開発状況・実用化
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/24 06:29 UTC 版)
培養「肉」の範囲は、牛肉だけではなく、フィンレス・フーズ(英語版)による培養魚肉、メンフィス・ミーツの家禽(鶏肉と鴨肉)培養肉、UmamiMeatsの二ホンウナギの細胞培養、シオック・ミーツの甲殻類の培養肉など、幅広い。 研究当初は、培養肉の元となる初めの動物だけは殺されるため、動物倫理面から問題視されていたが、現在は、元となる衛生細胞は動物の筋肉から採取されるため、動物の犠牲が必要ないものとなっている。また細胞培養の培地にウシ胎児血清(FBS)が用いられることが一般的であったが、大量入手が困難であることやコスト面や動物倫理の問題などの理由から、非動物性成分の成長因子の開発が進められている。Mosa Meat(英語版)はアニマルウェルフェア基準に適さないウシ胎児血清(FBS)を利用しない方針を示している。また、メンフィス・ミーツ社やEat Just(英語版)もそれぞれ非動物性成分を独自開発した旨を公表している。 2013年に、科学者のマーク・ポスト(英語版)と食品技術者のPeter Verstrateが、ロンドンで開催された満員の記者会見で、世界初の培養ビーフバーガーを発表した(この後2016年に、ポストとVerstrateは培養肉の「Mosa Meat(英語版)」を法人化する)。この培養ハンバーガーがデビューした2013年以降、今日までに培養肉の分野は着実に成長している。2020年、投資機関らは、細胞培養肉に取り組む世界中の新興企業に12億ドル以上を投資している。2020年時点で、細胞培養食品の商業開発に取り組む企業の数は全世界で70社以上に上る。また、40社以上のライフサイエンス関連企業が細胞培養食品開発を行う企業に技術支援などで関わっている。 日本国内でも2016年日本の有志団体によるDIYバイオによる製造実証が行われ、のちにこの団体からのスピンオフで2015年にインテグリカルチャ―株式会社が法人化された。同社は培養フォアグラの製造に成功している。2020年4月には、JAXAなどが、宇宙での食料生産を目指す計画「スペースフードスフィア」をスタートさせ、2030年代後半に月面での培養肉の生産を目指している。2022年3月31日には、日清食品ホールディングスと東京大学が日本で初めて「食べられる培養肉」の作製に成功した。この研究は国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)の支援を受けて行われていたものである。2022年6月、厚生労働省は培養肉の産業化向けて、規制の是非を検討する研究チームを年度内に設置する方針を固めた。同年同月、自民党は「細胞農業によるサステナブル社会推進議員連盟」を設立、甘利明氏らが共同代表に就任した。 2020年12月1日、シンガポール食品庁(英語版)は、Eat Just(英語版)に対して、実験室で培養した鶏肉の販売を承認した。製品は人工培養した鶏の細胞から作られたものでシンガポールのレストランでチキンナゲットとして2021年に提供された。現時点では動物倫理上問題とされるウシ胎児血清(FBS)が使用されているが、これは2年前に許認可申請を出した時点での製造方法で作られているためで、新開発のFBS不使用の製造方法が、許認可取得手続き中である。 シンガポールでは培養鶏肉をさらに大量生産できる施設建設がはじまっており、2023年以降は、毎年数万kgの培養鶏肉が生産される予定となっている。
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