資本市場への影響、及び問題の本質
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/11 14:15 UTC 版)
「サブプライムローン」の記事における「資本市場への影響、及び問題の本質」の解説
サブプライム問題の背景として論じられる幾つかの要素は、必ずしも本現象の直接的な要因とは言えないものもある。例えば変動金利型ローンは、銀行等の住宅ローン債権者にとって元来管理が難しかった金利変動リスクを、デュレーション(債権キャッシュフローの平均回収期間)の短期化を通じてより効率的に管理する有効なツールであり、サブプライム・ビジネス固有の金融商品ではない。また、サブプライム層に対する融資も、(強制的な貸付け等、一部に指摘されている様な倫理的に問題のあるケースを除き)借り手の信用力がローン金利の高低等によって適切に調整・吸収されている限りは問題ない。問題となるのは、あくまで債権者側が従来見積もっていた様な債務不履行確率(及びそれに基づく貸付金利の設定)以上に実際の債務不履行事象が発生する等の場合であり、また、その様なアウトライヤーイベント(想定外の事象)の発生するリスクはサブプライムローンに限らず、より信用力の高い貸し手に対するローン・ビジネス、或いは金融以外の様々な経済取引においても同様に起こり得ることである。 ベアー・スターンズやBNPパリバ等のヘッジファンドのニュースにしても、本質的には一部の金融機関が一部の金融取引でのアウトライヤーイベントの発生によって想定外の損失を被った、ということでしかない。ただし、2007年7月から同年8月にかけて、サブプライム問題を材料に世界中で株価の急落や信用市場の混乱、果ては連邦準備制度理事会による公定歩合の緊急引き下げといった事態にまで発展した最大の要因は、幾層もの証券化を通じて住宅ローン債権の本来のリスク特性が見えなくなっていた中で、市場参加者の多くがパニック的に極端なリスク回避行動に出たことにあると言える(2008年現在進行中の事象であり、解釈には注意が必要)。そもそもサブプライムローン証券市場自体が新興市場でありマーケットに厚みがないため、本来あるべき価格よりも当初は高価格で取引されていたが、その後買い手が引っ込んでしまい値段がつかない程暴落したというサブプライムローン証券市場の流動性の低さにも原因がある。サブプライムローン証券に手を出していた米国金融機関は時価会計が徹底していたため見かけ上の財務体質が悪化して株が叩き売られてしまった。リーマンブラザーズの破綻やAIG保険の公的資金投入など、2008年9月にアメリカ金融危機が発生。これにより、金融業界の大規模再編が進行中である。 しかし、市場参加者の中にはサブプライム問題を材料にした、極端な円高や住宅担保証券の下落で大きく利益を上げた者も多い。インスティチューショナル・インベスターズ・アルファ 誌の調査によると、2007年のヘッジファンド業界の報酬トップはポールソン・アンド・カンパニー(英語版)の創業者、ジョン・ポールソンの37億ドル(約3800億円)だった。ポールソンのヘッジファンドは住宅担保証券の下落で大きな利益を上げた。ポールソンは元ベアー・スターンズのマネージングディレクターである。
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