虚血性視神経症
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/03/25 03:35 UTC 版)
虚血性視神経症には動脈炎性前部虚血性視神経症(A-AION)と非動脈炎性前部虚血性視神経症(NA-AION)と後部虚血性視神経症(PION)がある。AIONでは主に短後毛様動脈の閉塞により視神経乳頭が障害されPIONでは視神経鞘軟膜毛細血管叢由来の穿通枝の閉塞により球後視神経が障害される。 動脈炎性前部虚血性視神経症(A-AION) A-AIONは主に巨細胞性動脈炎など血管炎に関連した前部虚血性視神経症である。過去に複視や一過性黒内障を自覚しているケースが多い。60歳未満の発症は非常に稀であり70〜80歳代の高齢者に片側の高度視力障害で急激に発症する。やや女性に多くみられ、非動脈炎性のものに比べると視力障害は重篤である。同時に同側または対側の側頭動脈領域の自発痛、圧痛、時に激しい頭痛や顎の運動時の痛みを伴う。患側はRAPD陽性となる。視神経乳頭は境界不鮮明で高度浮腫状、色調は蒼白(蒼白浮腫)である。線状あるいは火炎状出血を伴うことが多い。対側の乳頭は小乳頭ではなく、形状も正常で乳頭周囲に火炎状小出血を認めることもない。時に網膜中心動脈閉塞として発症する。赤沈値は著明に亢進する。確定診断は側頭動脈の生検である。 非動脈炎性前部虚血性視神経症(NA-AION) 全身あるいは局所の循環不全を起こす基礎疾患のため、短後毛様動脈の虚血(血管攣縮)が強膜篩状板近傍に生じ乳頭が蒼白浮腫を呈するのがNA-AIONと考えられている。突然発症する変速の視力・視野障害で数時間から数日で症状は完成する。視機能障害は起床時にみられることが多い。A-AIONや視神経炎と異なり頭痛や眼球運動痛を伴うことはない。視力障害の程度もA-AIONと比べると軽度である。視神経乳頭は境界不明瞭で浮腫状、色調は蒼白(蒼白浮腫)であり、上半分、下半分のように局所性に主張することが多い。乳頭周囲に火炎状小出血をしばしば認める。対側の小乳頭を高頻度に認める。蛍光眼底造影では乳頭からの漏出がみられ、脈絡膜背景蛍光の一部または前部の充盈遅延を認める。標準的治療法はなくビタミンB12製剤の投与などが行われる。 臨床的特徴A-AIONNA-AION年齢 65歳以上 45〜70歳 リウマチ性多発筋痛症 50%以上に出現 なし 赤沈、CRP 80%以上で亢進 なし 動脈硬化危険因子 年齢相応 多い 両眼発症 50%にのぼり、週単位で発症する 20%にのぼるが6ヶ月以内は稀 視力低下の重篤度 強い 様々、A-AIONよりは軽度 検眼鏡的所見 強い蒼白浮腫、綿花様白斑 A-AIONより軽度の蒼白浮腫、綿花様白斑なし、対側は小乳頭 蛍光眼底造影での脈絡膜血流 顕著な低下 正常もしくは低下 眼窩部カラードプラ像 減少 正常 側頭動脈生検 95%で陽性、偽陽性はほとんどない 陰性 ステロイド治療の効果 リウマチ性多発筋痛症状は迅速な改善、急性期蛋白の正常化 なし
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