胃瘻に対する問題提起
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日本では終末期の認知症や老衰の人にも積極的に胃瘻がつくられるようになった。その多くはいわゆる寝たきりの高齢者である。その現状に対して、日本老年医学会は「高齢者の終末期の医療およびケアに関する立場表明2012」を発表した(2012年1月28日)。そのなかで、「胃瘻造設を含む経管栄養や、気管切開、人工呼吸器装着などの適応は、慎重に検討されるべきである。すなわち、何らかの治療が、患者本人の尊厳を損なったり苦痛を増大させたりする可能性があるときには、治療の差し控えや治療からの撤退も選択肢として考慮する必要がある。」と述べている。 2012年(平成24年)4月1日、「介護サービスの基盤強化のための介護保険法等の一部を改正する法律」(平成23年法律第72号)施行。それまで胃ろうによる栄養摂取は医療行為として医師(または医師の指示を受けた看護師等)のみに限られていたが、研修を受ければ介護士が「認定特定行為業務従事者」として胃ろうによる栄養摂取を行えるようになった。一方、同年をピークに徐々に経皮内視鏡下胃瘻造設術(PEG)の造設キットの販売件数が減少している。2014年4月の診療報酬の改定で、PEGの造設手技料減少、嚥下機能評価の必須化、経口摂取復帰率の高率な設定、療養病棟入院基本料の改定もあり、胃ろう造設件数は減少傾向にある。 代わりに経鼻胃管やCVポート、PICCのキット販売件数が増加するという現状にある。 経鼻胃管 - 鼻から胃まで管(チューブ)を通し、流動食を直接胃に送る経管栄養。 CVポート - 中心静脈 (central vein; CV) カテーテルの一種で、正式には皮下埋め込み型ポートといわれるもの。セプタムと呼ばれる圧縮されたシリコーンゴムに専用の針を刺して、高カロリー輸液や、化学療法などの薬剤を直接血管内に投与する。 PICC - 通常上腕から挿入する末梢挿入型中心静脈カテーテル(peripherally inserted central venous catheter)。他の中心静脈カテーテルと比較して、腕から比較的簡単に挿入できるため、CVポートや胃瘻造設検討段階で挿入し、栄養状態を保つことがある。 2012年6月27日、日本老年医学会は「高齢者ケアの意思決定プロセスに関するガイドライン―人工的水分・栄養補給の導入を中心として」を出し、人工的水分・栄養補給法(artificial hydration and nutrition;AHN)導入の指針を示した。2013年5月25日、日本静脈経腸栄養学会編集の『静脈経腸栄養ガイドライン 第3版』も発行された。
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