虚血性心疾患の心電図
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/06 01:53 UTC 版)
虚血性心疾患の所見としては ST上昇や異常Q波が特徴的であり、これがどの誘導肢に現れるかで梗塞部位や責任血管部位の診断が行える。もちろんミラーイメージの ST低下も含む。ST上昇を起こす誘導は異常Q波といった特徴的な心電図変化をおこすため虚血部位、責任血管の同定を行う上では非常に有用である。特に心筋梗塞の場合は特徴的な経時的変化が知られている。発症直後はT波の増高が認められる(hyper acute T )。高カリウム血症のT波の増高と異なり左右が非対称であることが多い。6~12時間経過するとST上昇や異常Q波が出現する。2~3日経過するとSTが若干下降しだしT波が陰転してくる。1~4週間経過すると冠性T波という陰性T波と異常Q波が認められる。1年以上経過すると最後まで残るのは異常Q波だけである場合が多い。T波は数か月から数年で陽性T波に戻ることが多いが長年冠性T波のままのこともある。心内膜下梗塞ではST-T変化が出現しにくいこともあり非Q波梗塞の形をとることもあり心筋梗塞の心電図変化は非典型例が多い。生化学所見、リスクファクター。臨床所見も参考にしながら診断を行う。心筋梗塞のごく初期は心電図変化を認めないこともあり心電図変化がなくとも心筋梗塞が否定できないため、疑わしければ繰り返し心電図をとり、心臓超音波検査で壁の異常運動を調べることが重要である。なお、後壁梗塞ではミラーイメージとしてV1誘導、V2誘導のR波の増高が認められ、回転の異常が生じることが知られている。特徴的なST上昇や異常Q波だけでは梗塞部位の診断が難航することがある。 障害部位ST上昇誘導ST下降誘導(Reciprocal image)責任血管中隔(Septal) V1, V2 (-) 左冠動脈前下行枝(LAD) 前壁(Anterior) V3, V4 (-) 左冠動脈前下行枝(LAD) 前壁中隔(Anteroseptal) V1, V2, V3, V4 (-) 左冠動脈前下行枝(LAD) 前壁側壁(Anterolateral) V3, V4, V5, V6, I, aVL II, III, aVF 左冠動脈前下行枝(LAD)、左冠動脈回旋枝(LCX)、左冠動脈主幹部(LMT) 広汎前壁(Extensive anterior) V1, V2, V3, V4, V5, V6, I, aVL II, III, aVF 左冠動脈(LCA) 下壁(Inferior) II, III, aVF I, aVL 右冠動脈(RCA)・左冠動脈回旋枝(LCX) 側壁(Lateral) I, aVL, V5, V6 II, III, aVF 左冠動脈回旋枝(LCX)、左冠動脈主幹部(LMT) 後壁(Posterior) V7, V8, V9 V1, V2, V3, V4 後下行枝(PDA) 右室梗塞(RV) II, III, aVF, V1, V4R I, aVL 右冠動脈(RCA) 参考となる心筋梗塞の生化学所見を纏める。 WBCCK-MBミオグロビンCKトロポニンTミオシン軽鎖IASTLDH1,2CRPESR上昇時期 2~3h 2~3h 2~3h 3~4h 3~4h 4~6h 6~12h 12~24h 1~3day 2~3day 正常化 7day 3~7day 7~10day 3~7day 14~21day 7~14day 3~7day 8~14day 21day 5~6week
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