鉄道と蒸気船
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/22 06:52 UTC 版)
近代における交通は、機械を利用した交通手段の発達なしに語ることはできない。その先駆けとなったのは、蒸気機関の発明である。蒸気機関の発明は海陸の2つの輸送機械、すなわち蒸気機関車と蒸気船を出現させ、以後の交通を一変させた。 今日のような原動機の動力を用いた鉄道の出現は1804年のトレビシックによる蒸気機関車の発明を待たなければならない。ただこの時点ではまだ実用に耐えるものでは無かった。実用化はスチーブンソン親子によってなされ、1830年、蒸気機関車による世界初の旅客鉄道がリヴァプール-マンチェスターに開通した。その有用性はすぐに認められ、以降、世界中で鉄道建設が進められることになった。ヨーロッパやアメリカでは19世紀中頃、日本を含むその他の地域では19世紀末から20世紀初頭にかけて、空前の鉄道建設ラッシュが起こり、現在も運行される主要な路線のほとんどはこの時代に、極めて短期間のうちに完成された。 水上交通においては、1807年にロバート・フルトンが蒸気外輪船の営業運航に成功した。当初の蒸気船は波に弱く、河川などの内陸水運に主に使用されていたが、1840年代に入るとより高速を得られ安定性も高いスクリュープロペラが主流となり、さらに1860年代に高性能の船舶用蒸気機関が登場することで、蒸気船は全盛期にあった帆船を駆逐して主要な海洋交通手段となった。 また、産業革命とともに都市は大規模化し、都市交通の整備が必須となった。19世紀前半にはヨーロッパ各都市で乗合馬車の運行がはじまり、鉄道馬車を経て1890年頃以降は路面電車が各都市に敷設されるようになった。この時期には地下鉄の建設も始まり、1900年頃には自動車によるバスの運行もはじまって、市民に身近な交通機関となった。 鉄道が登場するまで、旅行は多くの危険を伴う行為であった。悪路を徒歩や馬車で長時間かけて移動する必要があり、かかる費用も莫大であった。ごく限られた層を例外として、現在では一般的なレクリエーションとしての旅行はまず考えられなかった。しかし、鉄道網の発達は長距離の移動を極めて容易に、しかも安価に実現した。産業革命が生み出した一定の余暇を持つ中産階級の成長に伴って、旅行が余暇を楽しむための趣味として初めて認識されるようになった。
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