農地利用のモデル:チューネンの輪
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「ヨハン・ハインリヒ・フォン・チューネン」の記事における「農地利用のモデル:チューネンの輪」の解説
彼の「孤立国」の理論の中で、彼はアダム・スミスの「経済人」、即ち農民は彼の農場から上がる利益(「経済地代」)を最大化することを期待する、という着想から出発した。チューネンは地主として、そのような収益は土地の表面の最適な利用法と輸送費とに依存することを知っていた。利益に対するこの2つの変数の影響に専念するとき、他の要因を取り除くことは、均質な--そして孤立した--国、即ち中心にあるただ1つの支配的な市場を持った、国際関係の無い、円形の、全く拡大することの無い平面に帰着する。穀物は、固定した市場価格を持つ唯一の農産物である。周囲の田園地帯の経済は、各産業がそれによって最適な利益をもたらすようなやり方による経済行動に応じて再配置されなければならない。 この着想のもとで、工業化の前に作られたチューネンの農地モデルは、以下の単純化の仮定を設けた: 都市は「孤立国」の中央にある。都市では製品を固定された価格で販売する。 孤立国は荒地によって囲まれている。 土地は完全に平坦であり、川や山が無い。 地質や気候は一貫している。 孤立国には道路は存在しない。農民は牛車を用いて、自分達の生産した商品を農場から中央にある都市へ向かって直線的に輸送する。 農民は合理的に振る舞うことで、自らの利潤、すなわち総収入から輸送費と農場への地代の支払及び生産自体の費用を取り除いた額を最大にする。 このとき、ある土地の利用法は、市場への輸送費と、農民が支払いうる地代(これは収穫によって決定されるが、ここでは場所に関わらず一定とする)との関数によって表現される。 農場から市場への輸送費は市場からの距離および生産物の重量に正比例する。一方で商品を販売した時に農民が支払い得る地代は生産された場所にかかわらず一定であるから、同じ作物を1単位面積の農場から生産したときの利潤は市場からの距離の増加につれて減少するであろう。 彼の分析では、こうした仮定のもとで行われる孤立国での農業活動は、都市を中心とした4つの同心円、いわゆるチューネンの輪で表されることを明らかにした。 1. 都市に隣接した酪農業および集約農場。野菜、果物、牛乳やその他の乳製品は市場で速やかに取引を行わなければならないため、これらは都市に隣接して生産されるだろう。 2. 材木や薪は、燃料や建築資材のために、第2の輪の中で生産されるだろう。木材は暖房や調理の燃料のために非常に重要だが、非常に重く、輸送が難しいため、都市に近接したところに位置する。 3. 第3の帯域では、穀物のような広範囲の畑作物から成る。穀物は乳製品より長持ちし、燃料より遥かに軽く、輸送費を減少させるため、都市からより遠い所に位置することができる。 4. 牧場は最後の輪に位置する。動物は自己輸送できるため、都市から遠くても飼育することができる。動物は、販売や屠殺のために中央の都市まで歩くことができる。 5. 第4の輪の外には荒地が横たわるが、これは、いかなる種類の農業生産にとっても中央の都市からの距離が大き過ぎる。 チューネンの輪は、産業革命が地面の上のパターンを汚す前の欧州の経済史と欧州の植民地主義を明らかにした、フェルナン・ブローデルの『文明と資本主義』のような経済史に対して特に有用であることを示した。
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