財産返還問題
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2019/03/15 08:20 UTC 版)
君主制廃止に伴ってオーストリア共和国に財産を没収されたのはハプスブルク家のみである。エステルハージ家やシュヴァルツェンベルク家(英語版)、リヒテンシュタイン家といった旧オーストリア貴族は、今なおオーストリア国内に広大な土地を所有している。ハプスブルク家だけが非常に不平等な扱いを受けていることは明白であり、オーストリア国民の中にはハプスブルク家への財産返還を支持する者もいるが、返還論者の間でもその立場は一定ではない。 そもそも財産没収そのものが不当だったという主張もあれば、第一次世界大戦の開戦責任が当時の皇帝フランツ・ヨーゼフ1世にあるとしても、開戦決定に関与していない者も含むハプスブルク一族全体に責任を負わせる形での財産没収は不当だったという主張もある。 ハプスブルク家から没収された財産は、第一次世界大戦による未亡人と孤児の救済を目的とする戦争被害者基金(ドイツ語版)に充てられた。このことから、(財産没収を是とするとしても)基金が解散した時点で返還すべきだったとの見解もあり、現在のハプスブルク家当主カールはこの立場である。 ハプスブルク法は道理に反しています。それについて他に言えることは何もありません。すべての権利が私たちから奪われました、私たちは財産を没収されてオーストリア国外に追放されました。私たちの資産は基金に入れられ、そしてそれは基金が解散した後で私たちに返還されるべきでした。しかし、それは決して起こりませんでした。 — カール・ハプスブルク=ロートリンゲン第一次世界大戦の開戦100周年である2014年、『ガーディアン』によるインタビューの際に ウルリッヒ・ハプスブルク=ロートリンゲンは、財産返還のほか、バイエルンの「ヴィッテルスバッハ家補償基金(ドイツ語版)」をモデルとする解決策について述べたことがある。当然ながらオーストリア国民の中には、財産返還は一切すべきでないという主張もある。 現代のハプスブルク家は、族内に大きな経済的格差を抱えており、一族の多くはそのことを不満に思っている。先述のように、トスカーナ系の一族にはハプスブルク法を早々に受諾する者が多かったため、その子孫は今日に至るまで多くの資産を保持している。歴史家カール・フォルセカ(ドイツ語版)の見積もりによれば、ハプスブルク家トスカーナ支流の総資産は1億ユーロ(2019年3月15日の為替レートで約126億円)である。 ハプスブルク家トスカーナ支流の今日の資産 パーセンベウーク城(ドイツ語版) カイザーヴィラ(ドイツ語版) ヴァルゼー城(ドイツ語版)
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