船員保険特有の給付
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/02 02:43 UTC 版)
船員保険の保険給付は、基本的には健康保険と同内容、労災保険の上乗せ給付として行われる(第29条)。船員保険独自の給付内容としては以下のものがある。 療養の給付 健康保険における給付に加え、「自宅以外の場所における療養に必要な宿泊及び食事の支給」が行われる(第53条1項)。「自宅以外の場所における療養に必要な宿泊及び食事の支給」については、職務外の事由だけでなく、職務上又は通勤による疾病又は負傷についても給付が行われるが(第53条4項)、披扶養者に対しては行われない(第76条1項)。1947年(昭和22年)の改正法施行により追加された給付で、船中で傷病となり自宅から遠く離れた港で下船した場合に、港近くの休療所から病院等に通う際の宿泊・食事の支給を保険給付として行うものである。陸上・航空交通が飛躍的に向上した近年では、下船地から直接帰宅するケースも多く、実務上はほとんど利用されていない。給付は保険医療機関・保険薬局のほか、船員保険の被保険者に対して診療又は調剤を行う病院若しくは診療所(船員病院や、船舶内の診療所等)又は薬局であって、協会が指定したもののうちから自己の選定するものから受けるものとし(第53条6項)、「自宅以外の場所における療養に必要な宿泊及び食事の支給」の給付は、協会の指定した施設(休療所)のうち、自己の選定するものから受けるものとする(第53条7項)。 傷病手当金 健康保険における「連続3日間の待期期間」要件が船員保険には設けられていない。したがって、労務に服することができなくなった初日から給付が行われる。また、健康保険では最長「1年6ヶ月」となっている支給期間は「3年」となっている(第69条)。 出産手当金 健康保険における「出産の日以前42日(多胎妊娠の場合は98日)」要件は、船員保険では「出産の日以前において船員法第87条の規定により職務に服さなかった期間」となる。船員法第87条は妊娠中の女子の使用を原則禁じているので、実際には妊娠が判明した初日から給付が行われる(第74条)。 行方不明手当金 被保険者が職務上の事由により1ヶ月以上行方不明になったとき、その被扶養者に対して、行方不明になった当時の本人の標準報酬日額相当を、行方不明になった日の翌日から3ヶ月間支給される(第93~95条)。ただし行方不明期間中に報酬が支払われる場合においては、その報酬の額の限度において行方不明手当金を支給しない(第96条)。 休業手当金 労災保険における休業(補償)給付では支給されない最初の3日間についても標準報酬日額の全額が支給される。4日目以降も所定の計算による額が休業(補償)給付に上乗せされる(第85条)。 障害年金・一時金・障害手当金、遺族年金・一時金 労災保険における各給付に加え、所定の計算による額が上乗せされる(第87~92条、第97~102条) 下船後の療養補償 乗船中に発生した職務外の傷病について、下船日から3ヶ月目の末日まで、自己負担なしで療養を受けることができる(第66条、船員法第89条2項)。医療機関に船舶所有者の証明を受けた療養補償証明書を提出することにより行う。「乗船中」には、乗船前や下船から再乗船までの間(雇入契約存続中に限る)であっても船員としての職務遂行性が認められるものを含む。 付加給付 協会は、政令で定めるところにより、健康保険の各給付に併せて、保険給付としてその他の給付(付加給付)を行うことができる(第30条)。現在は「葬祭料」「家族葬祭料」の上乗せ給付(被保険者本人の死亡の場合は資格喪失当時の標準報酬月額の2ヶ月分から葬祭料(原則5万円)の額を控除した額、被扶養者の死亡の場合は死亡当時の被保険者の標準報酬月額の2ヶ月分の70%相当額から、家族葬祭料(5万円)の額を控除した額)を行っている(施行令第2条)。
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