顔面付釣手形土器
主名称: | 顔面付釣手形土器 |
指定番号: | 450 |
枝番: | 00 |
指定年月日: | 1989.06.12(平成1.06.12) |
国宝重文区分: | 重要文化財 |
部門・種別: | 考古資料 |
ト書: | 長野県伊那市富県御殿場遺跡出土 |
員数: | 1箇 |
時代区分: | 縄文 |
年代: | |
検索年代: | |
解説文: | 御殿場遺跡は天竜川の中流域の左岸に位置している。大正末年に鳥居龍蔵【とりいりゆうぞう】によって最初の発掘調査が行われている。 本遺品は昭和四十一年、この地域の開田事業に先立つ発掘調査で、第一一号住居跡と第一二号住居跡の重複部から出土した。したがって本来的な帰属住居跡は不明である。 本遺品は重量感のある釣手形土器で、釣手部の付く上半部と円筒状の下半部に分かれる。 上半部は三方に開口部を設け、そのうち正面は他の二面より大きくあけられている。正面周縁は一・五~二・〇センチ幅で連続的に欠損するが、全体はほぼ完全に遺存している。正面開口部に沿って縁取【ふちど】りするように二条の沈線【ちんせん】を描き、沈線の外周には円孔【えんこう】が左右五孔ずつ、合計一〇孔が等間隔で巡っている。 正面の釣手部の頂に扇形状の顔面がある。眉は半肉彫り状に造り出す表現で、目は切れ長の沈線、口は円孔で表わされ、鼻は粘土貼付後に鼻孔を一孔穿つ。両耳部には耳飾りの着装を思わせる円孔を穿つ。頸部【けいぶ】は一条および弧状に垂下した二条の隆帯によって頸飾りを表現している。顔面全体は平面的に控え目な表現となっており、眠るような表情となっている。 顔面背後は蛇行する隆帯・渦巻隆帯・円形隆帯などで結髪を抽象的に表現し、顔面背後から続く稜部【りようぶ】は蛇行する二条の隆帯表現がなされ、正面を支えるように装飾する。また、周縁部裏面には紐通【ひもとお】しが橋状把手【きようじようとつて】様に左右五箇ずつ、計一〇箇付けられている。その取付位置は、正面周縁沿いの円孔真後に当たり、機能的に吊り下げられる構造を示している。円筒状の下半部には文様は施されていない。 控え目な表現の正面部と、装飾過多ともいえる背面抽象的表現の対称的な装飾手法は、縄文時代中期の造形的特色を余すところなく示している。良好な遺存状態とともに縄文時代中期の顔面付釣手形土器の代表的遺品として貴重なものである。 |
考古資料: | 青磁鉢 青釉経筒 響銅製〓斗 顔面付釣手形土器 顔面把手付深鉢形土器 顔面把手付釣手形土器 飛天伽鳥八花鏡 |
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