進路情報の不足
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/27 05:59 UTC 版)
「年齢主義と課程主義」の記事における「進路情報の不足」の解説
学習者にとっても情報不足は深刻である。日本では教育制度の基礎的な情報は意識的に入手しようとしなければほとんど手に入らず、かなり熱意を持って調べようとしても、特に在学年齢に関する情報は非常に入手困難であるため、ほとんどの人が在学年齢に関して正しい知識を持っていない。そのため、単なる社会通念と自分の学校体験でしか、学校制度に対する認識・判断を持てなくなっている。学校選びの際の判断は、こういった「多数派における常識」のみで成り立っているような側面があるため、少数派は情報不足に直面してしまい、一般の常識では判断できず、さりとて情報もないため混乱してしまう。例えば、一部の高等学校では入学年齢に上限があるということは、一般には知られておらず、直接募集要項を読むまで分からない場合が多い。しかしながらこれとは全く逆に、「高校(特に全日制)は年齢が高いと入学できない」という偽情報がまことしやかに語られたりする場合もある。このように、正確な情報が不足しているため、正反対の誤った情報が流通しているようなケースもある。小中学校においてはさらに複雑であり、法律上は在学年齢に上限がないので高年齢者の入学は認められているものの、実際の運用では不文律として年齢相当学年を外れる生徒が所属することはあまりない。このように、教育に関する法令や公式資料を読んだだけでは実際の取り扱いは理解することができない。しかし、夜間中学校では全員が学齢超過者であるという例もあり、また一部の私立中学校では最低年齢よりも数歳年長でも入学可能であるなどの例もあり、必ずしも年齢主義一辺倒ではない。このように、「年齢上限が全くない」という考え方も誤りであり、また「学齢超過者が所属できない」という考え方も誤りである。しかし一般にはそういったことは知られておらず、考える機会すら与えられないまま、ほとんどの学齢超過者は中学校に行こうと考えることはないし、18歳を超えた人が高校に行こうと考えることも少ない。 これらのことは書籍や雑誌やウェブサイトでも同じである。一般の受験関連書籍や受験情報誌や受験情報サイト(以下、受験情報媒体と表記)は、高校までの学校については最低年齢者の受験を前提としており、年齢が高い受験生についてはほとんど触れていない。例えば、もともと高校は高年齢者が入学することを十分に許容している制度であり、社会通念でも高年齢者が在学することは理解されているにもかかわらず、一般的な受験情報媒体には、年齢が高いと入学できなくなる場合があるとは書かれておらず、最低年齢の受験生を対象にしている媒体なのだということを、社会通念で判断するしかない。このように、多数派以外は情報が著しく不足しているため、年齢制限に気づかない場合が多い。また公立高校でも年齢や中卒後期間によって調査書の取り扱いなどが変わるが、こういったこともほとんどの受験情報媒体には書かれず、教育委員会の公式情報を見たり、各私立高校の募集要項を一校ずつ見たりするしかない。中学受験においては、もはやほとんどの受験情報媒体は高年齢者の受験を無視しており、資料によっては例外的に一部の中学校の帰国生徒入試の受験可能年齢が書かれているくらいである。 また、一般的な公立の小中学校においてはさらに情報不足が顕著であり、夜間中学や選抜のある併設型中学校では入学可能な年齢または学歴が明示されていることが多いが、そうではない大多数の無選抜の全日制の中学校や小学校では、学校や教育委員会の公式サイトなどでも入学資格がまったく明示されていない場合がほとんどである。これはそれらの学校が義務教育の実施校としての役割が強いことから、学齢簿に登録されている学齢期の子女を自動的に入学させる場合がほとんどであり、任意で入学を希望する人を想定していないという事も一因である(「就学事務」の記事を参照)。そして実際に何歳の人が入学可能であるのかは、教育委員会の判断を待つしかなく、きわめて曖昧である。
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