視神経脊髄炎の臨床像
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/13 09:12 UTC 版)
「視神経脊髄炎」の記事における「視神経脊髄炎の臨床像」の解説
多発性硬化症(MS)視神経脊髄炎(NMO)NMO/MS全体からみた頻度 60% 30% 男女比 1:3 1:10 発症年齢 20~30歳代で好発、50歳以上はまれ 30~40歳代で好発、高齢発症有り 人種差、地域差 白人に多い なし(アジア、ラテンアメリカに多い傾向) 視力障害の特徴 中心暗点 両側性障害、重症、水平性半盲 脊髄障害の特徴 片側の感覚障害、運動障害 長大病変、横断性障害、強いしびれ、痛み 大脳病変の特徴 記憶障害など様々の症状 吃逆、嘔吐、視床下部障害、過睡眠、意識障害 主な合併症 なし シェーグレン症候群、橋本病など膠原病 血清抗AQP4抗体 陰性 陽性 髄液オリゴクローナルバンド 約80%で陽性 大抵陰性(約10%で陽性) 再発予防治療 ベースライン薬:IFNβ-1a、IFNβ-1b、グラチラマー酢酸塩、フマル酸ジメチルセカンドライン:フィンゴモリド、ナタリズマブ ファーストライン:経口ステロイド薬、免疫抑制剤セカンドライン:リツキシマブ(保険適用外) 疫学 NMOの発症年齢はMSよりも10歳ほど遅く30~40歳代が多い。50歳以上の初発例も珍しくない。シェーグレン症候群、全身性エリテマトーデス、橋本病など自己免疫病を合併する例が多い。再発頻度は年に1~2回でMSよりも多い。 妊娠 MSでは妊娠中は再発頻度が低下すると考えられているがNMOではむしろ再発しやすくなるという報告がある。 視神経炎 NMOの初発症状では視力障害が多い。MSでは片側性の視力障害が多いのに対してNMOでは両側性の視力障害を呈することが多い。視野異常としてはMSではよくみられる中心暗点に加えてNMOでは両耳側半盲(視交叉病変)、非調和性同名半盲(視索病変)、水平性半盲などがみられることが特徴である。 脊髄炎 NMOの脊髄炎はMRIで3椎体以上におよぶ中心灰白質を侵す長い横断性脊髄炎を呈するのが特徴である。 大脳病変 当初、NMOでは大脳病変は認められないとされていたが、その後大脳病変はまれではないことが明らかになった。大脳基底核、視床下部、脳幹などはAQP4が豊富に発現している部位でありNMOでは病変を認めることも多い。これらの部位を反映して難治性吃逆、嘔吐、内分泌異常、過睡眠、意識障害といった症状示すことがある。 MRI 多発性硬化症(MS)視神経脊髄炎(NMO)大脳病変 側脳室から垂直方向の半卵形病変、皮質下U-fiber病変など 第三、第四脳室周囲、脳幹(特に延髄背内側)などに分布 脳梁病変 10mm以下で浮腫なし 10mm以上で浮腫あり(大理石様パターン) 造影効果 オープンリング状 雲状 視神経病変 片側の視神経炎 両側性、視神経腫脹、視交叉病変、視索病変 脊髄病変 長さは通常2椎体未満 3椎体以上の長大病変、横断面で脊髄中心部の分布 視神経の評価としてはSTIR法が適切である。脊髄では3椎体以上の長い病変で横断面では脊髄中心部の病変が特徴的である。NMOの大脳病変の好発部位はAQP4が豊富に発現している第三脳室周囲、第四脳室周囲、中脳水道の周囲、延髄背内側、視床下部などで多い。またMSと比べると左右対称で広範な病巣をきたす傾向がある。MSで特徴的な側脳室近傍や脳梁病変を認めるNMOも存在するため鑑別は困難であるが病巣の大きさがMSでは10mm未満と小さく浮腫も伴わないがNMOの脳梁病変は10mm以上で大きく浮腫を伴いFLAIR画像では病変の周囲が高信号で内部が低信号を呈する大理石パターンを認める。造影MRIではMSはオープンリング状の造影効果をよくみられるが、NMOでは雲状造影効果を認めることが特徴であると報告されている。NMOは脊髄にはリング状増強効果を伴う病変をしばしば認める。 髄液検査 MSで高頻度に認めるオリゴクローナルバンドが検出されることは少ない。髄液一般所見では蛋白やIgGインデックス上昇がみられることがある。また髄液細胞数も増加して多形核球優位のこともある。NMOでは血清中に抗AQP4抗体をみとめるが髄液中で認められることは少ない。髄液中のGFAP(glial fibrillary protein)がNMOの臨床所見と相関すると報告されている。視神経脊髄炎で髄液糖が低下し、髄液細胞数が増加したため細菌性髄膜炎と鑑別が必要となった報告がある。血液脳関門の破綻による糖輸送障害や髄液細胞数の増加による髄液糖の消費亢進によって髄液糖低下が起こると考えられている。
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