菊花賞制覇 - 年度代表馬となる
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/09 04:49 UTC 版)
「ビワハヤヒデ」の記事における「菊花賞制覇 - 年度代表馬となる」の解説
日本ダービーの後、他の有力馬は夏の間の休養に入ったが、ビワハヤヒデは栗東に残り調教が続けられた。秋になって本格的な調教が始まるに当たり、浜田は切れ味に課題が残るビワハヤヒデに対し、ウイニングチケットやナリタタイシンに負けない瞬発力を身に付けさせようとハードトレーニングを行うことを決意。そこで浜田は、ビワハヤヒデが惜敗した皐月賞・東京優駿を前年無敗で優勝し、この年の5月に亡くなった戸山為夫の徹底した坂路調教で鍛えられたことで知られるミホノブルボンに倣い、従来の坂路2本を週6日というスケジュールを水・金・日曜日は3本に増やすというものに変更した。当初ビワハヤヒデは苦しがる様子を見せ、3本追いの3本目には馬場入りを嫌がり動かなくなってしまうこともあったものの、やがて調教タイムが如実に向上するなど成果が現れていった。結果的にこのハードトレーニングが功を奏し、ビワハヤヒデはがっしりとした馬体に成長した。その一方で、ビワハヤヒデは物音に対して臆病な面があったことから耳覆いのついた赤いメンコ(覆面)を着用していたが、浜田と岡部の話し合いによって「外部との接触を多く持たせることによって、勝負に敏感に反応させようという狙い」から外されることが決まり、耳の部分に徐々に穴を開けていき、2週間で完全に取り外された。 デビュー以来初めて素顔での出走となった秋初戦・神戸新聞杯(菊花賞トライアル)では、ナリタタイシン、ウイニングチケットが出走しなかったため、単勝オッズ1.6倍で1番人気に支持された。レースは好スタートを切って先頭に立ったネーハイシーザーの2番手後ろにつけ、直線に入ると岡部の鞭に好反応を見せて残り150m地点でネーハイシーザーを交わし、同馬に1馬身半差をつけて勝利した。 11月7日に迎えた三冠最終戦の菊花賞では、春の「三強」のうちナリタタイシンが前哨戦を前に発症した肺出血の影響から不調で、京都新聞杯を勝ってここに臨んだウイニングチケットとビワハヤヒデの一騎討ちと見られた。当日は初めてウイニングチケットを抑えての1番人気に支持される。レースでは道中は3番手を進み、第3コーナーを回った辺りから前方への進出を開始し、4コーナーから最後の直線に入ったところで先頭に立つと、そのまま加速して後続を突き放し、2着のステージチャンプに5馬身差をつけて優勝。クラシック最後の一冠を獲得した。走破タイム3分4秒7は前年の勝ち馬ライスシャワーが記録した芝3000メートルの日本レコードを0秒2更新し、上がりタイムの34秒5は当時の菊花賞史上最速の数値だった。ビワハヤヒデと共に、浜田・中島もこれがGI競走初制覇であった。浜田は後にこの菊花賞について、ビワハヤヒデが1番人気に支持されていることを聞いた時点で「勝てる」と確信したといい、「涙は出ませんでした。とにかくうれしかった。やるべきことはすべてやって、その結果が出たわけですから」と振り返っている。 年末にはグランプリ競走・有馬記念にファン投票第1位に選出されて出走。8頭のGI優勝馬が揃ったなか、ビワハヤヒデは初めての古馬(5歳以上馬)との対戦ながら1番人気に支持された。レースでは菊花賞と同様に最後の直線入口で先頭に立ったが、前年の有馬記念から1年ぶりの出走であったトウカイテイオー(田原成貴騎乗)に残り200メートル付近でかわされ、半馬身差の2着となった。岡部はトウカイテイオーの前年のシーズンにおいて主戦騎手を務めており、振った馬に敗れる結果となったことについて「自分の思い通りの競馬ができたし、勝ちパターンに持ちこめたが、直線で横を見たらトウカイテイオーが凄い手応えで並んできた。テイオーに負けたのは仕方ない。来年はお返ししないと」と語った。浜田は後に有馬記念を振り返った際、「まいったよ。田原騎手にうまく乗られた。馬がどうのこうのとかいうのじゃない。ハヤヒデの通ったところを抜けてこられたんだ。ビワハヤヒデの後ろを行けば、前が開くのはわかってたからね」とトウカイテイオーと田原を称えつつも、2着に敗れたことについて、「相手関係から勝てると思った」と自信を持っていたもののその相手を絞り切れなかったこと、また関東遠征のレースになると突き放す爆発力がなくなるというビワハヤヒデの内面的な点を敗因に挙げた。 翌1月に発表された当年のJRA賞表彰では、菊花賞のタイトルに加えてGI競走における3度の2着という安定した成績が評価され、安田記念、天皇賞(秋)を制したヤマニンゼファーを抑えての年度代表馬に選出された。一方、この結果には「この程度の成績で年度代表馬か」という旨の批判的な意見もあった。なお、最優秀3歳牡馬には朝日杯3歳ステークスに優勝した半弟のナリタブライアンが選出された。
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