陸上自衛隊事件とは? わかりやすく解説

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陸上自衛隊事件

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/07 14:52 UTC 版)

安全配慮義務」の記事における「陸上自衛隊事件」の解説

安全配慮義務法理確立され事件である。 自動車整備作業中に車両轢かれ死亡した自衛隊員A(昭和40年7月死亡)の遺族原告となり、昭和44年10月自賠法3条基づいて国を訴えた事件である。第一審東京地方裁判所)は、事故発生から3年以上経過しており、時効完成していることを理由請求棄却した。そこで、原告第二審東京高等裁判所)において、Aと被告国との雇用関係着目し、「被控訴人(国)は自衛隊員使用主として隊員服務するについてその生命に危険が生じないように注意し人的物的環境整備すべき義務負担している・・・(中略)・・・隊員安全管理万全を期すべきところ、右義務怠り本件事故発生させたのであるから、これに基く損害賠償すべき責任がある」との主張追加した。これは、本事故時効3年不法行為債権ではなく雇用契約上の債務不履行時効10年)として構成することによって時効の壁を突破することを狙ったものであった第二審は、特別権力関係理論により、国に債務不履行責任はないと判断し控訴棄却した。これに対して最高裁判所は、次の通り述べ、この構成認めて控訴審判決破棄して差し戻した。 「国の義務は右(国家公務員法62条、防衛庁職員給与法4条以下等)の給付義務とどまらず、国は、公務員対し、国が公務遂行のために設置すべき場所、施設もしくは器具等の設置管理又は公務員が国もしくは上司指示のもとに遂行する公務管理にあたつて、公務員生命及び健康等を危険から保護するよう配慮すべき義務(以下「安全配慮義務」という。)を負つているものと解すべきである。(中略)国が、不法行為規範のもとにおいて私人対しその生命、健康等を保護すべき義務を負つているほかは、いかなる場合においても公務員対し安全配慮義務を負うものではないと解することはできない。ただし、右のような安全配慮義務は、ある法律関係基づいて特別な社会的接触の関係に入つた当事者間において、当該法律関係付随義務として当事者一方又は双方相手方に対して信義則上負う義務として一般的に認められるべきものであつて、国と公務員との間においても別異解すべき論拠はなく、公務員前記義務安んじて誠実に履行するためには、国が、公務員対し安全配慮義務負い、これを尽くすことが必要不可欠であり、また、国家公務員法93条ないし95条及びこれに基づく国家公務員災害補償法並びに防衛庁職員給与27条等の災害補償制度も国が公務員対し安全配慮義務を負うことを当然の前提とし、この義務尽くされたとしてもなお発生すべき公務災害対処するために設けられたものと解されるからである。」 つまり、この判決において最高裁は、安全配慮義務を「ある法律関係基づいて特別な社会的接触の関係に入つた当事者間において、当該法律関係付随義務として当事者一方又は双方相手方に対して信義則上負う義務」として肯定した上で、これを「一般的に認められるべきもの」として、法律関係本事件では雇用関係)に基づく特別な社会関係があれば、民間領域においても、公務員関係の領域においても、この義務肯定したのである。しかし、その根拠信義則民法1条2項)という一般条項求めている上に、その義務発生要件あいまいな表現であるため、以下のような様々な論点存在し多く研究が行われてきた。 射程問題 - 「ある法律関係に基づく特別な社会的接触の関係」とは何か? 不履行問題 - 相手がこの義務履行しない場合には、こちらも給付拒めるのだろうか?(「付随義務」と定義しているため問題となる) 義務内容問題 - どこまで配慮すればいいだろうか民法根拠とするこの義務警察規制法(本事件では労働法)との関係はどうなのか?

※この「陸上自衛隊事件」の解説は、「安全配慮義務」の解説の一部です。
「陸上自衛隊事件」を含む「安全配慮義務」の記事については、「安全配慮義務」の概要を参照ください。

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