財産行為
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/18 14:21 UTC 版)
一般原則 未成年者は制限行為能力者である(20条1項)。したがって、未成年者が法律行為を行うには法定代理人の同意が必要である(5条1項本文)。法定代理人の同意を得ずに行った法律行為は取消すことができる(5条2項)。取消権者は未成年者本人やその代理人(未成年者の場合には親権者や未成年後見人等)など120条1項に定められる者である。制限行為能力者の取消においては制限行為能力者本人も取消権者とされているので(120条1項)、未成年者本人が単独で取消す場合にも取消は完全に効力を生じるのであって、取り消すことのできる取消となるわけではない。ただし、単に権利を得、または義務を免れる法律行為については法定代理人の同意は不要とされており、取消権者であっても制限行為能力者であることを理由として取消すことはできない(5条1項但書)。単に権利を得、または義務を免れる法律行為とは、未成年者が債権者から債務の免除を受ける場合などである。なお、未成年者による貸金の領収は未成年者の債権が失われるので法定代理人の同意が必要となる。取消権者により取り消された行為は初めから無効であったものとみなされるが(121条本文)、未成年者は制限行為能力者であるから、その行為によって現に利益を受けている限度において返還義務を負うことになる(121条但書)。取消権の詳細については取消#民法上の取消参照。 なお、未成年(成年擬制を除く)である時にした契約は、成年となった後、あるいは成年擬制を受けた後も引き続き取消権者の取消権が及ぶ。 随意財産の処分 民法第5条1項の規定にかかわらず、未成年者は、その法定代理人が目的を定めて処分を許した財産についてはその目的の範囲内において、目的を定めないで処分を許した財産については任意に処分できる(5条3項)。取引の相手方は法定代理人と未成年者の間の約定を覚知できないが、法定代理人と未成年者により、当該許された財産の処分範囲が立証されれば、取引の相手方は事実上反駁不能であり保護されない。お小遣いが毎月500円の子が為した通信販売契約を遡及して無効とした事例がある。 未成年者の営業の許可 未成年者の法定代理人は未成年者に対して一種あるいは数種の営業を許可することができ、この場合、許可された未成年者はその営業に関しては成年者と同一の行為能力を有する(6条第1項)。したがって、未成年者が許可された営業について行った法律行為は制限行為能力者であることを理由としては取り消すことができなくなる。 法定代理人は未成年者がその営業に堪えることができない事由があるときは営業の許可を取消・制限することができる(6条第2項)。この取消し・制限は将来に向かって許可の全部あるいは一部の効力を失わせる撤回であるから、その営業が許可されていた間に未成年者がなした営業行為を取り消すことはできない。 未成年者の営業の許可及びその取消し・制限につき、営業の内容が商業であるときは商法上・会社法上・商業登記法上の登記を要する(商法第5条など)この登記は、児童相談所ではなく法務局が受け付ける。営業の内容が商業でない場合には、許可や取消し・制限の公示の方法がないので善意の第三者にも対抗しうるものと解されている。
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