英国戦艦との砲撃戦
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/28 01:04 UTC 版)
「ビスマルク (戦艦)」の記事における「英国戦艦との砲撃戦」の解説
低速での航行を余儀なくされたビスマルクは、5月27日朝、戦艦キング・ジョージ5世およびロドニー、重巡洋艦ノーフォークおよびドーセットシャーに捕捉された。 午前8時47分、距離22kmで砲撃戦が始まった。午前9時頃、ビスマルクは、前部に受けたロドニーの1弾により、1番主砲塔と2番主砲塔が同時に旋回不能・砲撃不能となった。またノーフォークから発射された1弾により、前部艦橋の光学測距儀が破壊された。 キング・ジョージ5世は装備されたばかりの探索用レーダーを射撃用に転用して砲撃を行い、9時頃にビスマルクの3番主砲搭に命中弾を与えた。この砲弾は3番主砲搭の装甲を貫徹しなかったが、同砲塔は砲撃不能となった。キング・ジョージ5世は、その後この艦特有の砲塔故障に悩まされ、効果的な砲撃が困難となった。 ビスマルクの残る4番主砲塔も、9時30分頃にロドニーからの砲弾によって砲塔バーベット部分が貫通されて火災が発生した。4番砲塔の火薬庫には緊急注水が行われ、4番主砲塔も砲撃不能となった。 ビスマルクは戦闘開始から43分で全主砲が砲撃不能となり、接近したイギリス艦艇から至近距離での砲撃を浴びた。ロドニーはビスマルクに接近して魚雷攻撃も行い、水中発射管から24.5インチ魚雷を合計12発発射して1本を命中させた。これによりロドニーは大戦中、戦艦同士の戦いで魚雷を命中させた唯一の戦艦という記録を残した。ロドニーは直射距離(約3,000m)まで接近してマイナス仰角で砲弾を浴びせた。 88分間の戦闘で、ビスマルクは約400発の砲弾を受けた。戦闘開始早々に砲撃不能となっていた1番・2番主砲塔も直撃弾で破壊された。艦の至る所で火災が発生し、ビスマルクは黒煙に包まれた。キング・ジョージ5世は故障した砲身を修理しつつ、レーダー側距を併用して射撃を継続したが、一時は全主砲が使用不能となり副砲のみで射撃を行った時期もあった。何にせよ、フッドの復讐のためイギリス海軍はビスマルクをなぶり殺しにし、ビスマルクは浮かぶ廃墟と化した。大損傷にも関わらずビスマルクが砲撃で沈没に至らなかったのは、イギリス艦隊が接近して砲撃をしたために射撃が水平射撃になってしまい、ビスマルクの喫水下区画を破壊することができず浸水被害が軽微であったためと言われる。 午前10時頃、ビスマルク副長のエールス中佐がビスマルクの自沈を命じたとされている。右舷と中央の機関区ではキングストン弁が開かれ、復水機には爆薬が設置された。また艦内の全ポンプが排水操作から注水操作に切り替えられた。左舷の機関区は浸水が激しく、キングストン弁の開放作業は実施されなかった。エールス副長はその後砲撃によって戦死した。午前10時15分頃からビスマルクの乗員が脱出を始めた。また英戦艦についても燃料が残り少なくなったので、攻撃中止の命令が下り戦場からの離脱を開始した。ビスマルクは大きく左に傾きながらまだ微速で動いていたので、海面には脱出したビスマルク乗員が点々と取り残されることになった。午前10時20分過ぎに英戦艦は射程外となったために、砲撃を中止した。
※この「英国戦艦との砲撃戦」の解説は、「ビスマルク (戦艦)」の解説の一部です。
「英国戦艦との砲撃戦」を含む「ビスマルク (戦艦)」の記事については、「ビスマルク (戦艦)」の概要を参照ください。
- 英国戦艦との砲撃戦のページへのリンク