遺体の所見
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/17 18:55 UTC 版)
第一発見者の劉賢佳(Lau Yin-kai)は、2019年9月22日の10時に息子と共に船に乗って釣りに行き、魔鬼山の近くで女性の全裸遺体を発見したと供述した 。通報を受けて出動した水上警察により遺体は西湾河にある水上警察本部に運ばれ、遺体を調べた警視文恵長(Man Wai-cheung)は、第一印象として遺体に死に至る可能性のある重大な外傷が見当たらなかったと供述した。 巡査陳国栄(Chan Kwok-wing)は、文恵長が、遺体が全裸であったことを理由に事件性があると判断したと供述したが、文恵長は、明らかな外傷がないことを理由に、事件性があるとの判断はしていないと反論した。 陪審員は陳が全裸で発見された原因について、衣服が潮流により流されたのではないか考えて文恵長に質問した。それに対し文恵長は「夏服は軽いので、潮流により衣服が流出することはあり得る」と答えた。 予備検死を行った法医学者の頼世沢(Lai Sai-chak)と李毓樺(Li Yuk-wah)は、陳の遺体に明らかな致命傷がなく、性的暴行の痕跡もなかったことを考えると、陳は溺死した可能性があるものの、遺体はかなりの期間水中にあったため分解が進んでおり、そのため死因の断定はできないと結論付けた。死亡推定時刻については、失踪してから24時間以内であると判断した。 また、分解が進んでいたとはいえ身体が比較的無傷であることから、陳は死の直前暴力もしくは性的暴行を受けていなかった可能性を示唆している。李毓樺は、陳の遺体に致命傷や抵抗した際にできる特徴的な傷はなく、薬物や毒物も検出されなかったが、遺体が腐敗したためにアルコール検査を行うことができなかったと供述した。 化学者の衛永剛(Wai Wing-kong)は、陳の膣内や爪の間から他人のDNAが検出されなかったことから、性的暴行を受けた決定的な証拠はなかったと供述した。 検査技師の李咏文(Lee Wing-man)は、陳の爪の間に繊維が見つからなかったことから、死の直前に誰かと言い争っていた可能性こそあるが、海流によって繊維が流された可能性もあり、断定はできないと供述した。 中毒学者の康祐軒(Hong Yau-hin)は、陳は事件前の数日間、医薬品及び違法薬物を服用していなかったと供述した。 証人として出廷した医学教授で法医学者の馬宣立は、陳が入水自殺を試み溺死したという見解に異を唱え、発見時に遺体が全裸であったことに不審を覚えたと供述した。馬宣立は、体の分解により死因を断定することは困難であるという頼世沢と李毓樺の見解に同意したが、陳の肺から見つかった水の量が、典型的な溺死の場合と比較してはるかに少なく、かつ片肺に偏って水が入っていたと指摘した。これに対し李毓樺は、片肺の分解が早く進んだため、肺もう一方の肺がより多くの水分を含んでいたと推測したが、その根拠を説明することはできなかった。馬宣立はまた、性的暴行を示すDNA証拠が水で希釈された可能性があることを指摘し、人が溺死した際に近くの水の珪藻が体内で見つかることが知られているにもかからわず、珪藻の有無を調べなかった法医学者を批判した。 陪審員は、陳が死亡したのは9月19日の夜から翌日にかけての間であると結論付けた。また、遺体が全裸であった理由について潮流により衣服が流されたのではなく、そもそも衣服を着けずに水に入ったためであるとした。死因の断定が不可能だったことについては、体の分解が進んでいる場合、珪藻の有無を調べることを推奨した。
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