計画完了へ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/06/14 21:05 UTC 版)
「飛騨川流域一貫開発計画」の記事における「計画完了へ」の解説
馬瀬川第一・第二発電所の完成によって、大規模なダムによる水力発電開発は峠を越える。1977年(昭和52年)より水路式発電所である中呂発電所(出力1万3300キロワット)の建設が開始されたが、この発電所は瀬戸第一発電所や馬瀬川第一・第二発電所の放流水を有効に活用して発電に利用するため建設されたものである。馬瀬川と飛騨川を結ぶ長さ6.6キロメートルのトンネル工事は阿寺断層に阻まれ難航したが、翌1978年(昭和53年)に運転を開始した。1983年(昭和58年)には支流の小坂川に小坂川発電所(出力2万1300キロワット)が完成するが、この小坂川発電所完成を以って、新規の水力発電所建設は終了し、以後は既に建設された水力発電所の再開発へと軸足を移す。 大正時代に建設された瀬戸第一発電所などの水力発電施設は長年にわたる使用によって老朽化が進んでおり、またそれ以降に完成した水力発電所との連携を図る上では施設を改築することでより効率的な発電を行うことが可能となる。1982年(昭和57年)に七宗発電所の近傍に新七宗発電所(出力2万キロワット)が、1987年(昭和62年)には上麻生発電所の隣に新上麻生発電所(出力6万1400キロワット)が完成し、増え続ける電力需要に対応している。また2003年(平成15年)には瀬戸第一・第二、下原、大船渡(金山発電所を改称)、七宗、佐見川の各発電所の設備が改修されている。 現在飛騨川流域に存在する水力発電所は23箇所に上り、その総出力は114万3530キロワットに達し大規模新鋭火力発電所1基に匹敵する。飛騨川流域が持つ包蔵水力は1956年(昭和31年)に通商産業省が実施した第四次水力開発調査によれば116万7560キロワットあり、新上麻生発電所完成とその後の発電所改修により調査で示された包蔵水力の97.9パーセントが開発され、ほぼ水力資源は開発され尽くしている。従って現時点で新規に開発が予定されている水力発電所計画は存在しない。また支流の佐見川に高さ117.0メートルの佐見川ダムを建設し出力1万5700キロワットを発電する新佐見川発電所計画を始め、新朝日・新東上田・濁河・小原・新名倉・中麻生などの水力発電所計画があったが、費用対効果や地元の了承が得られないなどの理由で構想のみ、あるいは計画が中止している。飛騨川流域一貫開発計画は所定の目的がほぼ達成され、新上麻生発電所の運転開始を以って、事実上完了した。 また、険阻な飛騨川の地形や厳しい気候環境の中で実施された大規模な開発計画であり、この計画遂行により合計138名の労務者が労働災害で殉職している。名古屋市など東海地方の発展に寄与した計画の影で、飛騨川に命を散らした人々がいたことは、記憶に留めておく事実である。
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