世界の海洋における鯨類の食物消費量
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/16 04:19 UTC 版)
「クジラ」の記事における「世界の海洋における鯨類の食物消費量」の解説
財団法人日本鯨類研究所の計算によると、世界中の鯨類(クジラ・イルカ・シャチ)が食する餌の消費量は魚、イカなどの軟体動物、オキアミなどの甲殻類を合わせると、2.5 - 4.3億トンとされている。これは、1996年当時における世界中の人間の魚の消費量9千万トン の3倍-5倍と計算される。保護されたために増えすぎた鯨によって海洋のバイオマス(生物資源)は減少しており、捕鯨は海洋生物資源の保全に繋がるという意見もある。 クジラの消費するバイオマスの量については、捕鯨に賛成、反対のそれぞれの立場からの説明となってしまうことが多いが、必ずしも捕鯨に賛成、反対の立場からのみ発生した見解が出ると限ることはできない。 試算には、捕鯨対象種以外の種を含んでおり、捕鯨禁止という形で保護されているのは鯨類全80種余りの中のIWCで管理された13種に過ぎない。 世界中の鯨が食べる餌は種類によって異なり、魚やイカの中には漁業と競合しないものや、プランクトンや深海凄のイカなどは、そもそも食用資源に向かないものもあり、直接競合しているのは二割程度である。 人類が利用しにくい資源をより多く利用するため、リン酸資源や鯨油として使用するなど食用に不向きなクジラの利用が推奨されることもある。例えば深海凄のハクジラ類の生息数は南極においてクロミンククジラよりも多いにも関わらず資源として利用されていない。だが、深海凄のハクジラであるマッコウクジラ調査捕鯨の対象としても僅か5頭程度しか捕られていないが、これは鯨油の需要が少なく、経済価値がほとんどないからである。 といった事実から、捕鯨がどの程度、特にクジラを除く生物資源の管理に役立つのか明確でない点が多く、それを示す研究結果も少ない。 現在の群集生態学によれば、実際の生態系はピラミッド上の単純な食物連鎖ではなく、食物網と呼ばれる網の目のような複雑な関係にあるとする知見が得られてきている。食物網の概念によれば、たとえどの網の箇所でも引っ張れば全体に影響し歪みを与え、それと同様に、乱獲や過剰保護 などの極端な資源運営を行えば、バイオマスのバランスが崩れる要因になる。近年ではEcopath with Ecosimなどの生態系モデル (Ecosystem model) が開発され、日本でもクジラと漁業の競合関係を調べるためにジャルパン2 (JARPN II) と呼ばれる研究が行われており、その目的の一つがクジラを含めたFood webを数値モデル化するための科学的データの提供とされる。
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