯨食害論」の解説は、「クジラ」の解説の一部です。
「鯨食害論」を含む「クジラ」の記事については、「クジラ」の概要を参照ください。
- 鯨食害論のページへのリンク