課税要件の認定
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/06/27 14:51 UTC 版)
厳格な事実認定の要請 税法の適用過程において、税務官庁の形式的裁量的判断が排除されなければならないという要請。合法性の原則の一部でもある。課税要件事実 課税要件における事実とは「課税要件に包摂されるべき事実(税法適用以前にすでに客観的に存在している個々の取引などの具体的事実)」を指す。所得税で言うと所得の発生となる事実(所得発生原因事実)。実定法上は「課税標準等又は税額等の計算の基礎となった事実」(国税通則法23条2項1号・71条1項2号など)が課税要件事実になる。 税制における事実認定には事実の探知だけでなく、法律行為・契約の解釈、公正妥当な会計処理(法人税法22条4項)、財産の評価も含む。法的実質主義 課税の基礎とされる私法上の法律関係において、私的自治の原則に従って形成された真実の法律関係を課税要件事実の実体・実質と捉える考え方。「外観と実体」「形式と実質」が食い違っている場合、「実体」「実質」によって事実認定が行われる。 実質と言っても、法律関係が事実である(仮装でない)ことを要求するにすぎず、法律関係と言う形式を要求するという点では形式主義である。事実認定の対象を形式にすることで、税務官庁の恣意的裁量を防ぎ、法律税法主義の持つ法的安定性・予測可能性を機能させることができる。 これに対応する考え方として、法律関係の経済的な動機・目的や成果を実態実質ととらえる経済的実質主義がある。これは経済的概念であり、担税力の負担に応じた公平負担の建前には適合する。しかし、契約当事者の選択した法律関係を否定して課税することに繋がり、税務官庁の裁量を拡大しすぎるため租税法律主義に反する。 「二段階事実認定」 課税要件の事実認定において、第1に課税基礎となる司法上の法律関係を私法観点から法律行為・解釈の解釈により認定し、第2にそれを課税要件として受け入れる、と言う2段階の事実認定構造のこと。私法の法律関係は私法の観点で認定し、そこに税法独自の判断を排除する方法。 私法上の法律関係に税法の概念を混入させると、税収確保・公平負担を優先し真の法律関係から離れて課税することに繋がるおそれがある。 私法関係準拠主義 私法上の行為に基づいて現実に発生している経済的成果を私法上の法律関係によって把握するという考え方。法的実質主義の基礎。税法の根本的・構造的規律。 自由主義に基づく憲法を持つ国では、私法に従った自由主義経済(私的自治の原則)による経済的成果が予定される。この経済的成果には私法上の法律関係によって把握され、課税される。 日本では、ここで言う私法は日本の私法を指し、外国私法に準拠した行為・事実も税法上は日本の私法によって把握される(内国私法基準説)。 疑わしきは納税者の利益に 租税負担公平の観点から、課税要件事実を会計帳簿などから直接認定できない場合(疑わしい場合)、間接資料によって課税要件を認定して課税すること(類推課税)が明文上認められることがある(所得税法156条、法人税法131条)。また、判例では明文の規定がない類推課税を認めている。一方で明文規定がない類推課税は「疑わしきは納税者の利益に」の原則に反しない場合に限るとする見方もある。
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