訴訟の準備
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/11/04 08:49 UTC 版)
「中国の知的財産権問題」の記事における「訴訟の準備」の解説
中国における特許権侵害への対応は、<1>調査<2>証拠収集<3>エンフォースメント(訴訟提起/行政調停申立て)という枠組みが重要である。中国特許権侵害訴訟においては、原則として裁判所(人民法院)により指定される証拠提出期間内にすべての証拠資料を提出しなければならない。 このため、権利侵害の発見後、まず侵害主体に関する情報、侵害行為の具体的内容、証拠の有無などを調査・把握してから、具体的な対応方針を決定し、それに即した証拠を十分に収拾する必要がある。 この点、日本企業・外国企業において、<1>調査<2>証拠収集の重要性を十分理解しなかったために、結果として証拠不十分なまま権利行使に踏み切ってしまっているケースも散見される。 まず、侵害業者および被疑侵害品に関する調査を専門調査会社なども活用しつつ実施し、侵害行為の有無、具体的内容、程度、侵害業者の実態、規模、関連特許、被疑侵害品ないしこれを含む完成品などの流通状況などの情報を収集する必要がある。 これにより被害規模、請求すべき損害賠償額や、侵害証拠の所在地、入手ルートなどの検討が可能となる。またこの調査は、管轄裁判所の選択に影響し、これが勝敗に影響してくることがあり、重要なステップである。 次に、中国では訴訟において証拠の真実性が争われることが極めて多く、実際に虚偽の証拠が提出されることもあるので、特許権侵害訴訟においても、あらかじめ公証認証手続きを経て証拠化しておく必要がある。このプロセスも提訴準備として重要である。中華人民共和国民事訴訟法においては、権利侵害に関する訴訟は、被告住所地または侵害行為地の裁判所の管轄となる(民事訴訟法第28条)。地方に所在する製造業者によって特許権被疑侵害品が製造された場合は、その業者の所在地である地方の裁判所に訴訟を提起することも可能である。 しかし地方の裁判所の審理水準は、北京や上海などに比べるとばらつきがあり、いまだ地方保護主義(対象地域の地方政府が、同地域の企業を保護する目的で、不当に同企業にとって有利な措置を講ずること)が根強く残ることもあるので、可能な限り外国企業が訴訟当事者になることが多い北京や上海などの大都市の裁判所を選択することが望ましい。この点、特許権侵害については、被疑侵害品の製造・販売などの実施地が権利侵害行為地とされ、また製造業者と販売業者を共同被告として訴える場合には、販売地の裁判所が管轄権を有することとされている(最高人民法院による専利紛争案件真審理の法律適用問題に関する若干規定第5条・第6条)。 したがって被疑侵害品製造業者だけでは、都市部の裁判所を選択できない場合には、大都市の被疑侵害品販売業者を探し出し、公証購入して、当該販売業者の販売行為を証拠化し、その上で製造業者と販売業者を共同被告として提訴するのが、実務上の定石となっている。
※この「訴訟の準備」の解説は、「中国の知的財産権問題」の解説の一部です。
「訴訟の準備」を含む「中国の知的財産権問題」の記事については、「中国の知的財産権問題」の概要を参照ください。
- 訴訟の準備のページへのリンク