遺体の火葬・埋葬
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/31 22:23 UTC 版)
「日本における地震対策と体制」の記事における「遺体の火葬・埋葬」の解説
南海トラフ巨大地震や首都圏直下地震では数十万人の死者が予想されており、国や地方公共団体には、遺体の保管体制や仮安置所の確保、遺体の運搬体制の確保、火葬に必要な物資の確保、さらに火葬場の耐震化や津波対策が求められている。阪神・淡路大震災では、死因の約90%が家屋倒壊であり自宅で亡くなった人が多かったため、遺体の身元確認が容易であったという。また震災のあった地域には多数の火葬場が整備されており、その多くが地震の被害を免れて稼働することができ、1月という低温の時期であったため遺体の保存が1-2週間は可能であり、国や自治体も積極的に支援したため、6千以上の遺体の火葬・埋葬は、3週間ほどかかったものの概ね順調に進めることができたという。しかし、首都圏直下地震や南海トラフ巨大地震の場合は被災地域が超広範囲であり、火葬場の稼働状況や気象条件によっては火葬・埋葬や遺体の保存が非常に難しくなることが予想されている。多くの火葬場は燃料に灯油を用いているが、2012年現在東京都内にある24か所の火葬場のうち10か所は燃料に都市ガスを用い、その10か所で都内の1日の最大火葬数の80%をまかなっている。都市ガスは大地震後の復旧に時間がかかることからプロパンガスに切り替えるなど、ライフラインの途絶への対応が必要だとの指摘がある。発災が外気温の高い時期であれば遺体は早急に傷んでしまい、身元確認に支障を来すほか防疫上の問題も生じるため、遺体保存に必要なドライアイスを調達し各安置所に適正に配布するための体制を確立しておく必要性も指摘されている。特に津波で亡くなった遺体はひどく傷んでいるため、遺体の身元確認にあたっては歯科医師も含めて多くの医師を全国から集める必要があるが、同時に、遺体の対応にあたる人々の心のケアを行うカウンセラーの派遣も事前に考慮しておく必要がある。遺体を集中的に安置し遺族による確認を容易にする体制や検死と身元確認を的確に実施し速やかに遺族に引き渡せるような体制を整えることが求められている。さらに、自治体によっては大規模災害時の応援協定を葬祭関係の団体との間で締結している。全国霊柩自動車協会とは多数の遺体を緊急輸送する協定、全日本葬祭業協同組合連合会や全日本冠婚葬祭互助協会とは棺などの葬祭用品の供給協力の協定を締結するなどの事例がある。
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