世界の湧昇域
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/04 09:28 UTC 版)
アメリカ西海岸のモントレー湾では沖合に切り立った海底渓谷があり、そこを深層水が這い上がってくるため、世界有数の湧昇域になっている。ここに群生する海藻のジャイアントケルプは長さ60 m、1日で最大30 cm 以上も成長するという。この巨大なケルプの海中林を支えているのが、湧昇によって運ばれてくる栄養塩である。そしてケルプの林は他の様々な生物を育むゆりかごにもなっている。ケルプの根元ではウニなどのケルプを食べる生物がおり、小魚はケルプの間に身を隠し栄養塩により増殖したプランクトンを食べて成長する。それらを追ってイルカやシャチなどさらに大型の捕食者も集まる。海面ではラッコが潮に流されないように、ケルプに絡まって休息をとる。このようにモントレーの海洋生態系は実に多くの生物によって成り立っている。 赤道には赤道潜流(クロムウェル海流)という、西から東へ向かう深海の流れがあり、これが海底火山などにぶつかると湧昇を起こす。この最も顕著な例がガラパゴス諸島西岸である。ガラパゴス諸島は、エクアドルの沖合約1,000 km の赤道直下に位置する火山島の集まりであるが、このクロムウェル海流がもたらす栄養塩により、西側の海域は生物が豊富である。海中だけでなく、海上でもペンギンや海鳥が餌を求めて飛来し、営巣を行ったりする。しかし、エル・ニーニョによってクロムウェル海流の勢いが弱まるため、毎年のように頻発するとガラパゴスの生態系に深刻な影響を与えることが懸念されている。
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